スタンレー電気、次世代レーザー「PCSEL」の社会実装へ研究成果発表…自動運転LiDARに応用も

PCSEL研究開発の様子
PCSEL研究開発の様子全 3 枚

スタンレー電気は11月12日、京都大学・日亜化学工業と三者共同で、次世代レーザー「PCSEL」の社会実装に向けた研究成果を発表した。

【画像】PCSEL(フォトニック結晶レーザー)

スタンレー電気、京都大学 野田研究室、日亜化学工業は共同で、高出力・高指向性・高機能性を兼ね備えた次世代半導体レーザーPCSEL(フォトニック結晶面発光レーザー)の早期社会実装を目指す研究を2024年より推進している。このたび、11月10日から12日にかけて、英国スコットランドで開催された「International Workshop on PCSELs 2025」において、本共同研究の取り組みと成果についてスタンレー電気が招待講演を行った。

スタンレー電気は、発光サイズが直径1mmのPCSEL素子による高指向性ビーム生成に成功した。スタンレー電気は独自のフォトニック結晶構造と電極設計を最適化し、従来の青色半導体レーザーで課題だったビームの広がりを大幅に改善した。具体的にはビームの広がり角を従来の0.1~0.2度から0.05度以下に減少させ、高い指向性を実現した。これにより大型レーザーに匹敵する高エネルギー密度のビームが得られる。今後は銅やアルミニウムなど青色光の吸収率が高い材料の精密加工用途での活用が期待されている。

次に、水中センシングにおける有効性も確認された。高指向性ビームを利用して、水中10m先にある1cmレベルの物体検知が理論上可能であることが示された。これにより船舶事故防止のための海中障害物検知、橋脚など水中インフラの点検、海中資源探査など幅広い分野での実用化が期待される。

さらに車載用途にも展開され、雨天や濃霧など視界不良の環境下でのLiDAR搭載自動運転システムの安全性向上に寄与する見通しだ。

なお、PCSELは1999年に京都大学野田研究室で発明された次世代半導体レーザー技術で、高出力かつ高指向性を特徴とする。LiDARはレーザー光で対象物までの距離や形状を計測し、視界が悪い状況でも障害物検知ができる技術だ。

スタンレー電気は1920年設立で、元は自動車用特殊電球の製造販売を目的に創業した。現在は世界の主要な四輪・二輪自動車メーカーに製品を提供し、自動車照明や各種LED、LCDなど電子応用製品を通じて安全安心な社会づくりに貢献している。

《森脇稔》

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