LUUPユーザー調査で判明した“クルマ所有社会”終焉の兆し…国際経済研究所 特任研究員 小林浩 氏[インタビュー]

LUUPユーザー調査で判明した“クルマ所有社会”終焉の兆し…国際経済研究所 特任研究員 小林浩 氏[インタビュー]
LUUPユーザー調査で判明した“クルマ所有社会”終焉の兆し…国際経済研究所 特任研究員 小林浩 氏[インタビュー]全 8 枚

来たる12月3日、オンラインセミナー「【誰も教えてくれない】先進的なLUUPユーザーの実態と今後のモビリティへの期待~一般層とは異なる思考とモビリティ生態系への影響~」が開催される。セミナーに登壇するのは、株式会社国際経済研究所 特任研究員の小林浩氏。

セミナーは以下のテーマで進められる。

1. 電動キックボードLUUPとは?
(会社概要、サービス概要、貸出車両、利用料金、利用方法)
2. LUUPユーザーの実態と他のモビリティとの関係
(LUUPの浸透状況、LUUPユーザーの特性、利用実態、LUUPによる変化、車への影響、満足度、満足/不満点、継続意向)
3.LUUPユーザー/先進層(LUUP非ユーザーを含む)は車に何を期待するか
(車の情報収集・選択意識、脱炭素・マルチパスウェイ、新興自動車メーカーの認識、自動車メーカー国別イメージ、SDVほか新しい車の受容性)
4.まとめとステークホルダーへの示唆
5.質疑応答

セミナーの開催に先立ち、セミナーの見どころを小林氏に聞いた

LUUPユーザー:先進的なクルマ好き

歩くには遠く、電車やバスに乗るほどでもない。そんなラストワンマイルの移動を担う新たなモビリティとして、電動キックボードシェアサービスLUUPは、特に若者層を中心に広がっている。

国際経済研究所 特任研究員の小林浩氏は、このLUUPユーザーに着目した大規模な調査を実施した。

「電動キックボードは欧米で先に広まり、日本では都市部を中心に徐々にモビリティの一つとして普及しつつあるという状況です。そこで、すでに電動キックボードを使っているユーザーの考え方や行動、利用実態を調査し、その思考を理解することで、今後のモビリティの方向を考察するための示唆が得られるのではないかと考えました」

調査はまず、小林氏の立てた「LUUPユーザー=先進層」という仮説を検証することから始まった。結果は明白であった。LUUPユーザーはイノベーターが24%、アーリーアダプターが35%に達し、合計で約6割が先進層に分類された。これは、調査対象全体における先進層の割合(合計15%)よりもかなり高い数値である。

小林氏は、この先進層への浸透について次のように分析する。

「(LUUP提供エリアにおける)イノベーターの3人に1人がLUUPを利用していることになります。そこから徐々にアーリーアダプターや、マジョリティにまで波及している様子が見て取れます。」

次に調査したのは、LUUPユーザーと車との関係性について。LUUPユーザーは、LUUPを使っていない層に比べて「運転頻度が高い」傾向が確認された。さらに家族名義なども含めると「車を保有している人が約9割」に上った。車への関心についても、「関心がある」「やや関心がある」を合計すると約7割に達した。

「LUUPをいち早く利用している人って、そもそも車も好きなんだなということが見て取れる結果です。」

そして、彼らは単なる合理性だけでLUUPを選んでいるのではない。LUUPを利用する理由として、「移動時間の短縮になるから」がトップである一方、「乗ること自体が楽しい・爽快だから」という情緒的な理由が第2位に入っている点が、彼らの特性を象徴している。

彼らは新しいモビリティ体験そのものを楽しむ層であり、それは従来の「クルマ好き」が持つ感性と通底していることが窺える結果だ。

LUUPが“クルマ所有 “を侵食する

自動車産業にとって、より深刻なデータはここからである。LUUPユーザーの多くが「クルマ好き」であるにもかかわらず、LUUPの利用が既存のモビリティ、特に自家用車の利用機会を減らしているという結果だ。

LUUPを利用する以前には、同じ経路でどのような移動手段を使っていたのだろうか。調査では「電車・徒歩」が約6割で最も多かった。これは、LUUPがラストワンマイルのニーズを的確に捉えたことを示している。しかし小林氏が注目するのは、同時に「タクシー」や「自家用車」から移行した層が約4割も存在するという点だ。

「タクシー・自家用車からLUUPに移行したという人が4割ほどいるという点は、無視するにはかなり大きな割合です。」

これは移動手段の利用頻度にも明確に表れている。LUUPの利用によって以前の移動手段(タクシー・自家用車)の利用が「3割以上減った」と回答した人は、半数強に上った。「LUUPによって、電車よりも、自家用車やタクシーの利用頻度が減ったということになります。」

さらに注目すべきは、彼らの「クルマの所有」に対する意識そのものを変容させていることだろう。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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