伊藤忠テクノソリューションズは12月2日、トヨタ車体と、AIエージェントを活用した品質管理の高度化に向けた共同研究を開始したと発表した。研究期間は2026年3月31日までだ。
トヨタ車体は、ミニバン・商用車・SUVの領域で企画・開発・生産を担う完成車両メーカーで、ビジョン2035「ハコブ(HaCoB)を通じて世界へ貢献」の実現を目指し、デジタル技術を活用した「モノづくり力のさらなる強化」を推進している。製造現場では、熟練した技能者の経験やノウハウが品質を担保する上で極めて大きな役割を果たしており、ITを活用した技能の継承や品質の安定化が重要な課題となっている。
今回の共同研究は、トヨタ車体の熟練技能者のノウハウを、画像・動画・センサー数値・記録文書など多様なデータを扱うマルチモーダル対応のAIエージェントに組み込むことを目的とした取り組みだ。
トヨタ車体が提供する作業記録、製造ラインで取得する温度・圧力・振動などの数値データ、外観検査で撮影した画像や動画、過去の履歴や製造条件など、多様な情報を組み合わせ、CTCが製品の品質予測と熟練技能者の技能を分析するAIエージェントのプロトタイプを開発する。
2つのAIエージェントが互いに情報をやり取りしながら連動することで、より精度の高い判断を行う「A2A(Agent to Agent)」と呼ばれる方式を採用し、熟練技能者のノウハウを再現し、高度な品質管理の仕組みの構築を目指す。開発の一部は、AIソリューションの開発に強みを持つヘッドウォータースとグループ会社のDATA IMPACT JOINT STOCK COMPANY社(ベトナム)と連携し、高い技術力とコスト競争力の両面で効率を高める。
CTCは、30年以上にわたり製造業向けに生産管理システムをはじめとした大規模なシステム構築や設備監視などのITサービスを提供してきた実績があり、近年ではマルチモーダルAIエージェントの研究開発や活用にも注力している。本研究で得られた知見は、自動車産業だけでなく、精密機器、電機、素材など、日本のものづくり全体に共通する「熟練技能者の高齢化」と「品質確保の属人化」の解決への応用が期待できる。
今後CTCは、製造現場における効率化・高度化のためのAIエージェントの開発やマルチモーダルデータ分析を推進し、データ活用を企画から定着まで支援するサービス「D-Native」の強化にもつなげ、顧客の業務の高度化、効率化を支援していく。




