古河電気工業は、一般的な無酸素銅よりヤング率が低く、高い耐熱性と熱伝導性を特長とする低ヤング率耐熱無酸素銅「TOFC」を開発したと発表した。2025年度中の量産・販売開始を予定している。
近年、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの活用や、xEV、データセンタなどで、電力の変換・制御を行うパワー半導体の使用が急速に拡大している。特にSiC(炭化ケイ素)チップ等を使用する次世代パワー半導体モジュールでは、高出力・高性能化に伴い発熱量が増大している。
無酸素銅は、その優れた熱伝導性から、放熱基板や端子としてモジュールに搭載されている。しかし、はんだ付けや樹脂との接合時には熱が加わることにより、無酸素銅の軟化や反りの発生が接合信頼性を低下させる。また、モジュール内の半導体チップ、セラミックス、樹脂それぞれと銅との熱膨張係数が異なることから、使用時の発熱によって生じる応力により部材間の接合界面での剥離や割れが発生し、機能停止に陥る課題があった。
古河電工は一般無酸素銅(C1020)に加え、独自の材料設計技術と製造技術により、高温接合時の結晶粒粗大化を抑制する耐熱無酸素銅GOFCを量産中。今回新たに、低ヤング率耐熱無酸素銅TOFCを製品ラインアップに加えた。
TOFCは高い熱伝導性を維持したまま、高温下でも軟化しない耐熱性を実現した。その結果、はんだ付けや樹脂接合が行われる300度以上でも無酸素銅の硬さが維持され、反りや変形の抑制が期待される。
さらに、600度以下の領域において一般的な無酸素銅より低いヤング率を保つことに成功した。これにより熱膨張率が異なる部材間の接合界面で生じる剥離などが抑制され、接続信頼性を大幅に向上させることが期待される。
こうした特長を持つTOFCは、パワー半導体モジュールの放熱板や端子用途に適している。また、耐熱性が要求される大電流用バスバー等へ適用することで、一般無酸素銅やタフピッチ銅と比較して高温使用時の強度低下を抑制でき、再生可能エネルギーのインバータ用途やxEVのパワーコントロールユニット等への展開も期待される。
古河電工は今後も幅広い用途へ高機能無酸素銅条を提供し、パワー半導体モジュールの高性能化に貢献していく。




