JVCケンウッドは12月17日、全国森林組合連合会(全森連)と「林業労働安全対策の強化」に関する連携協定書を締結したと発表した。
森林でも安定した通信ネットワークを提供する業務用無線機の普及や活用支援を通じて、林業における「安心・安全」な労働環境の実現と、現場技能者の安全対策の強化を目指す。
林業の担い手は高齢化や人材不足の影響で減少しており、過酷な労働環境のため労働災害の発生率が他の産業と比べて高い実情がある。災害発生時に携帯電話が通話圏外で、救急要請の連絡が遅れ、最悪の場合、命を落とすケースもある。
日本政府は「森林・林業基本計画」(2021年6月閣議決定)において、将来の林業従事者の育成・確保に資する労働環境の改善に向けた対応として、10年後をめどとし、死傷年千人率を半減させることを目指して労働安全対策を強化するとしている。また2025年8月に開催された全国知事会では、「森林内の電波が届かない地帯における緊急時の最適な通信システムの手法等を検討し、早急な対策を講じること」への政策要望が出されている。
こうした背景のもと、JVCケンウッドは全森連と連携して、業務用無線機の利便性を広め、普及促進活動を推進し、「林業労働安全対策の強化」の実現に向けて取り組むことを目的に、この度本協定の締結に至った。
両者は、共に取り組む最優先課題として「林業従事者の死亡災害をなくすこと」を位置付け、業務用無線機を活用して災害の認知速度を向上させ、救急救命率を高めることを目指す。これを実現すべく、全森連のネットワークを通して業務用無線機の普及・活用支援などを推進していく。
具体的には、全森連のネットワークを通じて業務用無線機器を販売するとともに、導入検討に活用できる検証機材の貸し出しを行う。また業務用無線機について、全森連と連携して、作業現場での実証実験や林業従事者向けの安全教育・研修会での活用支援を実施する。さらに、そこで得られた結果やフィードバックを反映させて、製品の改善と提供に取り組む。
JVCケンウッドは「感動と安心を世界の人々へ」という企業理念のもと、林業の現場における「安心・安全」な労働環境の提供に貢献し、全森連と連携して「林業労働安全対策の強化」の実現を目指していく。また将来的には、現場作業や事務処理の効率化による生産性向上を図り、林業のICT化や担い手確保を通して、持続可能な林業と日本の豊かな森林資源の保全に貢献することで、CO2吸収による地球温暖化の抑制につなげ、環境負荷低減に寄与していく。
日本の林業現場は、山の奥地など携帯電話基地局から離れた地域が多く、携帯電話の電波が届かないエリアが大半を占めている。また、近年は衛星通信などのインフラが利用可能になりつつあるものの、コスト面などの影響もあり、導入が進みにくい状況となっている。
一方、業務用無線機は、自前の通信ネットワークを構築するため基地局の圏外でも通信が可能である。また、低い周波数帯を使用し波長が長く、送信出力も高いため、森林でも安定した通信環境を確保できる。さらに、同社の無線機は、音声通信に加え、利用者の転倒や静止を検知して自動的にエマージェンシーコールを発報する動態検知機能や、位置情報などのデータ送受信にも対応するなど、安全性と利便性を高める機能も備えている。




