BMWグループとエンコリー(Encory)は、ドイツ・バイエルン州ザルヒングに新設したセルリサイクルコンピテンスセンター(CRCC)を正式に稼働させた。
これは革新的な直接リサイクル技術を実用化する共同プロジェクトの重要な一歩となる。
直接リサイクルは、バッテリーセル生産の残留材料や完成したバッテリーセルを機械的に分解し、原材料を完全に元の状態に戻すのではなく、直接セル生産サイクルに戻す技術だ。BMWグループの専門家が開発したこの手法により、従来必要だったエネルギー集約的な化学的・熱的処理が不要になる。
新施設では、直接リサイクルを段階的に拡大し、完全稼働時には年間数十トン規模のバッテリーセル材料をリサイクルする計画だ。回収された原材料は、パルスドルフにある自社のセル製造コンピテンスセンター(CMCC)でのバッテリーセルの試験生産に直接再利用される。将来的には、セルメーカーが量産で直接リサイクルを使用できるようになる可能性もある。
バイエルン州ザルヒングの既存施設を活用した新センターは、約2100平方メートルの生産エリアと倉庫スペース、約350平方メートルのオフィスと休憩室を備え、屋根には太陽光発電システムを設置している。施設の建設と運営はエンコリーが担当するが、リサイクル手法の知的財産権は完全にBMWグループが保有する。
エンコリーはBMWグループとインターゼロ・グループの合弁会社で、両社が50%ずつ出資している。新センターでは約20人を雇用する予定だ。
施設の建設と運営には、スイスの1社を除き、すべてドイツ企業が契約された。これらの企業の約半数はザルヒングから半径100km以内に位置している。
BMWグループは、ミュンヘン、パルスドルフ、ザルヒングのコンピテンスセンターにバッテリーセルの専門知識を集約している。ミュンヘン北部のバッテリーセルコンピテンスセンター(BCCC)では次世代高電圧バッテリー用セルの開発と少量生産を行い、パルスドルフのセル製造コンピテンスセンター(CMCC)では量産プロセスへの拡大を実施する。そして新設されたザルヒングのCRCCでパルスドルフの試験生産からの余剰材料をリサイクルし、回収した原材料を再びセル生産に使用する。これにより各センター間の距離が短縮され、貴重な原材料の損失を防ぐことができる。
BMWグループは循環型経済を、より資源効率の高いモビリティを形成する重要課題の一つと位置づけている。そのアプローチは、材料をサイクル内に保ち、資源を失わず長期使用のために価値を維持する最良の方法を見つけることを目指している。BMWグループは再考、削減、再利用、リサイクルの原則を適用し、車両設計から生産、リサイクル、再利用まで、使用段階の終わりに車両が原材料の供給源となるよう配慮している。




