日本のTGM Grand Prix、AI自律走行レース「A2RL」シルバーレースで優勝…世界トップクラスの大学を抑える

自律走行レースA2RLの“Silver Race”で日本のTGM Grand Prixが優勝
自律走行レースA2RLの“Silver Race”で日本のTGM Grand Prixが優勝全 3 枚

自動車レーシングチームTGM Grand Prix(運営:セルブスジャパン、以下TGMGP)が、アラブ首長国連邦アブダビで開催された自律走行レース「A2RL(Abu Dhabi Autonomous Racing League)」の単独走行によるタイムアタック形式レース「Silver Race」において、優勝した。

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世界の研究機関・大学チームが参戦する国際舞台において、日本のレーシングチームが最速タイムを叩き出したことは、TGMGPにとっても歴史的な成果となった。

A2RLは、2024年に発足した世界最大規模の自律走行レースシリーズ。参戦チームは、主催のASPIRE社が提供する共通ソフトウェアを基盤に、独自の自律走行アルゴリズムやAI制御を組み込み、その技術力を競い合う。

このレースの目的は、「未来の自動運転技術の向上を図る」こと。AI・機械学習・センシング技術など、最先端の研究が「レース」という極限環境で磨かれることで、技術革新のスピードが大きく加速すると期待されている。

レースに使用される車両は、国内最高峰カテゴリ「SUPER FORMULA」でも採用されているダラーラ社製シャシー「SF23」。最高速度は300km/hを超え、F1に次ぐスピードを誇る。

最高速度300km/h超のフォーミュラカーを完全にAIの判断だけで走らせる世界でも類例のないA2RLの取り組みには、世界のトップ大学(マサチューセッツ工科大学・北京理工大学・ミュンヘン工科大学等)や先端技術企業など11チームがこぞって参戦している。そのうち日本から唯一の参戦となったTGMGPは、世界で初めてレーシングチームとして自律走行レースに挑んだチームとして参戦を果たした。

シーズン2を迎えた今年は、8000人を超える観客が来場。ヤスマリーナサーキットのノースグランドスタンドは満席となり、賞金総額225万ドル(約3億2310万円)をどのチームが獲得するのか、多くの注目を集めた。

A2RLのレースフォーマットは大きく2つに分かれており、一つが本戦である「Gold Race(複数車走行レース)」。もう一つがGold Raceに出場するために設けられたQuality Gateway(技術試験)を1つでも突破できなかったチームが参戦する「Silver Race(単独車のタイムアタックレース)」である。

Quality Gatewayを突破できなかったと言っても、その要求水準は極めて高く、昨年から参戦している有力チームでさえ突破できない項目が複数存在する。そのため、Silver Raceは「改善力・技術成熟度・走行性能を純粋に測る場所」として、Gold Race同様、国際的に注目されている。

今回TGMGPは、実質の開発期間が半年という短期間ながら、数々の困難を乗り越え(アルゴリズム刷新、GPS・センシング系のトラブルの克服、若手エンジニアによる連日の改良、国際チームとの知見共有、230km/hクラッシュ後の短期復旧等)、世界中の有力大学・研究チーム4チームを抑え、Silver Raceで優勝した。

特に今回の勝利は、20代を中心とした若手エンジニアが中心となり、現地で自律走行の「生きた開発」をやり抜いた点が大きな特徴だ。

A2RLには自動運転・AI・ロボティクスの最前線で活躍する研究者や企業、大学(院)生が集結しており、その中で日本のレーシングチームが評価されたことは非常に大きな意味を持つ。

自律走行・AI技術は1年で常識が大きく塗り替わるほど進化が速い領域。昨年のA2RLシーズン1では、最高速度が254km/hであったのに対し、今年行われたシーズン2では、最高速度295km/hを記録している。また、人間vsAIの戦いでは、元F1選手であるダニエル・クビアト選手とAI車両のタイム差はわずか1秒。18か月前には10秒あったタイム差から短期間で劇的な変化を遂げており、各チームの開発が急速に進んでいることが分かる。

TGMGPは、このスピード感に合わせて、開発を強化している。具体的には、カメラ、LiDAR、レーダーによる他車および障害物の高精度な検知・識別性能の向上、

LiDARを活用した自己位置推定の高度化によるGPS依存度の低減、自動運転システム全体の安定性、フェールセーフ機能および安全性の強化、AI活用範囲の拡大とともに、人間ドライバー並みのラップタイムおよび判断能力の実現を目指した高度制御アルゴリズムの開発、だ。2026年シーズン、最高峰レースである「Gold Race」への出場と競争力強化を目指す、としている。

《森脇稔》

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