【トヨタ bZ4Xツーリング 新型試乗】『bZ4X』からたった4年でここまで進化するのかトヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】
クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
みんな違って、が当たり前
夏休みです。猛暑にめげず、いや猛暑だからこそ涼を求めて家族旅行の計画を立てている人も多いはずである。でも旅行は好きだけど、細かいスケジュールを立てるのは苦手という人は案外多いのではないでしょうか。せっかくの休みなんだからのんびりしたい、きっちり予定を詰め込むよりも行き当たりばったりでいいというタイプ、かく言う私もそちらである。いっぽうで、せっかくの旅行なんだから、あれもしたいこれも食べたいと綿密なスケジュールを立てて、まるで分刻みの行動予定を正確に実行することに満足感を覚える人もいるだろう。家族からの要求にも応えなければならない。それじゃ楽しくないじゃないか、というのは余計なお世話。何を楽しいかと感じるのは当たり前だが人それぞれである。
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たとえクルマ好きを自認していたとしても、毎日とは言わないけれど、定期的にオイルやクーラントやタイヤのエアをチェックしているという人もいれば、ディーラーで定期点検受けてるから平気でしょ、とまったく気にかけない人もいる。古いクルマだってそれなりに注意を払えば日常使いも大丈夫という人もいれば、何か少しでも心配事を抱えながらクルマに乗るなんてまっぴらごめんという人もいる。このような性格もライフスタイルもさまざまに異なる自動車ユーザーに対して、同じようにBEVを勧めるのは端から無理というものではないだろうか。

いわゆる「プロユーザー」以外にも
もっとも、最近ではBEVを使う物理的および心理的負担がだいぶ軽減されているのは間違いない。バッテリーやコントロールユニットの進化によって600~700kmぐらいの航続距離(実際には7掛けとしても約500kmは見込める)を持つBEVが続々と登場しているし、高出力の急速充電器も普及し始めている。ついでに補助金も増えた。ようやく、普通の人でも当たり前にBEVをファーストカーとして使う環境が整ってきたといえるだろう。
それでも、航続距離が伸びました! 補助金130万円もらえます! と大書された下のほうに細かい文字で書かれた注意書きまで知っている人は、私の周囲にもまだまだ少ないというのが個人的実感だ。「EVリテラシー」が高い人にはまたかよ、とうんざりされるのを承知であらためて書いておきたい。普及段階にあるからこそ、弱点をきちんと周知しなかった初代「リーフ」の二の舞は避けたいからである。例えば、補助金をもらったら保有義務が生ずること(4年以前に売却する場合は相当額を返還する必要あり)、急速充電器のメーカーや性能はバラバラで、いつでもどこでも同じように同じ料金で充電できるわけではないこと、もちろん充電性能はクルマそのものや充電器の仕様だけでなく、気温やバッテリー残量などに左右されることも詳しい方にとっては常識だが、そもそも興味を持っていなかった人は「えっ、そうだったの?」となりかねない。
今どき実際に入れた給油量も料金も表示されず、レシートも出てこないガソリンスタンドがあったとしたらユーザーはどう考えるか。これまではそのような目線に欠けていたのである。あらかじめきちんと調べて計画を立てれば済むことじゃないか、知らないほうが悪いと反論する人の言い分も分かる。だが、普及して当たり前になるとは、そういう層にも配慮しなければならないということだ。

ボディーを伸ばしたワゴン風
前置きが長くなってしまったが、2026年2月に発売されたbZ4XツーリングはざっくりいえばbZ4Xのステーションワゴン版である。bZ4Xと「スバル・ソルテラ」の関係と同じくスバルの「トレイルシーカー」とは兄弟車で、2025年10月のビッグマイナーチェンジ後のbZ4Xをベースにしたモデルである。bZ4Xとソルテラはトヨタ元町工場で生産されるが、bZ4Xツーリングはトレイルシーカーとともにスバルの矢島工場で生産されている。1モーターFWDと2モーター4WDがあり、さらにトレイルシーカーには2グレードが用意されているが、bZ4Xツーリングは装備充実の上級グレード「Z」のみ、試乗車はFWDのZで車両価格は575万円、bZ4XのZ(FWD)に比べて25万円高となる。
bZ4Xツーリングのホイールベースは2850mmとbZ4Xと同一だが、ボディー後部を延長して全長4830mm(bZ4Xから+140mm)としているのが最大の相違点である。1860mmの全幅は同じ、1675mmの全高はわずかに高いが、これは頑丈そうなルーフレールのせいだろう。標準装備の18インチを履いた試乗車の車重は1920kgと同じFWDのbZ4Xと比べて40kg増えているが、スペック上の違いもその程度である。フロントに搭載されるモーターの最高出力と最大トルクは227PS/268N・mと変わらず、駆動用バッテリーの容量も74.69kWhと同一である。マイナーチェンジによって同じbZ4Xを名乗るのが似つかわしくないほど進化した改良後のbZ4XをベースにしたツーリングZ(FWD)の一充電走行距離はWLTCモードで734km(オプションの20インチタイヤ装着車は667km、ちなみにbZ4XのFWDのZは746km)にも及ぶ。さらに急速充電は出力150kwまで対応しており、バッテリーのプレコンディショニングも採用した最新スペックである。

ワクワクはしないけれど
新しいbZ4Xがほとんど文句のつけようがない出来栄えであることはすでに何度もリポートされているとおりで、ラゲッジスペースを増やしたツーリング(619リッター~1240リッターと十分でゴルフバッグ4個を積めるという)でもそれは同様だ。インストゥルメントパネルはいささかビジネスライクだが、プラスチックの見栄えを気にしなければすっきりとしてまずまず機能的である。ただし、上下につぶれた異形ステアリングホイールを採用するトレイルシーカーとは違って、一般的な円形ステアリングホイールのbZ4Xツーリングではメーターの一部が隠れて見にくいのは従来から改善されていない(なぜかヘッドアップディスプレイはオプションでも設定なし)。またフロアが高いせいで、特に後席は広々しているけれどもヒール段差が十分ではなく、正直言って座り心地はよろしくない。
それにしても、最初のbZ4Xからたった4年でここまで進化するのかと驚くとともに、だったら最初からもう少しユーザーの使い勝手を考えてくれてもよかったのに、という気もする。その慎重さがトヨタらしさなのかもしれないが、なおBEVの場合は拙速よりも巧遅が吉と言いたい。目の前の補助金に飛びつく前に、自分の使い方に合うかどうかをしっかり見極めるべきである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)

テスト車のデータ
トヨタbZ4XツーリングZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1860×1675mm
ホイールベース:2850mm
車重:1920kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:227PS(167kW)
最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
タイヤ:(前)235/60R18 103H XL/(後)235/60R18 103H XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電走行距離:734km(WLTCモード)
交流電力量消費率:114Wh/km(WLTCモード)
価格:575万円/テスト車=583万5580円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(4万1800円)/前後方2カメラドライブレコーダー<TZ-DR212>(4万3780円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1094km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:226.6km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:8.2km/kWh(車載電費計計測値)






