アメリカや中国などが先行するロボタクシービジネスは、交通・サービス・AI・クラウド・車両と関連する事業者が多岐にわたり、全体像の把握が難しい。とくに従来のタクシー事業とは異なり、価値の源泉が車両そのものだけでなく、AIやソフトウェア、運行サービスへと広がっており、自動車メーカーとしては業界内での立ち位置や戦略を定めにくい領域となっている。
しかし、世界各国で現在タクシーとして利用されているカローラやプリウスなどの車両が、将来的にはNEVベースのロボタクシーへ置き換わる可能性を考えると、本当に座視してよいのかは分からない。
レスポンスセミナー「フィジカルAI実装の実態と5年後・10年後~ロボタクシーからAIネイティブカーへ、自動車産業の勝者は誰か~」(講師:沖為工作室合同会社 Founder CEO 沖本真也氏)では、現状のロボタクシー技術とビジネスを分析し、その先にある「AIネイティブカー」の市場を考察する。
本稿は、セミナー講師の沖本氏へのインタビューを元に、その概要とポイントをお伝えする。
AIネイティブカーとは

LLMはロボティクスと融合し、フィジカルAIへと進化しつつある。しかしこれは新産業が生まれるというわけではなく、技術の総合的な進化であり、自動車産業においては、次のような流れで説明できると、沖本氏はいう。
まず、エンジン制御にコンピュータ(ECU)が導入され、2010年代にはADAS(先進運転支援システム)の導入が加速した。カメラによる画像認識やLiDAR、ミリ波レーダーなどによって周囲環境を認識し、その情報をもとにブレーキやステアリングを制御する仕組みが発展した。こうした「認識・判断・制御」の進化の延長線上で、自動運転技術の開発と実用化が進んだ。
2020年代に入ると、車両システム全体を統合制御する方向へと発展し、ソフトウェアは車両各部の制御を決定づける重要なコンポーネントとなった。この変化に伴いSDV(Software Defined Vehicle)という概念も広がった。SDVでは、ソフトウェアによって車両機能や価値を定義し、OTA(Over-the-Air)アップデートを通じて継続的な機能改善や新サービスの追加が可能になる。
そして2030年代に予想される進化が「AIネイティブカー」だ。AIネイティブカーとは何か? これも自動車技術の進化という視点で見ることができる(沖本氏)。
AIネイティブカーの競争軸
車両制御やADASの進化を振り返ると、その起点は車両状態の検知と制御にあった。その後、カメラ、LiDAR、レーダーなどのセンサー技術が発展し、道路、人、他車両、障害物といった周囲環境を高精度に認識できるようになった。これらの認識結果を活用することで、衝突被害軽減ブレーキや車線維持支援、アダプティブクルーズコントロールなどの先進運転支援機能が実現されてきた。
一方、高度な運転支援や自動運転を実現するためには、単にセンサーデータを取得するだけでは不十分である。車両システムは周囲環境をモデル化し、状況を理解し、他車両や歩行者の将来の動きを予測する必要がある。近年では、このような「世界理解」や「世界モデル」の重要性が高まっている。
自動運転ではさらにその先のプロセスとして、認識・理解した情報に基づく意思決定や経路計画を行い、最終的にはステアリング、加減速、制動などの車両制御までを一貫して実行する必要がある。

![ロボタクシーの勝敗を分けるのはAIではない「AIネイティブカー」とは…沖為工作室合同会社 Founder CEO 沖本真也氏[インタビュー]](/imgs/thumb_h2/2237817.jpg)

