ボルボ ES90 ウルトラ ツインモーター パフォーマンスボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
セダンでもSUVでもない新種の旗艦モデル
ボルボはES90の特徴を、「セダンの洗練されたエレガンス、5ドアハッチバックスタイルの実用性、SUVの広々とした室内空間と高められた最低地上高を兼ね備えた、従来のカテゴリーに収まらない新しいフラッグシップクロスオーバー」と説明する。
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2026年7月8日に国内導入されたES90は、確かにそのうたい文句のとおり、車高と最低地上高が高めに設定された5ドアハッチバック風のシルエットが印象的だ。
フロントフェイスには、ブラッシュアップされたトールハンマー型のヘッドランプやフレームレスのグリル形状など、最新のボルボにおける電気自動車のラインナップに共通する意匠が採用されている。ひと目でボルボの最新世代だと分かるデザインであり、そのシルエットとデザインが織りなす存在感は独特だ。
さらに近づいて観察すると、短めに抑えられた前後のオーバーハングや、なだらかなルーフラインがボディー後端でスパッと切り落とされたリアエンドの造形により、実車は想像以上にスポーティー。金属の塊から削り出したようなフィニッシュは、プレミアムブランドに期待する質感を存分に表現している。個人的には、従来のSUVの延長上にあるプラットフォーム共有モデル「EX90」のデザインよりも、ES90が持つクロスオーバー的な佇まいに新鮮さと魅力を感じる。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=5000×1940×1545mm、ホイールベースは3100mm。EX90と比較すると全長は35mm短く、幅は25mm狭く、全高は195mm低い。一方で、ホイールベースはES90のほうが115mm長く設定されている(EX90は2985mm)。このロングホイールベースは、室内の絶妙なゆとりをもたらす。
今回の試乗車は、前後に1基ずつのモーターを搭載するES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンスである。フロントモーターは最高出力299PS、最大トルク390N・mを、リアモーターは同381PS、同480N・mを発生。4WD方式を採用するフラッグシップモデルという位置づけだ。東京・青山の「ボルボスタジオ東京」から新潟・妙高高原までを往復する1泊2日のロングドライブで、その実力を確かめた。

先進技術と北欧デザインの融合
ドアを開けると、モダンボルボとして文句なしの洗練されたインテリアが広がっている。そのデザインにはEX90との共通性を感じさせるが、14.5インチの縦型センターディスプレイの下部に直感的に操作できるオーディオ用のボリュームスイッチを配置するなど、設計年次の新しさによるアップデートポイントも確認できる。
やわらかな触感のファインナッパレザーで仕立てられたフロントシートには、シートヒーターおよびベンチレーション機能が内蔵されている。人間工学に基づいて設計されたシート構造は、身体への圧力を効率よく分散し、長時間の着座でも肩や腰への負担を劇的に軽減するという。実際に腰を下ろすと、理想的なドライビングポジションが即座に決まる。
運転席前方のメーターディスプレイは9インチとコンパクトだが、速度や走行データなどの必要情報が過不足なく表示される。さらに大型のヘッドアップディスプレイ(HUD)がナビゲーションや運転支援情報を投射してくれるため、走行中の視線移動は最小限で済む。
車載の「Google Apps and Services」(Googleのアプリとサービス)は、データ通信料も含めて5年間無償で利用可能だ。スマホ感覚のタッチ操作だけでなく「OK Google」と語りかけるだけの音声操作にも迅速に応答し、エアコンの温度設定や音楽再生などをスムーズに完了できる。
この操作感の軽快さを支えるのが、ES90に導入された最新世代のコアコンピュータシステムだ。車載のインフォテインメントをはじめ、アクティブセーフティー機能、各種センサー群、さらにはバッテリー管理に至るまでを一括制御する基盤システム「Superset tech stack(スーパーセットテックスタック)」の処理能力の高さが、(おそらく)運転中のストレスフリーな環境をつくり出している。

話題の充電スタンド「FLASH」の実力を試す
今回は、中央自動車道を経由して諏訪湖付近でランチをとり、信州松本空港を脇目に見ながら一般道で北上するルートを選んだ。木崎湖、青木湖、白馬を経て姫川沿いを下り、日本海側の糸魚川へと抜ける行程だ。
雨模様の東京を出発した際のバッテリー残量は99%で、走行可能距離の表示は570km。長野と新潟を結ぶ歴史ある「塩の道」こと国道148号沿いにある「道の駅 小谷(おたり)」へ到着した時点で、走行距離は300kmに達していた。電費を意識せず、高速道路やワインディングロードを含む全ルートでエアコンやオーディオを常時オンに。快適重視の走行を続けた結果、ここまでの平均電費は5.81km/kWhと表示された。バッテリー残量は48%、走行可能距離は330kmで、106kWhの大容量バッテリーを備える大型のハイパフォーマンスモデルとしては満足のいく数値だ。
ここで30分間の急速充電を実施。バッテリー残量は79%まで回復し、走行可能距離は550kmを示した。夕刻には雨の糸魚川・ヒスイ海岸に立ち寄り、宿泊地である新潟・妙高高原へと移動。この90.8kmの区間電費は5.88km/kWh。宿泊先に到着した際のバッテリー残量は63%、走行可能距離は380kmと、ここでも安定した電力消費効率を示した。
翌朝は妙高高原を出発し、上信越自動車道で中継地の長野・軽井沢へ。高速走行メインの170.2kmでの電費は5.21km/kWhだった。その後、最新の超急速充電プラットフォームとNACS規格への対応が話題の充電スタンド「FLASH」の実力を試すため、群馬・富岡の市営宮本町駐車場へ立ち寄った。充電前の残量23%、走行可能距離130kmから、わずか15分間の充電で70%、走行可能距離440kmまで急速回復。15分間の充電料金は2367円で、長距離移動における充電時間の短縮という大きなメリットを実感できた。

圧倒的な疲労感の少なさもBEVのメリット
バッテリーと充電かいわいの報告はこのぐらいにして、それ以上に今回のドライブで深く印象に残ったのは、圧倒的なまでの移動の快適性だ。高速道路ではアダプティブクルーズコントロール(ACC)を制限速度に設定して全車速追従走行を活用。車両周辺の広範なモニタリングを高度なADAS(先進運転支援システム)に委ねることで、運転中は前後の安全確認に集中でき、精神的な負荷が大幅に軽減された。
室内を静かに保つ静粛性のクオリティーにも感心した。2枚のガラスの間にポリマー層を挟み込んだ「ラミネーテッドウィンドウ」を、衝突安全性の向上とともに遮音対策として全ウィンドウに贅沢に採用。これが外部からのロードノイズや風切り音を劇的にカットしている。
航空機の機内食が、エンジン音や風切り音、気圧などを要因としたストレスによる味覚の変化を計算し味つけが行われるように、日常的なノイズは、人間が自覚している以上に疲労や精神的負担を蓄積させる。ES90の静かなキャビンは、そうしたダメージの排除にも役立っていそうだ。
BEVならではの低重心で重厚かつスムーズな走りと、高精度なACCをはじめとする運転支援、そして外部の世界から遮断されたかのような静かな室内空間にシートベンチレーションとエアコンの快適な空調管理も加わり、移動空間としての総合的な快適指数は爆上がりである。これほどまでに疲労を感じさせないクルマでの長距離移動は、過去に覚えがない。
それにしても、である。尺取り充電を繰り返しロングドライブに挑んだ数年前には予想もつかなかったほど、BEVのバッテリーと充電事情は進化している。この2日間の総走行距離は約720km。途中の充電回数は2回で、全体を通した平均電費は5.52km/kWhとなった。東京のボルボスタジオ東京に帰着した際のバッテリー残量は、走行可能距離にして280kmの余力を残していた。ガソリン車なら給油は1回、ディーゼル車ならぎりぎり1タンクでとの声も出るだろうが、それでもこのBEVの進化は素直に認めたい。
(文=櫻井健一/写真=小林俊樹/編集=櫻井健一)

テスト車のデータ
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5000×1940×1545mm
ホイールベース:3100mm
車重:2560kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:非同期電動機
リアモーター:永久磁石同期電動機
フロントモーター最高出力:299PS(220kW)
フロントモーター最大トルク:390N・m(39.7kgf・m)
リアモーター最高出力:381PS(280kW)
リアモーター最大トルク:480N・m(48.9kgf・m)
システム最高出力:680PS(500kW)
システム最大トルク:870N・m(88.7kgf・m)
タイヤ:(前)255/40R22 103V/(後)285/35R22 106V(ピレリPゼロE)
一充電走行距離:720km(WLTCモード)
交流電力量消費率:159Wh/km(WLTCモード)
価格:1229万円/テスト車=1264万4090円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー360<工賃含む>(18万9750円)/デジタルミラー<工賃含む>(16万4340円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2814km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:約720km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.52km/kWh






