NVIDIA(エヌビディア)は、11月18~20日にパシフィコ横浜で開催される「EdgeTech+ 2026」の構成イベント「オートモーティブソフトウエアエキスポ」で、フィジカルAIとエッジコンピューティングに関する基調講演を行う。
講演は11月20日11時20分から。「NVIDIAが加速するフィジカルAIの進化 ― 認識から推論・行動へ、次世代エッジコンピューティングの最前線」と題し、同社ロボティクス事業部の平野一将事業部長が登壇する。
●エッジAIとは何か
エッジAIとは、クラウド上のサーバーではなく、ロボットや自動車、工場設備などの機器側でAIによる情報処理を行う技術だ。
従来のクラウド型では、カメラやセンサーで収集したデータをネットワーク経由でサーバーに送り、分析結果を機器に返す。これに対してエッジAIは、機器に搭載したコンピューターがデータを直接処理する。
大きな利点は、通信による遅延を減らせることだ。例えば自動運転車や自律移動ロボットでは、障害物を発見した際に素早く判断し、動作する必要がある。クラウドとの通信を待たずに処理できれば、迅速な対応が可能になる。もう一つの利点はセキュリティだ。工場内の映像や生産データを外部に送信せずに処理できるため、情報流出のリスクを減らせる。
NVIDIAの平野氏も、フィジカルAIでエッジコンピューティングが重要になる理由として、反応速度とセキュリティの2点を挙げている。
●「認識するAI」から「考えて動くAI」へ
エッジAIの重要性を高めているのが、フィジカルAIの進化だ。フィジカルAIとは、AIが現実世界の状況を認識し、推論・判断して、ロボットなどの機械を動かす技術を指す。
従来の画像認識AIは、カメラに映った物体が何であるかを識別することが中心だった。これに対してフィジカルAIでは、物体の位置や周囲の状況を把握し、どのような動作が必要かを判断する。
その中核技術の一つが「VLA(Vision-Language-Action)」だ。視覚、言語、行動を結び付けるAIモデルで、人間の指示やカメラから得た情報をもとに、ロボットの動作を生成する。例えば、ロボットに物を運ぶよう指示すると、対象物を認識し、周囲の障害物を把握して、つかみ方や移動方法を判断する。
ヒューマノイドでは、移動するための「ロコモーション」、手や腕を使って作業する「マニピュレーション」、周囲を認識して判断する「ブレイン」の機能を組み合わせる必要がある。こうした複雑な処理をロボット本体で実行するには、高い演算性能を持つコンピューターが必要になる。
●NVIDIAの「Jetson」が担う役割
NVIDIAがエッジAI向けに展開しているのが、組み込みAIコンピューター「Jetson(ジェットソン)」シリーズだ。GPUを活用したAI処理を、小型のコンピューターで実行できることが特徴となる。
NVIDIAは「Jetson Orin(ジェットソン・オーリン)」に加え、フィジカルAI向けの高性能モデル「Jetson AGX Thor(ジェットソンAGXソー)」を展開している。Jetson AGX Thorは、複数のセンサー情報を処理しながら、大規模なAIモデルによる推論を実行する用途を想定する。ヒューマノイドなど、高度な判断や動作が求められるロボットへの活用が期待される。
ただし、演算性能が高ければよいわけではない。ロボットにコンピューターを組み込む際には、AIモデルの規模、メモリ容量、消費電力、製品コストなどの制約がある。また、エッジAIの進化はハードウェアの性能向上だけによるものではない。AIモデルの小型化や最適化が進み、従来は難しかった高度な推論を小型コンピューターで実行できるケースも増えている。
今回の講演では、Jetson OrinとJetson AGX Thorの使い分けをはじめ、メモリやコストを考慮した実装方法について解説する予定だ。
●クラウドとエッジの連携も重要
エッジAIは、すべてのAI処理を機器側で完結させる技術ではない。大規模なAIモデルの学習や、ロボットの動作を仮想空間で検証するシミュレーションには、クラウドやデータセンターの計算能力が活用される。
NVIDIAは、産業向けデジタルツインやシミュレーション環境を開発するための「Omniverse(オムニバース)」、ロボット向けシミュレーター「Isaac Sim(アイザック・シム)」、ロボット学習フレームワーク「Isaac Lab(アイザック・ラボ)」などを展開している。
仮想空間でロボットの動作を学習・検証し、その成果を実際のロボットに導入する。さらに実機で得られたデータを学習に活用することで、AIモデルの性能向上につなげる。こうした開発の循環は、フィジカルAIを実用化するうえで重要になる。
自動車産業でも、自動運転や工場の自動化、物流ロボットなど、エッジAIと共通する技術が活用されている。今回の基調講演では、VLAなどのAIモデルをロボット上で動かす際の課題と可能性、学習・シミュレーションとの連携について、ロボティクスの具体的な活用例を交えて紹介することになる。
「EdgeTech+ 2026」は組込みシステム技術協会(JASA)が主催し、11月18~20日にパシフィコ横浜で開催される。入場は無料で、事前登録が必要だ。




