メルセデス・ベンツ日本は10月28日、ミドルサイズSUV、メルセデスベンツ『GLC』初の電気自動車(EV)となる『electric GLC』を日本市場向けに発表し、全国の正規販売店で予約注文の受け付けを開始した。
新開発のEV専用プラットフォームを採用し、一充電航続距離は最大642km。価格は913万円からだ。ラインアップは、後輪駆動の「GLC 250 electric」と四輪駆動の「GLC 300 4MATIC electric」の2モデル。消費税込み価格はそれぞれ913万円、957万円となる。国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)は、250が98万円、300が78万4000円の対象となる。
GLCは、2025年の日本における外国メーカー車の年間登録台数で4位、ミドルサイズSUVでは首位となった同社の主力車種だ。発表会でゲルティンガー剛社長兼CEOは、「電動化によってGLCの良さが変わったわけではありません。GLCが持つ価値を、電動化によってさらに広げて、新しい選択肢を作りました」と説明した。
◆EV専用設計と2速変速機で効率を追求
electric GLCは、新しいEV専用プラットフォーム「MB.EA-M」を採用した。電動パワートレインに加え、効率、乗り心地、室内空間を一体で最適化している。
後輪側には、自社開発の永久磁石式同期モーターと2速トランスミッションを搭載する。1速は発進時の加速や市街地での効率、2速は高速走行時の動力性能と効率を重視した設計だ。長距離走行時のバッテリーから車輪へのエネルギー変換効率は93%としている。
250は最高出力260kW(354PS)、最大トルク505Nmを発揮する。前輪側にもモーターを備える300は、最高出力310kW(421PS)、最大トルク800Nmとなる。300は、必要に応じて前輪側の駆動ユニットを接続・切り離し、四輪駆動の性能と省電力を両立させる。
メルセデスベンツ electric GLC
バッテリー容量は85.5kWh。一充電航続距離は250が642km、300が618kmだ。GLCプロダクトマネージャーのダニエル・ノルテ氏は、「このプラットフォームによって、電動駆動系だけでなく、効率、乗り心地、室内空間も最適化できた」と説明した。
電気システムは800Vを採用。日本仕様はCHAdeMO規格の最大100kW急速充電と、最大6.0kWの普通充電に対応する。自社施設で外気温26℃、150kWタイプの急速充電器を使った検証では、残量10%から80%までの充電時間は45分だった。充電時間はバッテリーの状態や温度、充電器の設定などによって変わる。
外部機器へ電力を供給するV2Lにも対応する。利用には別途、充放電器が必要だ。
減速時には最大約300kWの回生能力で電力を回収する。回生の強さは4段階から選べ、前走車や道路状況に応じて自動調整する機能も備える。また、駆動系の排熱、バッテリーの熱、外気を利用するマルチソースヒートポンプを採用。同等の暖房性能を得るための電力を、一般的な補助ヒーターの約3分の1に抑えるという。
メルセデスベンツ electric GLC◆942個の光で新しい「メルセデスの顔」
外観の特徴は、歴代の『300SEL』などのグリルを再解釈したフロントデザインだ。942個のバックライト付きドットを備えるイルミネーテッドパネルは、アニメーション表示にも対応する。前後のランプには星のモチーフを取り入れた。空気抵抗係数を示すCd値は0.26となる。
ゲルティンガー社長は、「先進的でありながら一目でメルセデスと分かる、ブランドの伝統と革新を象徴する、新しい時代のメルセデスの顔です」と語った。
メルセデスベンツ electric GLCホイールベースは2970mmで、内燃機関のGLCより84mm長い。全長も120mm拡大した(比較値は欧州参考値)。後席の足元空間は47mm広がり、頭上空間も前席で46mm、後席で17mm拡大している。
荷室容量は520Lで、後席を倒すと1690Lまで広がる。さらに、GLCとして初めて容量128Lのフロントトランクを採用した。ボンネット先端のエンブレムに軽く触れると解錠でき、充電ケーブルや小さな荷物の収納に使える。
メルセデスベンツ electric GLCオプションのドライバーズパッケージには、電子制御エアサスペンション「エアマティック」と後輪操舵を用意する。後輪は最大4.5度操舵し、最小回転半径は約5.2mとなる。
ゲルティンガー社長は、「狭い路地や駐車場では、コンパクトSUV並みの取り回しの良さを実感いただけると思います」と、日本での日常的な使いやすさを強調した。
メルセデスベンツ electric GLC◆39.1型画面と複数AIで車内体験を刷新
室内には、10.3型のメーター画面と、中央・助手席用の各14型画面を組み合わせた「MBUXスーパースクリーン」を標準装備する。オプションには、同社最大となる39.1型の「MBUXハイパースクリーン」を設定。水平解像度8Kの継ぎ目のない大画面を採用した。
停車中には、画面にたき火や水族館などの映像を表示する機能も使える。たき火を映すモードでは運転席のシートヒーターが作動するなど、映像と快適装備を連動させる。
標準装備の「スカイコントロールパノラミックルーフ」は、9つに分けたガラス面の透明度を個別に切り替えられる。オプションでは、ルーフに162個の星を浮かび上がらせる照明も選択できる。一方、ステアリングには車間距離制御や音量調整用の物理スイッチを採用し、操作性にも配慮した。
車両制御の中核は、自社開発の基本ソフト「MB.OS」だ。毎秒最大254兆回の演算が可能なチップを活用し、情報・娯楽機能、運転支援、快適装備、駆動・充電を統合的に制御する。通信によるOTA更新に対応し、購入後も主要な車両ソフトウェアを更新できる。
MB.OS上で動作する第4世代MBUXには、複数のAIを組み合わせたバーチャルアシスタントを導入した。チャットGPTやマイクロソフトのビングによる情報検索に加え、グーグル・クラウドのAIを利用して目的地や施設の情報を案内する。会話の文脈を保持する短期記憶機能も備える。
ナビゲーションは、グーグルマップの地図・交通情報と独自の操作画面を統合。地形や気象情報などをもとに、充電スポットへの立ち寄りを含めた経路を計画する。
ゲルティンガー社長は、「車がお客様を理解し、先回りしてサポートしてくれる」と説明。MBUXとMB.OSについて「毎日の移動を支える新しいパートナーです」と位置付けた。
メルセデスベンツ electric GLC◆安全技術を強化、内燃機関車との混流生産も
安全面では、Bピラーに強度2000MPaの高張力鋼板を採用した。重大な衝突時には高電圧システムを自動遮断し、乗員や救助隊員を保護する。
運転・駐車支援システム群「MB.DRIVE」には、最大10個のカメラ、5基のレーダー、12個の超音波センサーと高性能コンピューターを採用する。ただし、発表時点の日本仕様では外部カメラ2個を使用していない。車間距離や操舵の支援に加え、車線変更や駐車を支援し、低速走行時には縁石などとの接触によるホイール損傷も警告する。
生産はドイツのブレーメン工場で行い、内燃機関車と同じ生産ラインを活用する。ノルテ氏は、工場に100%再生可能エネルギー由来の電力を供給し、生産時のカーボンニュートラルを実現していると説明した。
購入後の支援として、一般保証修理、定期メンテナンス、24時間のツーリングサポートを、新車購入から5年間または10万kmのいずれか早い時点まで無償提供する「EQケア」を適用する。高電圧バッテリーには8年間または16万km以内の容量保証を付帯。所定の契約手続きにより、提携充電器の月額基本料金と充電料金も1年間無料となる。
ゲルティンガー社長は、「電気自動車を選ばれたい際の不安を減らし、その先にある快適な新しい移動の魅力を楽しんでいただきたい」と述べた。今後は2026年内に『GLB』の電気自動車も導入する計画で、電動モデルの選択肢をさらに広げる。




