★少々野暮でも初志貫徹でいこう
マツダの新しい車種ベリーサは、コンパクトな箱型でルーフが長く、SUVのように頑丈で実用的に見える。丸みを帯びたデザインは心がなごみ、アグレッシブで刺激的なデザインのクルマが増えるなか貴重な存在ではある。
正直、現行『デミオ』が出たとき、実直で無骨な個性が好評だった先代とは全く感じの違う、欧州で定番のようなスポーティ・デザインにがっかりさせられた。
しかし『アテンザ』に継ぐ新型デミオ以降、マツダ車のデザインは『RX-8』、『アクセラ』とスポーティネスを強調し、マツダの限られた資源を上手く使いファミリーブランドの再構築を確実なものとした。
その意味で、デミオにスポーティなデザインを選択したのは良い判断だと感じていたところに、ベリーサがあのようなデザインで登場してきた。スポーティなマツダが定着しつつある現在、ベリーサのようなテイストのデザインを出した本心は何だろうか。
たしかにベリーサを少し小さくすれば現行デミオとしても似合うデザインだと思う。『ロードスター』にも見られるフレンドリーでナチュラルなテイストは、マツダのデザイナーが持っている根っ子のようなもの、さらには将来を見据えた布石なのであろうか。
もしそうであるなら、確立し始めたコーポレートイメージとの整合性が必要だ。ファミリーイメージとの相互補完がないベリーサのようなクルマは、たとえ単体でのコンセプトが少々良くても、コーポレートイメージをあいまいにしてしまう危険性がある。
当たり前のことだが、企業のイメージは人柄のようなものだ。日頃の行いに一貫性があって初めて、その人の言うことも行動も信用されるものなのだ。
ここは我慢、産声を発したばかりのファミリーブランドを大切に育てるのが肝要。赤子には大きな未来がある代わりに、とてもひ弱なことを忘れて欲しくない。