★こだわって創られた、乗って楽しいクルマが欲しい
トヨタ・パッソとダイハツ・ブーンは両メーカーが共同開発したコンパクトカーの新車種。既存の軽自動車ユーザーをターゲットとし、普通車(登録車)でありながら100万円を切る低価格となっている。
どこかで見たような無難なスタイルと、利便性の高い収納を中心にしたインテリアはそれなりに質感もあり、安売り特売品といった感じはしない。
クルマの普及の観点から税制優遇されていた軽自動車は、普通車に負けない装備を追及しているうちに、いつの間にか価格が100万円前後になってしまった。今やコンパクトカーより高額なグレードもある。
近年、軽自動車のコンセプトの抜本的な見直しが求められていることから、パッソ/ブーンのようなクルマの登場は論議に一石を投じよう。
しかし、パッソ/ブーンにはどこか燃えさせてくれないところがある。“恋に堕ちる”という言葉がある。「堕ちる」という言葉が意図されていない出来事を示唆するように、恋愛には驚きやスパイスが必要。つきあい始めた女性に「どう、わたし上手くやったでしょう」とでも言われようならば、男は幻滅しかねない。
アメリカ産の安い牛肉が輸入できなくなって、外食産業が困っている。農薬以外の食材の安全性も注目され始めた。そろそろ“安いだけではない”時代になったようだ。こだわって創られた、乗って楽しいクルマを欲しいのがユーザーの本心なのだ。
少し前だが、日本の軽自動車を海外の自動車メーカーが調査に来ていた。軽自動車は世界が注目するほど優れものなのだ。税制優遇だけが利点ではない。そのコンパクトさが地球環境を考えると新たなメリットになる。
日本独自の軽自動車としてシンプルな美しい乗り物を提案して、欧州のプライドの高い自動車産業をアッと言わてほしい……。よくできた“軽自動車イーター”パッソ/ブーンを見て、そんなことを考えてしまった。