大使館の日本人職員に外交特権を認めず

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スリランカ大使館で勤務する日本人の女性職員が、来日していた閣僚を宿泊先のホテルまで送迎した直後、東京都千代田区内の交差点でバイクと衝突する人身事故を起こし、相手を負傷させた。

この女性職員が、いわゆる外交特権を主張し、罰金の支払い免除を求めていた裁判で、東京地裁は10日、被告側の主張を退け、罰金の支払いを認める判決を言い渡した。

判決によると、問題の事故は2002年12月24日に発生している。同日の午後7時ごろ、千代田区日比谷付近でスリランカ大使館に勤務する43歳の日本人女性職員が運転する乗用車とバイクが衝突。バイクを運転していた男性が重傷を負った。

女性職員は業務上過失傷害容疑で事情聴取を受けたが、この際に大使館員であることや、スリランカ政府の要人をホテルに送り届けるという公務の最中に起きたと主張した。

しかし、検察側は「職員が運転していたのは大使館所有の外交官ナンバーを付けたクルマでなく、しかも職員は送迎業務を終えて帰宅する途上で事故を起こした。公務は閣僚をホテルに送り届けた段階で終了している」と判断し、2003年3月に業務上過失傷害罪での略式起訴を行った。

ところが大使館側は「大使館員には刑事裁判権が及ばない」というウィーン条約を根拠に外交特権を主張。「起訴される理由はない」と反論し、公訴自体の棄却を求めていた。

10日に行われた判決公判で、東京地裁の岡田雄一裁判長は、日本人職員の身分をウィーン条約が定める“外交職員以外の使節団の職員”であることは容認した。

しかし、刑事裁判権の免除については「大使館に勤務する日本人職員の刑事責任については、大使館が置かれている国が認める範囲で裁判権免除の特権があるものの、日本にはそのような刑事裁判権免除を認めた法律や、明文の定めが無い」と指摘した。

裁判長はさらに「仮に外交上の特権が認められるとしても、対象は公務として行われた行為に限定される。公務を終えて帰宅することは公務遂行には当たらず、その途上で発生した事故についても刑事裁判権の免除は認められない」として、女性職員側の主張を退け、罰金15万円の支払いを命じた。

大使館に勤務する日本人職員の刑事裁判権免除が法廷で争われ、判決が言い渡されるのは今回が初めてとなるが、これまでは慣例として「日本人職員であっても、公務中の事故であればウィーン条約に基づき、裁判権は免除される」と判断してきたため、さらなる紛糾も予想される。

《石田真一》

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