今年1月、静岡県浜松市内で発生した重傷ひき逃げ事件について、警察が容疑者として3月9日に逮捕した15歳の少女を検察庁・静岡地検浜松支部が「事件関与を匂わせる証言が虚偽であり、嫌疑なし」として3月17日に釈放していたことがわかった。
クルマの所有者の証言を全面的に信用し、結果として誤認逮捕していたことになり、波紋を呼びそうだ。
問題の事故は今年1月20日に発生している。同日の午前11時40分ごろ、浜松市新町付近の国道152号線で、32歳の男性が運転する原付バイクが交差点を直進しようとしていたところ、強引に右折してきた乗用車と出会い頭に衝突した。
衝突によってバイクは転倒。運転していた男性は路上に投げ出され、右大腿骨を折る全治2カ月あまりの重傷を負った。クルマは事故後、そのまま現場から逃走。警察では重傷ひき逃げ事件として捜査を開始した。
現場に残された塗膜片や、目撃証言から得た車種などの情報から警察では2月上旬までに容疑車両を特定。
所有する男性から事情を聞いていたが、この男性は自分でクルマを運転していたことを否定。「当日は知人である15歳少女にクルマを貸していた」と供述していた。
捜査の過程でこの少女が友人に対して「バイクにぶつけたけど逃げた」と話していたことや、事故当日に学校を休んでいたことなどが判明したため、警察では「少女が運転していたのは間違いない」と判断。3月9日に逮捕した。
しかし、少女は取り調べの当初から「自分はクルマを貸したという男性とは会ったことはないし、クルマも運転していない」と否認。「学校を休んだことは偶然であり、バイクにぶつけたというような話もしていない」など、警察が逮捕理由に掲げたものはすべを強固に否定した。
少女の発言が一貫していることから、検察では少女にクルマを貸した男性から再度の聴取を行ったが、この際に「少女へクルマを貸した」という証言が虚偽だったことが判明してしまった。
これによって「少女が事故当時に運転していた」とする、警察が少女を容疑者とする最大の理由が消滅する結果となり、検察は「嫌疑なし」と最終的な判断を下し、少女を17日までに釈放した。
事故当時にクルマを運転していた人物は今も特定には至っておらず、捜査は振り出しに戻った。
検察では「警察の用意した証拠を過大に評価してしまった」としているが、少女を容疑者と仮定した後に、事件への関与を匂わす証拠が急に集まりだしたという指摘もある。結果的に未成年者を誤認逮捕するというミスにもつながっており、警察の捜査のあり方に批判が集まるとみられる。