【神尾寿のアンプラグド】駐車場で“キャッシュレスの攻防”

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3月17日、国土交通省道路局が民間駐車場におけるETC決済利用についての発表を行った。同省では2005年度に、機器番号を活用した駐車場ETC社会実験を実施しており、今年3月30日にETC利用を促す民間事業者向け説明会を行うという。

周知のとおり、これまで民間駐車場での決済サービスはETC技術を拡張した「DSRC」でサポートするといわれてきた。しかし、今回発表された「機器番号方式」では既存ETC端末の車載器番号を使って認証するため、駐車場事業者側での事前登録は必要なものの、DSRC端末への買い換えなどユーザー負担がない。セットアップ台数1100万台というETCの普及規模が利用できるのもポイントだ。

しかし、DSRCへの進化・普及促進において、「民間駐車場の対応」はキラーサービスのひとつだったはず。なぜ、ここにきて“ETCの活用”という案が浮上してきているのか。その大きな要因が、今年6月までの施行が予定されている改正道路交通法の駐車禁止取り締まりの強化である。

◆パーク24の株価が急上昇した背景

2004年に成立した改正道交法には、民間の駐車監視員の導入や車両の実質上の所有者に課せられた違反金(行政制裁金)の創設が盛り込まれており、駐車禁止車両の取り締まりは現状から徹底的に強化される。おのずと民間駐車場の需要が高まり、各事業者のサービス競争やユーザーの囲い込みが激しくなる。現時点では都市部を中心に民間駐車場は不足しているが、将来を見据えれば付加価値競争での勝敗が「勝ち組・負け組」を決めるのは間違いない。

実際、コインパーキング事業者のサービス競争はすでに始まっている。この分野をリードするパーク24では、以前から駐車場のオンライン管理システム「Times Online Network & Information Center(TONIC)」を導入しており、2005年10月末の段階で設置可能物件の99%が対応済みになっている。この上で優良顧客向けのポイントサービスやキャッシュレス決済サービスを導入。改正道交法によるニーズ増大とIT化によるサービス強化が評価されて、TONIC対応がほぼ完了した昨年10月以降、同社の株価は急上昇している。

パーク24の取り組みの中でも、特に注目されているのが「キャッシュレス化」の先進的な取り組みだ。現金からの脱却はユーザーの利便性を向上させるだけでなく、民間駐車場ビジネスにおける現金取り扱いのコストとリスクを削減する効果がある。中長期的には重要な要素だ。

◆スピード感が変る駐車場

パーク24ではコインパーキング事業者の中ではいち早くクレジットカード決済に対応したほか、Suica電子マネーやEdyといったFeliCa型の電子決済の対応を始めている。また関西地域では、大阪市交通局協力会発行のFeliCa型電子決済サービス「OSAKA PiTaPa」と連携し、公共交通の利用で駐車場利用料金が安くなるパーク&ライドの取り組みも開始した。

現在、非接触IC「FeliCa」を使った電子マネーや公共交通乗車券システムは普及拡大期のさなかにあり、プラスティックカードやおサイフケータイを通じてユーザー側にも浸透している。特に民間駐車場ビジネスの視点では、公共交通連携や異業種連携のしやすさ、CRM分野での発展性が大きなメリットになる。パーク24のようにFeliCa型サービスに対応する民間駐車場事業者は今後増えるだろう。

改正道交法に刺激されて、民間駐車場ビジネスは“スピード感”が変わったのだ。DSRCの普及を待っていたら、民間駐車場のキャッシュレス化の流れに追いつけない。今回、国土交通省をはじめとするETC/DSRC推進派が、「民間でもETC」に舵を切り直したのは現実的な判断であり、少し遅すぎたくらいだ。

民間駐車場をめぐるキャッシュレス化の攻防は、その後に続く民間ロードサイドビジネスの決済市場の行方を見る上でも重要である。FeliCa型サービスとETC/DSRCのどちらが主流になるか。自動車業界にとっても注目の戦いになるはずだ。

《神尾寿》

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