3 | ゆったり憩う |
クルマのスタイル開発では、イタリアのカロッツェリアが有名だが、アメリカのクルマ全盛期1950 - 60年代にも多くのスタイルが生み出された。飛行機をイメージしたテールフィンスタイルや、小型クルーザーをイメージしたフラットデッキスタイルなどは世界のクルマのデザインに広まった。
現在は、お椀を伏せたようなスタイルが主流となっている。地面に張り付いて強力なパワーで高速を突っ走るレーシングカーには必然的なスタイルだとしても、街中で走るクルマ、とりわけサルーンなどでは滑稽なスタイルと言われても仕方がない。
新型C5のシェブロンマークから上の部分を強調したデザインは、ボンネットをフラットにしてウエスト部分を強調したフラットデッキスタイルのリバイバルと見ることができる。クルーザーは、リッチなだけではなく、波間にゆったり憩う雰囲気もあり、追いまくられる生活への癒し効果も期待できる。
新型C5のデザインは新たな発想というよりも、時代の気分を反映しながら流行が繰り返されていると捉えることもできる。テクノロジーの塊のようなクルマと、女性が血道をあげるフアッションとが、意外にも親戚であることも明らかになってくるのだ。
D視点: | デザインの視点 |
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめ『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。