【トップインタビュー】私の自動車ビジネス革命…豊田章男 トヨタ自動車社長

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豊田章男 トヨタ自動車社長
豊田章男 トヨタ自動車社長 全 12 枚 拡大写真

◆広汽トヨタは21世紀の「ジャスト・イン・タイム」の理想

----:ジャスト・イン・タイムの理想を作る。豊田社長が15年前から始めた改善活動は、次第に舞台を広げているようです。国内での業務改善から始まり、広汽トヨタでのe-CRBやSLIMの開発・展開に広がっています。

豊田:そう、私の担当が変わる都度、そのフィールドが変わり広がっていきました。国内営業の地区担当員時代に日本から始まったものが、アジア担当になってからはタイなどアジア各国に広がり、中国担当の本部長(当時は専務取締役)になった時から中国で展開しました。

----:中国市場、とりわけ広州汽車との合弁会社である広汽トヨタでは、e-CRB、SLIMの最先端のシステムが導入されています。その広汽トヨタの設立には豊田社長が深く携わったと聞いていますが。

豊田:e-CRBなどを中国で先行導入したのは、その開発時期に私が中国担当だったことが大きいですね。当時、中国北部地域では天津工場と一汽トヨタがすでに稼働していました。一方、まったく新しい自動車会社、まさしく白いキャンバスに新事業の絵を自由に描ける状況だったのが、広汽トヨタプロジェクトでした。

広汽トヨタ設立時、私は本部長の立場で、社長(総経理)の選任から販売店の選定まで関わりました。そこで考えたのは、「徹底的にジャスト・イン・タイムにこだわった工場や販売・流通網を作る」ということです。トヨタの基本理念を現在に体現する会社を作りたい。この私の想いを、広汽トヨタを設立するトヨタ側のメンバーが決まった際に、全員を集めて説明しました。また、合併先の中国側トップにも「徹底的にジャスト・イン・タイムにこだわる経営をしたい。e-CRBの導入を嫌がる販売店はいらない」と告げました。

----:そして、広汽トヨタは新時代の「ジャスト・イン・タイム」を具現化するモデルケースになったわけですね。

豊田:そのとおりです。広汽トヨタの初代社長にはTPSのエキスパートであり、製造現場の経験が豊富な人(葛原総経理)を招請しました。さらに日本でGAZOOやG-BOOKを開発したe-TOYOTAからは、社長補佐(友山総経理助理)を派遣し、e-CRBやSLIMの展開を経営上の重要課題として進めさせました。

広汽トヨタはジャスト・イン・タイムにこだわり、新しい仕組みを数多く導入していますが、それら一つひとつの取り組みは、紆余曲折しながら作り上げていったものです。もちろん、すべてが計画どおりうまくいったわけではなく、失敗もあったし、反対されることもありました。しかし、我々は前を向いて、お客様や販売店にとって理想的な仕組みを構築したいという一心で、地道に取り組んできたのです。

----:これまでの取り組みがまとまったものが、広汽トヨタということですね。

豊田:まさしく広汽トヨタは、この取り組みの集大成。そして、これは中国市場でまっさらな状態から立ち上げたからこそできたといえるでしょう。

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◆広汽トヨタで培われたビジネスは他地域に広がるのか


第1章 トヨタのIT戦略を育んだ新社長・豊田章男の狙い
第2章 世界最先端の自動車ビジネスを展開する中国広汽トヨタ
第3章 かんばん方式を顧客の手元まで拡張する「SLIM」
第4章 顧客とのつながりを強化し利益をもたらす「e-CRB」
第5章 GAZOOからG-BOOK/G-Linkへ。進化するトヨタIT戦略
第6章 レクサスを中心に導入が進む国内の状況
第7章 TOYOTAビジネス革命の意義

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《神尾寿》

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