SKYACTIVの挑戦---マツダが見る青空

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●ゆっくり燃焼させるディーゼル

ディーゼルエンジンのSKYACTIV-Dにも、マツダらしい考えが感じられた。

アプローチの方向がガソリンエンジンのSKYACTIV-Gまったく逆だから、圧縮比が同じ14.0となったのは、偶然であろう。自己着火という意味でディーゼルはノッキングさせて運転するエンジンだから、どちらにせよノッキングを制御できる圧縮比の境界は現時点ではこのあたり、という見方もできるのかもしれない。

SKYACTIV-Dの燃焼プロセスにおける考えは、SKYACTIV-Gとはまったく逆で、いかにゆっくり燃焼させるか、いかに燃焼室温度を高く保つかがカギとなったようだ。

ゆっくり燃焼させるには14.0という低圧縮比と、コモンレール方式で2000気圧の燃圧により1万分の5秒という噴射時間制御が可能なピエゾインジェクターが威力を発揮している。

従来のディーゼルエンジンでは、たとえ比較的高回転型であっても燃焼圧力と温度が高いことから、一気に燃焼されることによりススやNOxが多く発生されることになってしまう。しかも、初期の燃焼で濃い状態のまま燃えてしまうと、その後の燃焼はリーン(希薄)なので、トルクを稼ぐこともできない。

ところが、最初の燃料噴射から燃焼までの時間を多く取れれば(それでも1000分の1秒という一瞬だが)、燃料と空気がより均一に混ざることにより、排ガスがクリーンになるばかりか、安定した燃焼状態が続くことにより燃焼工程全体でトルクを引き出すことができるのだと言う。しかも圧縮工程によるポンピングロスは従来より少ないのである。

これによって従来よりもクリーンで高トルクを更なる省燃費で実現出来た。しかも大小切り替え式の2ステージ・ターボのすぐ後ろに酸化触媒とDPFを備えるものの、NOx還元触媒やブルーテックのような尿素SCRは搭載せずに現行の排ガス規制はおろか、EURO6もクリアできる見込みだというから凄いではないか。

残る弱点の燃焼が安定しにくい冷間時には、排ガスを逆流させて導いてやることで筒内を暖めるようにバルブタイミングを制御すると言う。これまでのクリーンディーゼルとは発想がまったく違う、まったく斬新なアイデアに満ちたエンジンである。

エンジンのムービングパーツも展示されていたが、クランクシャフトはどちらもジャーナル部が細く、カウンターウエイトも薄い。特にSKYACTIV-Dについて言えば、それはディーゼル用とは思えないほど華奢であるように映るばかりか、ガソリンエンジンのSKYACTHIV-Gのモノと見分けがつかないほどだった。

ディーゼルエンジンと言えば、エンジンパーツの頑強さも一つの特徴だったが、低圧縮比にすることと、燃焼を長く安定させたことでエンジンの負担は大幅に低減できたそうだ。高性能化と軽量化という相反する要件を両立させたのには、低圧縮化の実現が重要だった、ということだ。

現時点でも極めて高度な制御により、高い環境性能と快適性を実現しているクリーンディーゼルであるが、まだまだ考え方を変えれば、大幅に改善できる可能性が潜んでいることをマツダは証明してくれた。

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《高根英幸》

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