富士経済は、加工によって高い付加価値を持った無機素材の市場調査を実施。その結果を報告書「2011年版 機能性メタル/カーボン材料市場総調査」にまとめた。
PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維は、高強度ながら軽量で、耐熱性に優れるなど多くの特性を持ち、幅広い分野に採用されている。2010年の世界市場は、重量ベースで2万9000t、金額ベースで1040億円となった。
用途別に見ると、スポーツ・レジャー用具が25.9%、航空機が20.7%、自動車が3.4%を構成しており、その他にも多様な用途がある。また、日系メーカーが約8割のシェアを占める。
自動車(ドライブシャフト、外板など)用途は、高コストがネックとなっており、一部の高級車やスポーツカーでの採用に留まっている。しかし、軽量化と燃費向上に繋がることから、特に次世代自動車における採用意欲が高まっており、メーカーは自動車向け低価格品を上市することで更なる拡大を目指している。
2011年の世界市場は、前年比20.7%増の3万5000t、同23.1%増の1280億円が見込まれる。今後、航空機や自動車に加えて、風力発電や燃料電池といった次世代エネルギー分野での需要拡大も追い風に、2015年には、2010年比2.1倍増6万3000t、同2.2倍増の2320億円が予測される。
ステンレス箔の2010年世界市場は、9500t、250億円。用途別の構成比は、自動二輪車用排気触媒が36.8%、携帯電話端末などのタクトスイッチやドームスイッチが13.7%、HDDのサスペンションが7.4%などとなっている。
2011年の市場は、前年比10.5%増の1万0500t、同8.0%増の270億円が見込まれる。
極細炭素鋼線は、太陽電池や半導体で使用されるシリコンウエハや、精密機器のフィルターに使用される水晶ウエハなどを製造する際に、遊離砥粒加工方式でインゴットをウエハ状にスライスするために用いる。2010年の世界市場は、7万3000t、800億円となった。
太陽電池用途が90%以上を占めており、同用途向けシリコンウエハの拡大に伴い高成長を遂げている。2011年の市場は、前年比20.5%増の8万8000t、同20.0%増の960億円が見込まれる。