大矢アキオの『ヴェローチェ!』…新生デトマソのSUV製造権、中国へ

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2011年3月、ジュネーブモーターショーに展示されたデトマソ・ドーヴィル
2011年3月、ジュネーブモーターショーに展示されたデトマソ・ドーヴィル 全 8 枚 拡大写真

 デビューからたった9か月 

伊デトマソ(デ・トマゾ)・アウトモービリは2011年12月、SUV『ドーヴィル』の製造権を中国企業に売却した。一部メディアによると売却額は1200万ユーロ(約12億円)。相手先である中国企業の名前は明らかにされていない。

現在のデトマソ・アウトモービリを率いているのは、元フィアット役員で実業家のジャンマリオ・ロシニョーロ氏(81歳)。04年に解散した旧デトマソの商標を09年に取得し、08年に購入した旧ピニンファリーナ・グルリアスコ工場とリボルノの2拠点を用いる新生デトマソ生産構想を掲げた。

SUVドーヴィルはその製品第一段として、11年3月ジュネーブモーターショーで公開したモデルだった。

往年のデトマソ製高級セダンの名前を踏襲しているものの、ボディタイプはピニンファリーナによるSUVで、エンジンは米パワートレイン・インテグレーション社製V型6気筒エンジンを搭載。ボディワークには、ロシニョーロ氏の関連会社が特許を所有するレーザー溶接式アルミニウム製構造材が用いられていた。

ドーヴィル公開とともにロシニョーロ氏は、今後4年間で1億1600万ユーロ(116億円)を投資するといった大胆な計画も発表していた。しかし当時から休業補償金を支給されながら待機中の旧ピニンファーナ従業員による再雇用要求デモが工場周辺で頻発。さらにここ数か月は、彼らを再雇用するための資金調達が難しいことが表面化していた。

今回の製造権売却に関し、ロシニョーロ氏はメディアに対して「デトマソの高い技術力が評価された証し」と依然強気で、売却で得た資金は従業員の人件費に充当する考えを示した。

参考までに筆者は2011年4月、モンテカルロで開催されたゴージャスカーショー「トップマーク」にドーヴィルの試乗車が置かれていたのを確認している。そのとき待機していたスタッフによれば、すでにドーヴィルは1500台の受注を獲得しており、近い将来リボルノで200人、トリノで1600人を従業員を採用する計画であることを話してくれた。

だが今回の製造権売却を見るかぎり、とても計画どおり進行していたとはいえなそうだ。第2弾モデルとして構想が示されていたGTモデル・新生『パンテーラ』に関しても、当然先延ばしか見直しが行なわれるだろう。

それにしても発表から僅か9か月で、華々しく披露したモデルがこうした結末を迎えるとは。デトマソが欧州名門ブランド復活計画の失敗リストに名を連ねてしまうのか、それとも新たな経営計画で苦境を脱するか、2012年が正念場の年になることは間違いない。

筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)■■■コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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