気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。
2012年9月5日付
●タイ洪水復旧半ば、被災の工場、防水堤整備に差、目立つ部分再開(読売・8面)
●悪質運転どう厳罰化、7日に諮問(朝日・38面)
●日産、8月、中国の新車販売0.6%増(毎日・8面)
●トヨタ、デンソーシステム開発、自慢の走りゲームで再現(東京・7面)
●電気車充電4000か所、20年メド、日産・住商やJX、広がる連携普及に弾み(日経・1面)
●蓄電池の内部解析、世界初の装置完成、トヨタ・NEDO・京大など(日経・9面)
●先読みビジネス天気、自動車、補助金終了より増税注視(日経・10面)
ひとくちコメント
神奈川県を中心とする首都圏内で、10月1日から電気自動車(EV)向けの会員制充電サービスが開始される。日産自動車、住友商事、日本電気、昭和シェル石油の4社が共同出資して設立した「ジャパンチャージネットワーク」が事業母体となり、当面、県内のガソリンスタンドやコンビニなど50カ所でサービスを開始し、順次、ネットワークを全国へと拡大していくという。
その記者発表会が新横浜のホテルで出資会社の担当役員らが揃い踏みで行われた。きょうの各紙にも取り上げられているが、メディアによって掲載に温度差がある。日経は「電気車充電4000か所」との大見出しで、1面トップ記事で報じている。
日経が独自取材ではなく、発表ものを1面トップで掲載するのも珍しいが、記事のポイントは「EVの急速充電設備を2020年までに4000か所に増やす」という壮大な計画。会見の席で事業母体の代表が将来の目標数字を述べたもので、その抱負発言をベースにトップ記事に仕立てた。
一方で、読売、産経などは、これまで「無料」だった充電サービスが「有料化」されることを中心に取り上げている。このうち、産経は「EV普及と、充電インフラ網の普及は、鶏と卵の関係」と指摘。「充電課金サービスの普及が、EV普及のカギになりそうだ」と課題も含めて具体的に伝えている。
記者発表を聞いて気になったこともある。例えば、一回の充電に支払う金額はバラツキがあるものの500円前後である。買い物や食事目的のスーパーや飲食店ならばいいが、石油元売り4社(JX日鉱日石エネルギー、昭和シェル、出光興産、コスモ石油)が組成する「EVサービスステーション・ネットワーク」の28拠点との相互乗り入れも実現した。
スタンドではEV充電のためのスペースを確保しなければならず、しかも、1台が20分以上もそのスペースを“占領”する。洗車やカー用品を購入する利用客もなくはないが、費用対効果を考えても採算は悪い。
また、サービスを開始する50か所の中には、急速充電の設備が1台しか設置されていないというケースもある。この夏のお盆期間中、東名高速では充電設備のあるサービスエリアで、順番待ちのEVが一般車が駐車場に入る進路に停車していたため、大混乱する光景もみられた。
朝日は「計画通り進めば、EVの普及に弾みがつきそうだ」と伝えている。自動車メーカーなどが将来の夢を語るのは否定しないが、インフラ整備の問題を取り上げても、本格普及にはまだまだ大きな壁があるようだ。