クライスラー『300C』がフルモデルチェンジし、クライスラー『300』として登場した。
シャシーは先代からのキャリーオーバーだが、スタイリングは大幅に変更された。垂直に近かったフロントウインドウは、かなり傾斜が効いたものとなり、グリルまわりのデザインもおとなしめとなった。日本仕様に搭載されるエンジンは286馬力3.6リットルのみ。組み合わされるミッションは8速ATとなる。
今回のフルモデルチェンジはクライスラーがフィアット傘下に入ってからのもの。このクライスラー300もイタリアではランチア・テーマとして売られている。
新型クライスラー300は先代と比べて大きな進化をとげた。各部において進化は目を見張るものがあるのだが、なによりもラグジュアリー面での進化が大きい。
8速ATの採用によって高速巡航時はより低回転での走行が可能となり、燃費はもちろん静粛性も向上。もちろん多段化による加速性能の向上も見逃せない。アクセルペダルを踏み込むと、シューンと滑るように加速していく。しかもボディは安定していていフラットライドのまま力強い加速をするのだ。
静粛性という面では、ボディだけでなく二重合わせガラスの採用など細かな部分にまで徹底したチューニングを計られている。雨の中での試乗となったが、ウインドウに当たる雨音が小さく、このガラスの効果は確実に効いていることがわかった。
スタイルがおとなしくなったこと、よりラグジュアリー性が高まったことで、以前よりもユーザー層は広がるだろう。ファブリックシートの標準タイプなら400万円を切る価格設定というのも、かなり戦略的な設定で、ユーザー層を広げる大きな武器となるはず。
残念なのはセンタートンネルの前側が運転席側に広がっているので、ドライバーの左足を圧迫すること。右ハンドル車でもこうした部分が犠牲にならない設計がほしい。
5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。