【新年インタビュー】豊田自工会会長、日本の底力を見せる2013年に

自動車 ビジネス
日本自動車工業会 豊田章男会長
日本自動車工業会 豊田章男会長 全 6 枚 拡大写真

日本自動車工業会の豊田章男会長は、2013年に向けたメディア各社との共同インタビューで、日本の製造業は依然として「6重苦」の状況にあり、自動車産業にとっては踏ん張り時が続くとの認識を示した。

そのうえで、日本の経済再生では東日本大震災の経験を踏まえた自動車産業のイノベーションや底力を十分に発揮していきたいと強調した。

自動車が踏ん張らないと日本の産業は総崩れになる

----:自動車は成熟産業と指摘されることもあるが、日本の自動車産業の成長力や競争力をどう見ているか。

豊田:成熟産業とか20世紀の産業だとかいわれることもあるが、自動車は成長産業だ。1990年に4800万台だった世界市場は、2011年においては7800万台となった。この間、年率4%で伸びてきた産業である。そのなかで日本は販売面では約3割のシェアをもち世界トップ、生産では中国に次いで2位であり米国やドイツより多い。

クルマはエンジン、トランスミッションといった主要部品のほか、電機・電子製品や鉄鋼などの素材、さらに計測器などによって造られる。自動車産業が強いということは、パッケージされた産業の総合力が強いということだ。日本の自動車産業の競争力の基盤は、いわばサプライチェーンと粘り強い人材力に尽きると考えている。トヨタの場合、300万台を日本で生産しており、これは1980年代から変わっていない。この間に海外生産は20万台から500万台に増えたが、その礎になったのが国内の産業集積だ。日本の開発技術、生産技術のベースがモノづくりの国際競争力を支えてきた。お客様からの信頼や競争力の源泉が国内の工場にあるということだ。

現状のような6重苦が続いて空洞化が進めば、国内の産業基盤や人材力が失われ、自動車メーカーの世界での競争力も弱体化する。だから自動車が踏ん張らないと日本の産業やモノづくりが総崩れしますよと、申し上げてきた。政府には自動車産業を経済政策のど真ん中に置いていただきたいし、われわれも新政権と一緒になって産業を活性化していきたい。

大震災を経験した故にできる次世代環境車も

----:2013年をどのような年にしたいと考えているか。

豊田:ここ数年は、毎年とにかく色々なことが起こってきた。2012年の年初は、決していい年にとは望まないので、何も起こらない平穏無事な年にと申し上げた。私の平穏無事とは、毎日健康で会社に行け、毎日生産と販売ができるということ。しかし、私の場合、トヨタの社長になってからそうした年は1度もない(笑)。2013年も平穏無事にと願うのみであり、そして、リーマン・ショック以降に支えていただいた方々に、感謝を示すことのできる年になってくれればいいなと考えている。

----:日本メーカーは2013年のグローバル競争にどう臨んでいくべきか。

豊田:一律には難しいところだが、2011年に東日日本大震災を経験した日本だからこそできる経済再生はあるのではないか。われわれも、そういう経験があるからこそ考えうる次世代環境車とか、インフラ整備への貢献などに取り組めると思う。そこで自動車各社のイノベーション、日本の自動車産業の底力みたいなものをしっかり見せないといけない。2013年は、その底力こそが評価される年になるのかなとも考えている。

理屈を超えて国内雇用を守っている

----:世界市場の動向をどう見ているか

豊田:各地域の昨年を振り返ると、米国では年率1400万台くらいのペースが続いた。リーマン・ショック後に1000万台を割る市場規模に落ちたが、米国では自動車は何年に1度は買い替える市場となっており、自動車の保有状況から考えると、(需要回復は)分かりやすい。欧州では通貨危機によって、ピークより少ないものの1800万台くらいの規模で回っている。中国市場は2000万台には届かなかったものの大きい。ここ数年は大変厳しい時期にあるが、そうした状況でも先進諸国のように保有を回転する市場では一定の需要がある。加えて、保有が伸びて行く段階にある新興諸国での需要も大いに期待できると見ている。

----:消費税率引き上げを前に、車体課税を中心とした自動車諸税の負担軽減への取り組みも待ったなしとなっている。

豊田:何度も申し上げているが、自動車税制を優遇してくださいと主張しているのではない。自動車諸税は買う、保有する、走るという各段階で9種類あり、自動車ユーザーは年間8兆円も負担している。従来、道路特定財源としてきたもので一般財源化されたものもそのままとなっている。

一方で、若者のクルマ離れといわれるが、とくに都市部においては若者がクルマをもつには大変なコストがかかるというのが実情だ。日本の場合、金融資産はシニア層に偏っているということを考えると、むしろ、祖父や祖母がお孫さんにクルマを買ってあげる時は支援する税制があるとか、そうしたことも考えるべきでないか。短期的には、自動車産業はある意味、理屈を超えて国内雇用を守っているという現実もある。消費税率がアップして自動車税制に何も手が打たれないとなると、相当数の雇用が失われてしまうことになろう。そこをご理解いただきたい。

若者により近づく東京モーターショーに

----:今年の東京モーターショーには、どのように取り組むか。

豊田:東京モーターショーには、自工会の歴代会長が懸案事項としてきたように若者のクルマ離れへの対応、そしてアジアのなかでのモーターショーの位置付けという両方の課題がある。アジアでは日本以外の市場が拡大しており、(海外メーカーには)昨今、市場としての魅力が少なくなっているのも現実かと思う。だが、前回2011年のショーから会場を東京・お台場に移し、来場者も相当増加した。また、昨年には「お台場学園祭」も開催し、若者に自動車メーカーが近づき始めたと考えている。

今年の東京モーターショーは、そうした流れを発展させていく大変重要なイベントになる。今年は、ほぼ同時期に「ITS(高度道路交通システム)世界会議東京2013」も開催される。交通インフラも含めたITSも日本は大変進んでいる。ユーザーの視点から世界にそうした動きを発信していきたい。モーターショーが東京ブランドや日本ブランドの価値を上げていくことにも貢献できるのではないかと思っている。

《池原照雄》

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