三菱重工業は、インド国営のバーラト重電公社(BHEL)に排煙脱硫装置の技術をライセンス供与することで合意した。
今回の技術供与の対象となるのは、石炭火力発電ボイラーや産業用ボイラー向けの石灰石膏法、海水法排煙脱硫装置のEPC(設計・調達・建設)技術。日本企業がインド企業に排煙脱硫装置の技術を供与するのは今回が初めて。
排煙脱硫装置は、石炭などを燃焼した際に発生する排ガスの中から二酸化硫黄(SO2)などを取り除いて浄化するプラント。三菱重工の技術は、排ガスと吸収液の接触効率を向上させる液柱塔を採用して、高いSO2吸収性能を発揮する。
インドでは今後、環境規制が強化される見通しで、これに先立って先進技術を導入し、市場の主導権を握っておきたいBHELと、この分野で急成長が見込まれるインド市場参入への足掛かりを得たい三菱重工と思惑が一致した。
インドでは、電力の60%強に当たる約1億kWが石炭火力でまかなわれているが、経済の発展に伴い、第12次5カ年計画(2012~2017年)で約8000万kW規模の石炭火力の導入が計画されている。現状、SO2規制が本格化していないため排煙脱硫装置の設置は限定的だが、大気汚染問題などが深刻化していることから、環境規制強化の動きもあり、排煙脱硫装置の需要拡大が見込まれている。
BHELは、国内に14の工場を持つインド最大の重電機メーカー。ボイラー、蒸気タービン、ガスタービン、水車、発電機、送電設備などの多様な機器・設備の製作・供給から、ターンキー方式による発電所の建設までを手掛け、インド国内向け火力発電設備では圧倒的なシェアを持つ。
三菱重工は2007年からBHELに対し火力発電所用各種ポンプの技術をライセンス供与している。
三菱重工は1972年に火力発電設備からの排ガスを処理するプロセスを実用化して以降、世界に220基超の排煙脱硫装置を納入した実績を持つ。今回のBHELへの技術供与により市場対応力を強化し、今後、急拡大が見込まれるインドの排煙脱硫装置市場で積極的に事業を展開する。