4月17日、グランドハイアット東京にてSAS FORUM JAPAN2015が開催。そのプログラムにおいて、日本電気ビッグデータ戦略本部孝忠大輔氏が「データサイエンティストが語るビッグデータによる価値創出」と題し、ビッグデータを活用するための組織づくりについて講演した。
SAS Tech Newsの“SAS Partner Network”でも執筆を担当しているという孝中氏は、2003年日本電気入社後、DWH/BIシステム(経営情報をもとに経営の意思決定を促進するシステム)の構築を経験し、流通・サービス業を中心にデータサイエンティストとして分析業務を実践しているという。
◆NECの考える分析組織のあるべき姿
センシング技術の発展により、多様なデータの取得が可能になった。そのデータが活用されビジネスの現場に貢献する例として、孝中氏は自動車の自動運転を挙げる。
センシングで集めたデータはアナリティクスによって「情報」に変わり、アクチュエーションによって「価値」に変わる。この一貫の流れをつくるために“準備するべきこと”を孝忠氏は「分析レシピ」と呼び、分析レシピは分析の「概要」「材料」「進め方」の3つで構成されるという。
分析の概要とは、どのような目的で利用する分析手法なのか?という“分析の目的”、どのような業種/シーンで使われる分析手法か?という“分析の使い所”、分析時に気をつけておくべきポイントとは?という“分析のコツ・ポイント”を意味する。
続いて分析の材料とは、分析の概要を踏まえたうえでわかる、準備すべきデータを指す。そしてデータに適した分析モデル(関数)を選択する。
そして分析の進め方については、どのような分析用データマートを作成すべきかを考え(下ごしらえ)、そして分析モデルに入力・設定すべきパラメータとはなにかを選択する。最後に分析した結果をどのように報告書にまとめるべきか、分析結果の見せ方を考えるフェーズが来る。
孝忠氏によれば、このような分析のレシピを、組織がこなしていくためには大きく分けて5つの機能が必要という。その機能とは1.分析事業統括、2.マーケティング、3.データサイエンス、4.データエンジニア、5.データマネジメントだ。「3の指す、データサイエンス、すなわち分析する人たちがいないと始まらないのは確かだけれど、これに加えて(3以外の)1・2・4・5の人たち全てがそろわないとビッグデータを価値としてつなげていくことが難しい」(孝忠氏)。
◆データサイエンティストに求められる3つの力
「この5つの機能のうちの、データ分析スペシャリストが集うデータサイエンス部門で、ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニア力がそれぞれ均等に備わっていることが重要」と孝忠氏は強調する。孝忠氏は、データサイエンティスト協会における定義を引用しながら、ビジネス力とは「課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理し、解決する力」、データサイエンス力とは「情報処理、人口知能、統計学などの情報科学系の知識を理解し、使う力」、データエンジニアリング力とは「データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用できるようにする力」と説明した。
これら3つの力は、課題解決の各フェーズでかわるがわる要求されるという。データ分析の初期段階すなわち目的やテーマを設定する段階ではフェーズではビジネス力が、続いて問題定義やアプローチの設計の場面ではデータサイエンス力が、そしてデータ処理や分析の場面ではデータエンジニアリング力が求められ、最後の課題解決の場面では再びビジネス力が求められる。
こうしたバランス感覚と柔軟性に富んだデータサイエンティストの育成は、日本のみならずグローバルにみても企業にとって喫緊の課題といえるだろう。