【トヨタ MIRAI 試乗】実質 クラウンHV の価格で手に入る「未来」…青山尚暉

試乗記 国産車
トヨタMIRAI
トヨタMIRAI 全 13 枚 拡大写真

生産台数1日数台。今、注文しても納期は2018年以降という、手に入るのも近未来!?の燃料電池市販車が『MIRAI(ミライ)』である。

【画像全13枚】

価格は723万6000円からだが、びっくりすることはない。補助金を使えば実質520万円程度。クラウンHVと変わらないことになる。

まずは燃料電池車のMIRAIがどうやって走るのか、おさらいしたい。エンジンを持たず、FCスタックと呼ばれる燃料電池と2本の水素タンクを床下に積むMIRAIは、水素発電で走るEVと考えればいい。フロントの巨大な空気吸い込み口から空気をFCスタックに送り、そこで電気と水を発生させ、その電気をバッテリーとモーターに送り、MIRAIを電気で走らせる…というわけだ。水は車体後方左寄りから排出。あらかじめ排出したいときは「H2O」スイッチを押して任意で排出させることもできる。

EVと大きく違うのは、充電スタンドで時間をかけて充電するのではなく、水素ステーションでわずか3分程度で水素を充填できること(専任スタッフしか作業はできない。気温の低い冬の方が充填時間は短い)。現時点で水素は4.3kg充填可能。タンク自体は4.6kgまで入るのだが、今のところ規制があり4.3kgまでに制限される(最高充填圧力基準が35から70メガパスカルに引き上げられたが、今後、80メガパスカルになれば4.6kgの充填が可能になり、航続距離はさらに伸びる。水素1kg=1080円税込み)。

水素満タン状態で走れる距離は実質450km程度。例えばクラウンHVの実燃費を15km/リットルとすれば、燃料タンク65リットル満タンで1000km程度走れる計算になり、MIRAIは約半分。とはいえ、高速道路中心で東京~大阪間を無充填で走れたというデータもあり、必要十分な航続距離と言えるのではないか(水素ステーションは4月現在で東京、埼玉、神奈川、愛知、大阪、福岡など全国18カ所+移動式1。順次開所予定)。

実は、EVは電気充電量が減ってくると動力性能も落ちてくる可能性があるのだが、MIRAIは水素が減っても最後まで動力性能が落ちることはない強みがある。

走りだせば、エコモードでも出足の加速感は素晴らしく軽やかでスムーズ。EVなのだから当たり前とも言えるが、アクセルペダルを踏み込むと34.2kg-mもの3.5リットルV6エンジンに匹敵するトルクを瞬時に発生してくれるのだから余裕しゃくしゃくなのである。

基本的に動力源からのノイズは、エアポンプの作動音を除いてないに等しい。とにかく吸音、遮音材の適切配置もあって室内はクラウンHVどころじゃない静謐さに包まれる。

エコモードではさすがにアクセルレスポンスは穏やかだが、加速力自体は2.4リットル HVのエコモードに匹敵。ノーマルモードでは3.5リットルV6並みの加速力をよりEVらしくレスポンシブルに発揮。さらにスポーツモードにセットすれば、アクセルペダルを軽く足を乗せるだけで間髪を入れずに強烈なモータートルクが立ち上がり、まさにスポーティーセダンと呼べる強烈な加速力を披露してくれるのだ。が、MIRAIの立ち位置からすれば、個人的にはノーマルモードでも十分すぎる性能!と思えたのも本当だ。

そのモーター走行感覚と同じぐらい感動したのが、まずは自然なパワステの操舵フィール、ブレーキフィール、そして重量物のFCスタックと水素タンクの床下に配置による低重心が効いた極めて穏やかでニュートラルな操縦性だった。

乗り心地は700万円のサルーンとしてどうか?と問われれば微妙だが、そもそもコストの掛けどころがガソリン車とは違う、と考えれば悪くない。ストローク感あるマイルドかつしなやかなタッチが基本で、とにかく乗員の体に優しい点が褒められる。

MIRAIにはアウトドアや災害時に威力を発揮する、トヨタの一部HVモデルに用意される100V/1500Wコンセント×2のほか、トランク内に9kWhものDCコンセント(CAHdeMO端子/DC-AC変換器が別途必要)を標準装備。後者は家1軒に給電することも可能なのだから万一の際、頼りがいがある。

ちなみに2人掛けで足元が狭い後席に中小型犬を乗せることはできるが、中央に大型コンソールがあるため大型犬は乗車不可。愛犬家には残念だが、ドッグフレンドリー度で語るクルマではない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★
ペットフレンドリー度:-

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行なっている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《青山尚暉》

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