姫路モノレールの廃駅「大将軍」、最後の一般公開…老朽化で解体へ

鉄道 行政
閉鎖されていた姫路モノレールの大将軍駅が一般に公開。駅を含む高層建築物がまもなく解体されるため、一般公開はこれが最後になる。
閉鎖されていた姫路モノレールの大将軍駅が一般に公開。駅を含む高層建築物がまもなく解体されるため、一般公開はこれが最後になる。 全 30 枚 拡大写真

わずか2年で営業を終了した大将軍駅(兵庫県姫路市)が8月13日、一般に公開された。書籍の取材などを除くと、同駅構内が一般に公開されるのは48年ぶりとみられる。駅と一体化した高層建築物がまもなく解体されるため、一般公開はこれが最後になる。

大将軍駅は1966年から1968年までの2年間だけ営業した、姫路市営モノレール唯一の中間駅。同駅から南へ約100mのところに大将軍神社がある。地上10階建ての高層建築物「高尾アパート」の3・4階部分に、モノレール用のスペースを設けて駅を整備したのが特徴だ。同様の構造のモノレール駅としては、北九州高速鉄道(北九州モノレール)の小倉駅や、中国・重慶軌道交通(重慶モノレール)の李子ハ(「ハ」は土へんに霸)駅がある。

姫路市は高尾アパートの解体に先立ち、事前募集の見学会として大将軍駅の一般公開を計画。13・14日の2日間にわたり数回に分けて行うことになり、まず13日の9時50分から地元住民枠の見学会が行われた。

駅施設へは、アパートの東端にある入口から進入。まずは1階から2階へ向かう階段を上がる。駅の営業終了後も2階にあったビジネスホテルの入口として長らく使われていたため、それほど汚くはない。

しかし、2階から先は駅施設として閉鎖されていた空間。階段は今回の見学会開催にあわせて掃除されていたが、エスカレーターはほこりまみれのまま放置されており、素人目に見ても動かせる状態にはなかった。

この階段を抜けると、目の前に改札口、そしてモノレールの線路1本とホーム1面が設置された駅施設が見えてきた。改札口の脇にある切符売り場をのぞき込むと、鳥のフンにまみれた机の上に、真っ白なタマゴらしきものがポツンと置いてある。駅の事務室自体が鳥の巣と化しているらしい。窓口の上には時刻表や運賃表らしき案内板が設置されていたが、いずれも文字がかすれており、ごく一部を除いて判読できなかった。

高層建築の内部をくりぬくようにして設けられた空間のため、ホームは太い柱が並んでいて少し歩きにくく、全体的に薄暗い。床は意外ときれいだったが、実際は鳥のフンなどが堆積していたため、見学会の開催に先立ち清掃したという。高層アパートを支える柱には、「大将軍 だいしょうぐん DAISYOGUN」と記された行灯(あんどん)式の駅名標が、往時の姿のまま設置されていた。

見学会に参加した30代の女性は「物心ついた頃には廃止されていたが、放置されたモノレールの高架橋を見て育った。『あるのが当たり前』の存在だったから、解体は少し寂しい」と話す。一方、大将軍駅からモノレールに乗ったことがあるという60代女性は「運賃が高く、確か1回か2回、使っただけ。駅を利用したときの光景も覚えてない。せめて(構内に残る)駅名標や時刻の案内板などは、後世に残せないものか」と話した。

■車両は終点駅で展示中

姫路市営モノレールは、姫路駅から手柄山駅までの1.6kmを結んでいたモノレールだ。姫路市が市内中心部と工業・住宅地域を結ぶ交通機関としてモノレールの整備を構想し、まずは手柄山で開催されることになった姫路大博覧会の観客輸送を目的に建設することが決定。1966年5月に開業した。

モノレールの方式は「ロッキード式」を採用。航空機メーカーとして知られるロッキード(現在のロッキード・マーティン)が開発したモノレールで、コンクリートの軌道上に鉄のレールを敷き、鉄車輪の車両が走る方式だった。

しかし、博覧会の終了後は利用者が大幅に減少し、経営が悪化。市内の交通機関としてモノレールを整備する構想も立ち消えになった。さらに、ロッキード社がモノレール事業から撤退したため補修部品の確保も難しくなり、1974年4月の営業休止を経て1979年1月には正式に廃止された。

モノレールの施設は一部を除いて事実上放置されていたが、2011年4月には終点の手柄山駅跡を再整備した展示施設「手柄山交流ステーション」がオープン。4両あった車両のうち、200形電車2両(201・202)が展示されている。

一方、唯一の中間駅だった大将軍駅は、姫路駅に近すぎることから利用者がとくに少なく、路線の休止に先立つ1968年1月に休止。以後は列車が通過するだけとなり、駅施設も閉鎖された。高尾アパート自体は近年まで使われていたが、このほど老朽化のため解体が決定。これに伴い姫路市は、最後の一般公開を計画した。

当初は8月13・14日に各日4回(地元住民の優先枠を除く)の見学会を実施し、計400人の参加者を募集していた。しかし、応募が殺到したことから各日3回追加して定員を計700人に増やしたものの、それでも競争率は10倍以上になったという。

《草町義和》

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