【日産 GT-R 2017モデル 試乗】改めて思い知ったGT-Rの凄さ、その理由とは…中村孝仁

試乗記 国産車
日産 GT-R 2017モデル
日産 GT-R 2017モデル 全 18 枚 拡大写真

『GT-R』の開発責任者でもある田村宏志氏は、冒頭のあいさつの中で、GT-Rについて、「すごく乗り心地が良くなったと言われるのは正直心外なんです。」と話された。それは、実はGT-R のほんの一面しか捉えられていなかったからだと感じた。

今やGT-Rの最高出力は570ps、最大トルクも637Nmに達する。これがニスモ仕様になると600ps、652Nmにまで拡大する。もはや正直に言えば素人の扱えるレベルではない。といってもそれは限界を極めようとした時の話であって、570psのGT-Rですら、常人の扱えるレベルではないのだが、このクルマ、何の予備知識もなく(そんな人はいないだろうが)、このクルマをGT-Rと知らずに乗ったところで、恐らくそのすべての人が素晴らしいクルマだと絶賛するに違いない。それほど、2017年モデルのGT-Rは進化し、深化し、そして昇華していた。

一番恐れ入るのは、この期に及んでボディ剛性が向上し、しかもエンジン性能もアップしている点。この両方、実はデビューした2007年以来、基本は何ら変わっていないのである。それこそ、細かい点の煮詰めと潰しを、年を経るごとに行ってきた成果の賜物ではないかと思う。2017年はある意味ではその集大成と言われているが、その集大成に試乗した結果がタイトルに書いたようにその凄さを改めて思い知ったというわけである。

試乗日は生憎の大雨であった。しかもニスモやトラックエディションの試乗は袖ヶ浦サーキットである。そしてそこに至るまでのオンロード試乗は、トップオブレンジのプレミアムエディションというモデル。冒頭書いた田村氏の言葉を思い出しながら、館山自動車道を木更津方面にノーズを向けて走り出すと、確かにすごく乗り心地が良い。この部分だけを捉えて話をすればそうなるのだが、元来GT-Rというクルマは、その性能を堪能するために足回りはとびっきりに引き締められているはずである。にもかかわらず、極めて快適という言葉が出てくる背景には、究極的に剛性が確保された骨格に対し、鋭敏かつしなやかに動くサスペンションがマッチした結果、このような乗り心地が実現できたのであって、軟弱にした結果出来があった足ではないということ。だから、単に褒め言葉のように乗り心地が良くなったといわれるのは、田村氏にとって心外だったのである。

そのフラットで外乱の無い乗り味は、世界中探しても他に比較すべきクルマが思いつかない…と思えるほど。土砂降りの雨と轍にたまった雨水をものともせず、見事なほどの直進安定性を保ちながら突き進む。軽くステアリングに手を添えているだけで、まさしく矢のように直進するのだ。実は、帰路は『フェアレディZ』の試乗。Zには申し訳ないが、このZに試乗したことで、改めてGT-Rの素晴らしさが増幅された形になった。

恐らく並のクルマと比較したら、Zの直進安定性も優れたもののはずなのだが、それでも当日のひどい天候では、時折どうしても修正舵を当てる必要があった。それに乗り心地。これはもう正直言って天と地ほどの差がある。今や1000万円を超える(プレミアムエディション)高価格車であるGT-Rだが、その作りの良さや走りの素晴らしさを考えれば、かなりお安いクルマといっても過言ではない。

ところをサーキットに移してニスモとトラックエディションの試乗となったが、残念なことにコース上至る所に俄か川やら池が誕生し、とてもじゃないが600psなどというパフォーマンスのクルマを存分に堪能する状況ではない。やっと見つけたストレートでもアクセルを踏み込んだ瞬間にエンジン回転だけが猛然と上がる始末。ただ、GT-Rの卓越した4WDによる安定性と運動性能のおかげで、コース内から逸脱せずにとどまっていられた、ともいえる。

試乗の終わりに、僅か5人しかいないGT-Rのエンジンを組み上げる匠の技を見せていただいた。ミクロンの単位を手の感触で探り当て、正確に組み上げるその技術はまさに芸術の域。こんなエンジンを搭載したクルマに乗ってみたいものだと思った(自分の金で買ってね)。ここまで凝りに凝った日本車は、GT-Rを置いて他にはない。というわけで改めてこのクルマの凄さを思い知ったというわけである。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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