ZFの描く“ビジョン・ゼロ”…交通事故のない世界を実現するためのテクノロジー

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“ビジョン・ゼロ”。このZEROは交通事故をゼロにするというZFの強い思いである。現時点で、交通事故がない世界というのはなかなか想像し得ないものではあるが、同社が発行しているマガジン「drive」の“Vision Zero”と題された記事では、目指す未来と、実現に向けどのような技術が要求されるのかが詳細に綴られている。

『VISION ZEROビジョン・ゼロ』
(テキスト:ヨハヒム・ベッカー)

◆大幅に減少する交通事故・・・しかし“ビジョン・ゼロ”の実現はまだ先の話


交通事故の発生件数は、過去数十年間にわたって急速に減少している。専門家たちは、アクティブセーフティシステムによって事故件数をさらに削減できるとする見解に同意している。

「ビジョン・ゼロ」は、ドイツやスウェーデンなど、多くの先進国が現在推進しているプロジェクト名である。最終目標は、路上での交通事故死亡者数をゼロにすることだ。すばらしい目標ではあるが、まだ長い道のりでもある。世界で最も安全な国でも、交通事故による死者が全死亡者数に占める割合は相当なものだ。2013年のスウェーデン国民10万人あたりの交通事故死亡者数は2.4人、スイスでは3.3人、オランダでは3.4人、ドイツでは4.3人である。アメリカでの数値はけた違いに多く、国民10万人あたりの交通事故死亡者数は10.6人にのぼる。

シートベルトやエアバッグ、クランプルゾーン(衝撃吸収帯)といったパッシブセーフティ機能のおかげで、交通事故の生存率は大幅に改善されてきた。例えばドイツでは1970年以降、車両台数と交通量が著しく増加したにも関わらず、交通事故による死亡者数が84パーセント低減されたのだ。しかし、世界中の交通事故による犠牲者の数は、全体的には依然として高いままである。

自動車そのものを総合的に変えない限り、将来こうした数字を大幅に減らすことは不可能といえる。

◆アクティブ・セーフティテクノロジーの進化の歴史


車両搭乗者のためのパッシブ(受動的)な保護の目覚ましい進歩に続き、現在の注目はアクティブ(能動的)セーフティテクノロジーに移行しつつある。エンジニアたちはまず、1960年代の「スマート」なブレーキシステムを研究し、パニックブレーキによっていとも簡単に作動してしまうホイールロックを回避する研究に取り組んだ。しかしながら、初代のアナログ制御システムは、リアルタイムのハンドル操作には遅すぎ、同時にデジタル制御システムは、車両価格を途方もなく釣り上げてしまった。さらに、危険に直面したドライバーの多くが恐怖に凍りついてしまい、とっさの判断ができずにブレーキを踏み損ねたり、全くブレーキを踏まない、という深刻な問題も生じた。このような場合、いくら最高性能のABSがあってもあまり助けにはならない。

同様に、多くのドライバーは高速のステアリング操縦に対処できない。そのための解決策の一つが横滑り防止装置(Electronic Stability Control: ESC)だ。このシステムはABSと同様、車輪ごとに独立してブレーキをかけ、車両を安定させる。1995年までに、ESC装備車では、いかなるドライバーより素早い反応が可能になった。インテリジェントシステムによって、車は、誤りを犯しがちなドライバーへの依存から脱却しはじめたのである。

◆ドライバーに依存しないアシストシステムがさらに事故を低減する


最新の支援(すなわちドライバーアシスト)システムは、カメラやインテリジェントアルゴリズム基づき、車両搭乗者や周辺に存在する人や車両のためのオールラウンドな保護を提供することを意図している。比較的安価なレンズをフロントガラスの内側に取り付けることで、移動物体を認識・識別できるようになった。小さなレンズが車の前方最大130ヤードの範囲を撮影し、高性能マイクロチップは道路標識や道路標示、障害物の画像ストリームをスキャンする。車がサイドラインに寄りすぎると、車線維持システム(Lane Keeping Assist system)がステアリングを滑らかに微調整し、車が車線中央に戻るようアシストするのだ。またカメラのデータストリームは夜間も便利だ。システムを有効にすると、適切なタイミングで他の車両を認識し、先を見越してハイビームヘッドライトを対向車から逸らすことも可能になる。

こうした最新のドライバーアシストシステムは、ミリ秒単位で自動ブレーキの操作を行うことができる。優秀なドライバーが素早く反応してもここまで速くはできない。注意深いドライバーでも、行動に1秒以上を要し、実際の制動にはもっと多くの時間がかかる。アリアンツ社のテクノロジーセンターは、自動車事故の10件に1件はドライバーの注意散漫が主な原因であると分析している。最近の調査結果によると、ドライバーの40%がハンズフリーシステムなしにに電話を使用しており、ドライバーの5人に1人が運転しながらメールのやり取りをしていた。同センター長クリストフ・ラウターヴァッサー(Christoph Lauterwasser)博士は「すべての事故原因の三分の一近くは、不注意にある」と語る。対照的に、継続的に車両周辺の現在の様子を監視しているドライバーアシストの場合、パッシブセーフティシステムよりもはるかに有効に歩行者を守ってくれるということは容易に理解できるだろう。

◆ZFが提供する“ビジョン・ゼロ”実現のためのテクノロジー


ZFは、高性能のセンサーやコントローラー、メカトロニックアクチュエーターから成るフルシステムを提供することができる。つまり、安全性の強化や自動運転の実現に必要な技術すべての開発を行っている。ビジョン・ゼロ達成のためのテクノロジーとはいかなるものか。ZFのコンセプト「See」(見る)「Think」(考える)「Act」(動かす)の機能別に紹介する。

【見る(SEE)】

1:レーダーシステム
新しいAC1000 EVOレーダー・ファミリーは、最大250メートル(270ヤード以上)の検知範囲、広い視野とこれまでより高い画像解像能力を備え、環境検知に高い信頼性がある。車の前後4隅に取り付けられたレーダーシステムは、自動運転機能に必要な360°全方向の検知能力を備えている。

2:TRI-CAMマルチレンズカメラ
シングルレンズカメラに加えて、改良型の長距離検知用望遠レンズと近接物体認識用の魚眼レンズをTri-Camに搭載。高速道路アシストや渋滞アシストなどの自動運転機能に最適な仕様だ。長くなった物体認識距離と広がった視野は、ドライバーアシストシステムに関する、今まで以上に厳しい規制要件を満たしている。

3:S-CAM4 モノカメラ
予測カメラシステムのS-Cam4ファミリーは、前世代の製品よりも視野が広がった。交差点を渡る自転車や交通弱者に対応する自動緊急ブレーキのための新たなユーロNCAPテストなど、将来の市場要件を念頭に最適化が図られている。

【考える(THINK)】

4:セーフティドメインECU(electronic control units)(SDE)
センサーが取得したデータを処理するSDE中央電子制御ユニット。このシステムにより、安全のための適切な意思決定を行うことが可能だ。車をコントロールし、安全に通過できるよう誘導するアクチュエーターを直接管理している。

【動かす(ACT)】

5:アクティブ・キネマティクス・コントロール(後輪アクティブ操舵)
後輪を左右に動かすZF独自の「アクティブ・キネマティクス・コントロール(AKC)」により、車の操舵性がさらに向上した。このシステムは、速度域に応じて安全性の改善や進路変更時の快適性と俊敏性を提供している。さらに、車線変更や回避運転時の安定性も高める。

6:電動パワーステアリングシステム
パワー・オン・デマンドで作動する電気機械式パワーステアリングは、燃料節約の為だけでなく、安全機能としても作動するようになっている。カメラシステムなどのセンサーと組み合わせることで、危険な状況において車を車線に安定させるよう、ステアリングを自動的に微調整可能だ。

7:統合ブレーキ制御システム
ZFの統合ブレーキ制御(IBC)システムは、エレクトロニクス、ブレーキ作動、横滑り防止装置(ESC)を組み合わせ、ひとつのパッケージになっている。卓越した高速制動性能は、自動緊急ブレーキアシストや、自動運転機能などのアクティブセーフティシステムを支えている。IBCはまた、回生ブレーキやブレーキエネルギーの最適な回収をもサポートしている。

◆ビジョン・ゼロを達成するために


私たちはまだ、無事故運転の真実の物語を書き始めたばかりだ。だが、最終的な目的地はすでに見えている。未来では、スマートシステムが稼働して利用可能なすべてのオプションが車両を制御・管理することになるだろうし、環境認識とステアリング制御のおかげでオートパイロットの技術はますます向上しドライバーにとって代わることだろう。こうした一連の最新技術は、車と自転車、歩行者からなるあらゆるトラフィックに利益をもたらす。2014年、国連は2020年までに全世界の交通事故犠牲者の数を半減させるという目標を掲げた。これは、過去のいかなる目標よりも困難なものだが、電子技術が副操縦士となって支援すれば必ずこの困難な目標を達成することができるはずだ。

本稿はZFの発行する「drive」に掲載された記事を和訳・再編集したものです。
原文:https://www.zf.com/corporate/media/zf_media_import/document/corporate_2/downloads_1/customer_magazines/drive/2016_4/ZF_drive-2016-01-EN.pdf (P.10~11)

ZFの「drive」はこちらから

《レスポンス編集部》

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