【BMW 5シリーズ 試乗】Eセグメントのベンチマークが変わる予感…諸星陽一

試乗記 輸入車
BMW 540i Mスポーツ
BMW 540i Mスポーツ 全 7 枚 拡大写真

7代目となった新型BMW『5シリーズ』は、目を見張る進化を遂げたモデルであった。

新型5シリーズはBMWらしくスタイリングの変化は大きくない。グリルはおなじみのキドニーグリルであり、その両端に横長のヘッドライトが取り付けられる。BMWらしい顔つきはすでに完成型となっているのかもしれない。

走り出してまずびっくりするのが、ガシッとしたステアリングのすわりのよさ。このところ、欧州ブランドも日本ブランドもステアリングのすわりを向上するのがトレンドのようになっているが、そのなかでも新型5シリーズのそれはずば抜けている。しかも電動パワステのセッティングで作ったすわり感ではなく、シャシーそのものから生まれている様子が伝わってくる。

ステアリングのすわりがよく、さらに直進安定性もいい。単純にステアリング中立付近の剛性をアップしただけではなく、サスペションそのものがしっかりと仕事をしているのでこの特性が表に出てくる。高速道路を走っていると基本的に修正舵は必要としない。ガシッと決まった中立感のあるステアリングは、恐ろしいほどに真っ直ぐ走る直進安定性を伴っている。

さらに静粛性の高さも特筆ものだ。今まで感じたことのないような静かな空間がそこにはあった。空気抵抗(cd)値は0.22という非常に低い数値を実現、これは風切り音なども低いことを意味する。サスペションから入ってくる音も、風切り音も異次元レベルで低減。ロールス・ロイスは自分の存在までを消すような静けさだが、5シリーズは自分の存在も主張する静けさ。アクセルのオンオフ、ステアリングの操作…ドライバーの操作に対しては適度な主張がある。

搭載されるエンジンは3リットル直列6気筒ユニットで、最高出力は340馬力、最大トルクは450Nmを発生する。組み合わされるトランスミッションは8速のAT。Mスポーツは専用のパドルスイッチ付きステアリングを装備し、手元操作でシフトチェンジが可能だ。アクセル操作に対して敏感に反応するエンジンはフリクションのかけらも感じられない。BMWのシルキーシックスは今も健在だ。

試乗車の「540i Mスポーツ」標準状態では986万円。これにリヤ・エンターテイメント・システム(31万円)、ナイトビジョン(30万6000円)バウワース&ウイルキンスのダイヤモンド・サラウンド・サウンドシステム(56万円)、BMWインディビディアル・リーディング・ライト(5万4000円)、メタリックペイント(9万円)のオプションが装備され、1100万円をオーバー。

これだけコストを支払えば、高性能を手に入れられて当たり前でなければならないが、世の中にはそうでないクルマも多い。実際、現在のところ5シリーズはEセグメントの最先端に位置する。今後Eセグメントのベンチマークはこの5シリーズになること必至と言っていいだろう。

※配点の★印でオススメ度が4つなのは、絶対的な価格を考慮したもの。比較論で★印をつければ5つ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 狭い道! 制限1.9mだが何かがおかしい…東京都小金井市
  2. 4億円オーバーのV12エンジン搭載「完全アナログ」なハイパーカー登場!
  3. ポルシェ、新型『911カップ』発表…520馬力にパワーアップ
  4. ポルシェ『911スピードスター』が劇的な復活? 992.2世代に最後の打ち上げ花火!
  5. かつてのマーチ、新型日産『マイクラ』英国発売に、SNSでは「英国は小型車の価値を知ってる」「日本でも売りゃいい」の声
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る