インテルが自動運転に本気で参入する理由

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インテルが5月に開催した「オートノーマス・ドライビング・ワークショップ」にて
インテルが5月に開催した「オートノーマス・ドライビング・ワークショップ」にて 全 3 枚 拡大写真

IT産業の関心が高まる、自動車ビックデータビジネス


なぜ、このタイミングで、インテルが自動運転に参入するのか?そこには、自動車産業界の大変革期という社会背景がある。

次世代の自動車においてキーファクターとなるのは、EV(エレクトリック・ヴィークル)、CV(コネクテッド・ヴィークル)、そしてAV(オートメイテッド/オートノーマス・ヴィークル)の3つの技術領域であり、これらを結びつけるのがビックデータだ。

自動車の走行履歴、エンジンやトランスミッションなど自動車の状態、そして運転者や同乗者の各種の個人情報など、車を媒介して得られる膨大なデータである。自動車産業界にとって全く新しい領域であると同時に、IT産業にとっては自らの産業領域に属する”宝の山”なのだ。PC(パーソナル・コンピュータ)等の民生品に採用されている半導体で高いシェアを誇るインテルにとって、こうした時代変化をビジネスチャンスとして捉えるのは当然だ。

では、インテルは具体的に、どのような手段で自動車のビックデータをビジネス化しようとしているのか。今年5月、インテルの本拠地である米カリフォルニア州サンノゼ市で開催された、『オートノーマス・ドライビング・ワークショップ(自動運転ワークショップ)』でインテル関係者に直接、質問をぶつけてみた。

BMW、モービルアイと連携


新設された、インテルの『オートノーマス・ドライビング・ガレージ・シリコンバレー』には各種の開発車両が並んだ。

なかでも注目されるのが、車両側面に「BMW パーソナル・コパイロット」とロゴ表示があるBMW『7シリーズ』をベースとした開発車両だ。同車両を詳しく見ると、ルームミラーの近くに、三眼レンズのカメラがある。BMW USAのエンジニアの説明では、これは単眼レンズを三連奏したもので、それぞれのカメラが近距離、中距離長距離の画像を認識し、走行中の制御が運転者ではなく自動車のシステム側が主体となるレベル4自動運転を実現するものだ。

最高速度が時速75マイル(120km/h)のアメリカのフリーウエイはもとより、ドイツのアウトバーンで200km/h程度で走行することも想定しているという。今回見た物と同様の車両が現在、欧州の他、中国の検索サービスと地図情報サービスの大手である百度(バイドゥ)との共同開発用として実走している。BMWとしては2021年までに「BMW iNext」として量産する意向を示している。

こうした画像認識技術は、インテルが今年1月に買収交渉を始めた、イスラエルのモービルアイの技術を採用している。モービルアイはGM、ボルボ、日産、マツダ向けなどに単眼カメラによる自動運転技術を量産化するための半導体の設計を行い、生産を第三者に委託するファブレスメーカーだ。

インテルはBMW及びモービルアイと連携し、自動運転向けにハードウエアのソフトウエアにおける”プラットフォーム”を開発し、これをBMW以外の自動車メーカーに販売するという事業戦略を打ち出している。

『インテルGO』というエコシステム


プラットフォームを具現化したのは、インテルGOだ。

まず、ハードウエアについては、画像認識で重要となる演算処理の高速化と、それに伴う消費電力の省エネ化に対して、インテルのお家芸であるCPUや、2016年に買収したアルテラによる再構成が可能な集積回路のFPGA、さらには前述のモービルアイの開発技術を総動員することで対応する。半導体業界において現在、自動運転に関する演算装置のリソースはインテルが最も豊富である。

カメラのみならず、レーザーレーダー(通称ライダー)やGPSなどの車両の周辺情報量が1日1台あたり4テラバイト。これに加えて、エンジン、トランストランスミッション、サスペンションなどを制御するCPUからの情報をCAN(コントローラー・エリア・ネットワーク)からの情報などを、次世代通信技術である5Gによってインテルのデータセンターに送られ、ディープラーニングなどの人工知能技術によってデータが解析される。

また、自動運転に関するソフトウエアでは、SDK(ソフトウエア・デベロップメント・キット)がすでに完成している。実際に、同SDKの操作をしてみたが、UI(ユーザー・インターフェイス)が優れており、コード作成画面と画像や動画との入れ替えなどが分かりやすかった。

インテルは、こうしたビックデータのインプットからアウトプットまでを総括的にマネージメントするエコシステム、インテルGOの普及に全力を注ぐ。

第二の「ムーアの法則」は本当に起こるか?


今回、オートノーマス・ドライビング・ワークショップにおいて、インテル関係者が何度も強調したのが、ムーアの法則だ。インテル創業メンバーのひとり、ゴードン・ムーア氏が唱えた、半導体の需要が将来、比較的に伸びると予想した理論である。

PC(パーソナルコンピュータ)の世界で起こった、ムーアの法則が、自動車産業界でも確実に起こる。そのきっかけとなるのが、人工知能を活用しビックデータに関するエコシステムだと、インテル関係者は言い切る。

1800年代後半、自動車がこの世に誕生してから長年に渡り、その進化とは内燃機関の高精度化、また車体やサスペンションの改良での乗り心地や操作性の向上が主体だった。これは、オートモービルの進化である。いつでも、どこへでも、自らの意思で気軽に出かけることができる乗り物を目指して、オートモービルの開発が続いてきた。

オートモービルとは、「オート(自らが)」が、「モービル(自由に動きまわること)」を示す。これを日本語訳したのが、自動車だ。

一方、自動運転とは、「オートノーマス/オートメイテッド(自らが関与せず)」、「ドライビング(走行する)」である。ドライビングといっても、その実態はオペレーションコントロールである。

つまり、自動車と自動運転とは、相反するモノであり、自動運転の自動車という表現は正しくない。

こうした、そもそも論で考えてみても明らかなように、自動運転が本格化する近未来において、オートモービルからモビリティへのビジネス構造が変化するなかで、新しいステークホルダーが次々と出現することは明確だ。

そうした厳しい競争に、インテルは参戦の狼煙を上げた。「モービルアイの買収は2017年末頃に完了する予定」(インテル幹部)であり、今年後半から来年以降、インテルの自動運転プロジェクトが飛躍する可能性が高い。

インテルについて
https://www.intel.co.jp

《桃田健史》

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