「Suicaとはここが違う」単なる決済手段ではないWeChatPayの強さ…ネットスターズ 大竹口隆 執行役員【インタビュー】

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株式会社ネットスターズ 執行役員の大竹口隆氏
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いまや中国人の社会インフラともいわれるWeChatPay。アクティブユーザーは8億人にも達するという。なぜWeChatPayがこれだけ支持されているのか、中国人は実際にどのように利用しているのか。テンセント社の日本展開をサポートする株式会社ネットスターズ 執行役員の大竹口隆氏に聞いた。

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WeChatPayが広まった背景


---:あらためて、中国でこれだけWeChatPayが広まった背景について、どのようにお考えですか。

大竹口隆氏(以下敬称略):かつては中国では現金のやり取りはリスクがありました。例えば銀行のATMから偽札が出てきたり、タクシーの運転手にお金を払おうとしたら、お金がおかしいというようなことを言って突き返された時にはもうすでに(偽札に)すり替えられていたり。

またクレジットカードもあまり普及していない状態でしたし、スキミングの不安感もあって、潜在的にセキュリティの高い決済方法の需要がありました。そういった状況にあるなかで、チャットアプリの「WeChat」が、お客さんを集めるためのマーケティング機能とともに、決済機能を載せてきたんですね。

例えば、お店のミニホームページを作って店舗の情報を載せたり、お店の人とチャットして、値切りやまとめ買いの交渉をしたり、もちろんポイント機能など、そういったお客様を集める機能があります。それから最近ですとタクシーを呼ぶ機能やシェアバイクの機能が組み込まれています。

そもそもテンセントの発想が、社会インフラというか、ライフスタイルの中のすべての活動に関わろうという発想ですので、決済機能が付いてきたのはその流れということです。

株式会社ネットスターズ 執行役員の大竹口隆氏

---:クレジットカードを飛び越して、モバイルペイメントになってしまったんでしょうか。

大竹口:そうですね。今はだんだん所得も上がってきて、クレジットカードを持っている人も多いでしょうけど、ただ、カードを使う機会はほとんど無くなってしまって、今はQR決済になりつつあります。

銀聯カードですら、カード情報をアプリの中に仕込んで、QRコードで決済していますから、いわゆる物理的なプラスチックのカードはもう使わなくなっていますね。

---:中国の方は実際に、日常の中でWeChatやアリペイをどのように使っているのですか。

大竹口:例えば食事に行くなら、レストランのクーポンやキャンペーン情報をWeChatで取って、そのまま予約をしたり、クーポンを友だちに転送もできます。そして支払いをWeChatやアリペイで済ませます。

それからいまは中国も割り勘の時代なので、アプリに1人当たりの金額を計算する機能がついていて、払った人がその情報をQRコードに表示すると、残りの人が読み取ります。そうすると簡単に個人間送金ができます。

あるいはファーストフード店だと、各テーブルにQRコードが貼ってあって、それを読み取るとスマートフォンにメニューが表示されます。そのままでオーダーすると、オーダー情報がお店のWeChatに飛んでいき、まもなく料理が運ばれてきます。決済も終わっていますので、食べたらもう店を出ていってOK、ということになります。

---:なるほど。単なる決済手段ではなく、WeChatPayによって新しいユーザー体験が実現していますね。

大竹口:あと、WeChatが大きく拡るきっかけになった“ホンバオ”ですね。紅の包みと書くんですが、お年玉のことです。旧正月にみんなおめでとうと言って、紅包、お金ですね、それをWeChat上でやり取りするんです。ですから実家に帰らなくても、おじいちゃん、おばあちゃんからお年玉がもらえるというような、そんな機能です。

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WeChatPayとアリペイ、銀聯の違い


---:WeChatPayには、銀行口座の情報を登録するのですか?

大竹口:その通りです。そういう意味ではクレジットではなくデビット方式になります。

---:高額な商品もWeChatPayで払うのですか?

大竹口:高額商品はWeChatはそんなに得意ではありません。一日の限度額があり、人によって違いますがだいたい20万円くらいです。高額なものはどちらかというとアリペイを使う傾向があります。

---:アリペイもQRで決済する方式ですよね。

大竹口:そうです。もともとアリペイはECサイトの決済ツールとして始まったので、ある程度高額な支払いもある想定なのです。WeChatはチャットアプリなので、日常で街中を歩いていて、バスに乗ったり、屋台で食事したり、そういった少額のものをちょこちょこ決済するという使い方です。

ただそれほど厳密な使い分けではなく、アリペイのクーポンのほうがよければそっちを使ったりします。

---:SNSでクーポンを配信したり、個人間決済などの機能はアリペイにはないのですか?

大竹口:アリペイもクーポン配信はかなり充実しているのですが、WeChatのほうがクーポン以外にも付加機能は充実していますし、日常的に使うアプリなので、すぐに呼び出せるという面で使われる率が高いと感じます。

株式会社ネットスターズ 執行役員の大竹口隆氏

Suicaとは決定的に違う点


---:日本人からすると、Suicaに慣れているので、QRコードは少し煩雑な感じですよね。

大竹口:そうですね。アプリを開いてメニューを呼び出すという手間があります。非接触型の仕組みが浸透している先進国の方がQR決済はなかなか普及しにくいですね。

---:非接触型のほうは読み取り側の端末が高いんですよね?

大竹口:それもありますね。QRコードであれば、最低限、お店の口座のQRコードを掲示しておけば、金額を手入力して都度決済できますし、読み取り端末を買うとしても、レシート印刷用のミニプリンター付きで3万円少しですから、導入のハードルが低いのは間違いありません。

---:WeChatPayがこれだけ拡まった理由は、そういったハードルの低さと、新しいユーザー体験がありそうですね。そこはNFCと全然違うところです。

大竹口:そうですね。お店側にとっても、WeChatでフォロアーを増やして、直接マーケティングできるのは大きなメリットです。ECサイトにはモノがあふれ過ぎている状況ですので。

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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