オートノーマスもシェアも、コネクテッドありき…矢野経済研究所 古舘渉氏【インタビュー】

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矢野経済研究所 主任研究員 古舘渉氏
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世界中で「CASE」(Connected-Autonomous-Shared-Electric)に向かう動きが加速している。2030年の時点で、自動車産業はどのように変化しているのか。中国での駐在経験がある矢野経済研究所の主任研究員、古舘渉氏に中国の自動車市場の変化について聞いた。

CASEに向けて加速する自動車産業はどのように変化していくのか。5人のリサーチャーがその知見を語ります。詳しくはこちら。

内陸と沿岸部の格差は縮まっている


---:つい先日も視察に行かれたそうですね。

古舘氏:はい。貴州省に行ってきました。貴州省は中国国内でも一番遅れている地域だと言われているところだったのですが、昨年、上海や北京と同じように、緑ナンバーが導入されました。

※緑ナンバーとは、新エネルギー車(EV/PHV/FCV)のうち一定の基準を満たす車種に交付されるナンバー。ガソリン車の青ナンバーに比べて取得が容易なほか、補助金が交付されること、都心部への流入規制が免除されることなど優遇措置が与えられる。

---:緑ナンバーは大都市圏ならではの制度と思っていました。

古舘氏:そうなんです。上海や北京はご存知の通り、テスラをはじめとした高級車がたくさん走っていますが、それは中国国内でも特殊な地域だからだと考えていました。

しかし貴州省にも緑ナンバーが導入されたとのことで見に行ってみたのです。実際に行ってみたら、思ったほど上海と差がないことに驚きました。テスラの『モデル X』も見かけました。

---:意外ですね。内陸部は発展が遅れているというイメージです。

古舘氏:貴州省を見に行って感じたのは、上海や北京、広州-深センといった地域だけが特別なのではなく、中国にはあちらこちらに同じクラスの大都市があって、それぞれが発展して同じような状況になってきているということです。

重慶も昔から直轄市でしたが、これまであまり発展しませんでした。内陸部で山がちの地域で、インフラも整いにくいという状況だったのですが、今は山にトンネルを通して、急ピッチでインフラを整備し、先に発展した沿岸部との格差が埋まりつつあるという実感があります。

そういった状況で、貴州でも緑ナンバーが導入されたわけで、今後こういった地域でもEVの売れ行きが伸びていく可能性があるということです。


CASEに向けて加速する自動車産業はどのように変化していくのか。5人のリサーチャーがその知見を語ります。詳しくはこちら。

中国におけるCASE

---:中国の自動車産業の動向はいかがでしょうか。

古舘氏:まず、新興の自動車メーカーが次々に登場しているという状況が、そもそも世界的にも珍しく、特異な市場であることは間違いありません。

そういった新興の自動車メーカーは、考え方もこれまでのメーカーとは違っていて、例えばBYTONは、車両に初めからLIDARを搭載して販売し、OTA(On The Air update =遠隔アップデート)でレベル4の機能を販売後にアンロックするというようなマーケティングをしています。

※BYTONは、中国の数ある新興EVベンチャーのうちの一社で、これまでコンセプトカー2車種(SUVとセダン)を発表している。中国古参メーカーの第一汽車と提携し、南京に自社工場を建設していることを先日発表した。発売は2019年中とみられる。

---:CASEへの取り組みについてはいかがでしょうか。

古舘氏:オートノーマス(自動運転)もシェアも、コネクテッドありきという捉え方をされているので、それぞれ別に進めるという考え方はありません。

そういう意味で、中国市場ではコネクテッドカーに向けた非常に強い勢いがあります。ファーウェイやチャイナモバイルという大手通信会社も5Gをどんどん広げていこう、と動いており、その動きを政府も後押ししています。

そして自動車をコネクテッドにして、大きなデータセンターにデータを蓄積して、AIでどんどん分析して、付加価値を積み上げていこうとする大きな流れを感じます。

中国という巨大なガラパゴス

---:中国国内には、世界を席捲しているGAFA(Google-Apple-Facebook-Amazon)もあまり参入できていないので、ITサービスの面でも特殊な市場ですね。

古舘氏:ガラパゴスといっても巨大なガラパゴスで、そこには巨大な生態系ができあがっています。クルマで使うコネクテッドサービスも、CarPlayやAndroid Autoではなく、百度(バイドゥ)のCarLifeです。

百度CarLife を使ってテンセントの QQ ミュージックを聴いたり、百度マップでナビをしたり、といったように、独自のエコシステムが成り立ってしまっている市場ですね。


CASEに向けて加速する自動車産業はどのように変化していくのか。5人のリサーチャーがその知見を語ります。詳しくはこちら。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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