AUTOSARとCPSの連携はこれから…矢野経済研究所 大沼雅義氏【インタビュー】

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AUTOSARとCPSの連携はこれから…矢野経済研究所 大沼雅義氏【インタビュー】
AUTOSARとCPSの連携はこれから…矢野経済研究所 大沼雅義氏【インタビュー】 全 1 枚 拡大写真

世界中で「CASE」(Connected-Autonomous-Shared-Electric)に向かう動きが加速している。2030年の時点で、自動車産業はどのように変化しているのか。車載組込みシステムとCPSの動向について、矢野経済研究所の大沼雅義氏に聞いた。

CASEに向けて加速する自動車産業はどのように変化していくのか。5人のリサーチャーが知見を語ります。詳しくはこちら。

CPSとは何か


---:コネクテッドカーの開発において、CPS(Cyber Physical System)が注目されています。

大沼氏:CPS とはもともとドイツが提唱している「Industry 4.0」のなかで取り上げられた規格で、クローズドのシステムである組み込みシステム、つまりフィジカルなシステムが、サイバー空間であるインターネットと連携するシステムという意味です。

日本においては、政府が提唱する「Society 5.0(ソサエティ5.0)」の中でCPSが言及されました。Society5.0とは、日本のものづくりの力を、IoT技術を活用して、オープンな仕組みでインターネットと組み合わせて実現するスマートな社会という意味です。そのなかでCPSのコンセプトを活用するということです。

---:CPSによってどのようなベネフィットが生まれるのでしょうか。

大沼氏:自動車でいうと、テスラはOTA(On The Air update=無線通信によるバージョンアップ)で自社の車両に対し自動運転の機能のバージョンアップを実施しました。つまり、OTA自体は現時点でも技術的に可能なことだと言えます。

ところが例えば信号機にIoT機器が搭載され、コネクテッドカーが信号の赤青黄の情報を受け取れる仕組みが用意されたとします。そういった場合、テスラの車両がその情報を受け取るためには、車両側にそのデータを受け取り、理解するためのシステムを用意しなければいけないということになります。

さらに例を挙げると、現在のACC(Adaptive Cruise Control=前車追従型の自動速度調整機能)は車両に閉じたクローズドな仕組みで動作していますが、今後、インフラ側からカーブの曲率や信号の情報が配信されるようになったとき、データを受け取るためには車載システムの大規模な改変が必要になります。

自動車においては、このようにV2I(Vehicle to Infra)が今後進化していくごとに、自動車側の組込みシステムを改変していくのは現実的ではありません。ですので、Webの世界におけるAPIのように共通の仕組みを取り入れようというのがCPSのコンセプトです。

CASEに向けて加速する自動車産業はどのように変化していくのか。5人のリサーチャーが知見を語ります。詳しくはこちら。

AUTOSARとの関係


---:車両側のシステムも今後はネットにつながるオープンな仕組みにしていくということですか。

大沼氏:車両側のシステムすべてをオープンにするという意味ではありません。クルマというものの特性上、(車両の動きを司る)制御系は守らなければなりません。

---:つまり、クルマはこれまで組み込みで作られた閉じた世界だったのが、今後はインフラとの協調などもあるので、制御系は守りながらも外部と協調する部分も必要だということですか。

大沼氏:はい。欧州発の「AUTOSAR」(車両向けソフトウェアの標準化規格及び団体)では、制御系の安心安全を担保した上で 、CPS の考え方を取り入れていこうとしています。

---:AUTOSARは協調領域の標準化を進めているということですか。

大沼氏:そうです。協調領域として話し合いが進められています。そういった共通の規格の中で、例えばインフラ連携の部分は同じ仕組みを使い、そして受け取ったデータをどうやって活用するかという部分で競争をしているというイメージです。

---:CPSとAUTOSARの連携は進んでいるのでしょうか。

大沼氏:いえ、両者の連携はまだこれからといった状況です。自動車メーカーやTier1サプライヤーもCPSに対しては今後の取り組みになるでしょうね。

CASEに向けて加速する自動車産業はどのように変化していくのか。5人のリサーチャーが知見を語ります。詳しくはこちら。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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