自動運転のシーズとニーズに乖離がある!?…歴史と実用化への方向性を提言する書籍

『自動運転の技術開発』
『自動運転の技術開発』全 1 枚

『自動運転の技術開発』
その歴史と実用化への方向性
著者:古川修
発行:グランプリ出版
定価:本体価格2000円(消費税除き)
ISBN978-4-87687-368-5

自動運転に向けて様々な技術が開発されている。本書はその歴史や研究開発に関してのエピソード、国際社会での法整備などのインフラ、そして将来に向けた提言が記された自動運転の解説書である。

著者である古川修氏は芝浦工業大学名誉教授博士(工学)であるが、それ以前はホンダにおいて自動運転車の研究開発プロジェクトの10年にわたって責任者を務めていた人物である。その時の結論は「自動運転の実用化は大変困難であり、100年間は実現しないだろう」という技術知見であり、それは2002年にホンダを退職して大学教授に就任してからも変わらなかったという。

しかし、2000年代に米国DARPA主催の自動運転競技会が開催されたのをきっかけに、一気に自動運転の技術開発に拍車がかかり、自動運転の実用化への機運も高まった。同時に、AIの飛躍的な発展もこれを後押しした。

著者はこの状況を“シーズ”としての自動運転技術発展と社会制度の情勢という社会利益へ大きく貢献と評価。その一方で「自動運転の実用化によって人々の生活がどれだけ幸せになるか」というニーズからは少々ずれを感じるともいう。実用化ロードマップは自動運転のシーズありきの計画であり、社会的なニーズを満足させるための詳細な検討が後回しにされているというのだ。

著者はあくまでも自動運転に技術開発体制そのものは大いに評価。そのうえでこういった問題を本書において提起している。

本書を読むことによって、自動運転に関する情報を一度冷静に見直す良い機会になると思われ、開発技術者はもちろん、自動運転に興味のある一般の方にもおすすめだ。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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