北米最高峰フォーミュラレースで佐藤琢磨が駆るインディカー ホンダ『RLL』、SUPER GTシリーズ GT500クラスで疾駆する『KEIHIN NSX-GT』、国内で最高峰のロードレースである全日本ロードレース選手権(通称:MFJ SUPERBIKE)には『Keihin Honda Dream SI Racing』で参戦。
これらに共通するのは、東京・新宿に本社をおくホンダ系総合システムメーカー、「ケーヒン」のロゴをまとって闘う姿だ。
インディカー・シリーズ 、SUPER GTシリーズ GT500クラス、全日本ロードレース選手権、2輪/4輪両方のモータースポーツに参戦
1956年に設立した京浜精機製作所をルーツにもつケーヒンは、1957年に自動二輪車用キャブレターがホンダ『ドリーム』や富士重工業『ラビット』に採用されたのを皮切りに、CVCCエンジン用キャブレター(1974年)、四輪車用インジェクター・電子制御ユニット(1982年)などを手がけ、1997年に京浜精機・ハドシス・電子技研が合併し、「ケーヒン」に社名を変更して現在に至る。
いまや国内に11の事業所を構えるほか、アメリカ、欧州、中国、アジアなど世界14の国に拠点をかかえるグローバル企業へと成長したケーヒンは、従業員数はグローバルで2万人を超える。売上構成では、四輪車用製品が66%、残る34%が二輪車・汎用製品で占める。
そんなケーヒンが、コロナショックを経てニューノーマルの時代に新しい手を打って出た。WEBで自社製品を展示紹介する「バーチャルエキシビション」だ。そこで、公開されたばかりのバーチャルエキシビションの見どころや、オンラインならではの視点などを探ってみる。
このバーチャルエキシビションでホットなのが、新製品プレゼンとして映像で技術を紹介するパワーコントロールユニット、ゲートウェイユニット、バッテリーマネジメントシステムの3製品だ。それぞれが1分台から3分台というコンパクトな尺でまとめられているから、通勤電車のなかでも、ランチタイムのひと休みにも、“動く資料”として気軽にチェックできる。
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小型化技術と機能集約で抜き出ているケーヒンのパワーコントロールユニット
ハイブリッド車や電気自動車に搭載されるパワーコントロールユニットは、発進・加速・減速時に発電用モーターと走行用モーターをコントロール。発進時のモーター駆動制御、減速時の回生制御、バッテリー充電時の発電制御、システム電圧を可変するボルテージコントロールユニット(VCU)制御、DC-DCコンバーターで車載電気機器用電源に変圧する…といった役目を担うユニット。
ケーヒンのDC-DCコンバーター内蔵 新型パワーコントロールユニットは、従来製品の特長に加え、小型化と低コストを両立させた2モーターハイブリッドシステムに対応する点が特長。さらにモーター制御電子ユニット(ECU)とゲートドライブ(GD)基板の一体化、電流センサーや常時放電抵抗のインテリジェントパワーモジュール(IPM)への集約などで、小型化・低コスト化を実現させている。
こうした機能集約や小型化、効率向上の進化を、各パーツに明暗や動きのあるイラストをつけて動画で説明することで、紙やPDFによる平面的な資料よりも直感的につかめるのがいい。
世界最多16チャンネルのCAN通信を採用したケーヒンのゲートウェイユニット
“世界最多”16チャンネルのCAN通信を採用したゲートウェイユニット
クルマのなかに組み込まれている複数の電子機器を効率的に整理するゲートウェイユニット。クルマのなかと外で、通信のハブの役割を果たす大事なユニット。たとえば、緊急時の外部オペレーターとの通信や、ドア・ライトのリモート操作なども、このゲートウェイユニットを介して実行される。
ケーヒンが手がけるゲートウェイユニットは、世界最多16チャンネルのCAN通信で、さまざまな電子機器に接続できる点が特長。また、External信号とInternal信号のすべてに対応し、Internal信号整理機能にAUTOSARを採用した点も新しい。
ボルトを使用しない筐体構造が、小型・軽量化にも貢献している。サイズは縦横86ミリほど、厚さ33ミリほどに収まる。まさに、コネクティッド時代にマッチした、ケーヒン自慢のユニットともいえる。
さまざまな電動車に対応したケーヒンのバッテリーマネジメントシステムは電池のリユースにも貢献
統合型バッテリーマネジメントシステムは、高電圧・高集積のセル電圧監視ICを採用し、IC周辺部品数を削減。従来モデルより小型化を実現
電気自動車やハイブリッド車の走行用バッテリーの残量を高精度に検出し、充放電制御やセルバランス制御、高圧ライン接続制御、冷却制御などバッテリーに関するさまざまな監視・制御を実行する、バッテリーマネジメントシステム。
ケーヒンのバッテリーマネジメントシステムは、セルの電圧を高精度に検出することで、セルごとにばらつきのある電池特性曲線を補正。この補正により、安全性を確保しつつバッテリー使用範囲が拡大され、電気自動車の航続距離を延ばしてくれる。
そのなかでも統合型バッテリーマネジメントシステムは、高電圧・高集積のセル電圧監視ICを採用し、IC周辺部品数を削減。従来モデルよりも小型化を実現した。
電気自動車向けとなる、分散型のバッテリーマネジメントシステム。セル電圧センサー(左)、バッテリーマネジメントユニット(右)から構成される
また、ケーヒンのバッテリーマネジメントシステムには、この統合型に加え、セル数の多い電気自動車向けに分散型がある。この分散型バッテリーマネジメントシステムは、バッテリーマネジメントユニットとセル電圧センサーを別体にした薄型でバッテリーパック内にコンパクトに配置でき、分散型はセル電圧センサーを増やすことで、高電圧化がすすむ電気自動車にも対応できるというメリットがある。
ワイヤレス式バッテリーマネジメントシステムには、2.4GHz無線通信機能を搭載される
もうひとつ。ケーヒンのバッテリーマネジメントシステムには、ワイヤレス式もラインナップ。ワイヤレス式バッテリーマネジメントシステムは、その名のとおり2.4GHz無線通信機能を搭載。電池モジュールと一体化したセル電圧センサーと連携することで、セルごとの電圧をワイヤレスで高精度に計測する。
セルごとにバッテリーの充電量や劣化度のデータがバッテリーマネジメントシステムに保存され、こうした計測データが、確認用アプリ画面でワイヤレスに確認できる。特別な専用端末などが要らず、スマホでチェックできるという点も嬉しい。
バッテリー原料となるコバルトやリチウム資源の枯渇が危惧されているなか、自動車業界はいま、電池の再利用が求められている。このワイヤレス式バッテリーマネジメントシステムであれば、劣化度や使用履歴などをリアルタイムで把握でき、廃棄ロス削減にもつながる。メンテナンス性に加え、リユース性の向上にも寄与すると期待されている。
…ということで、ケーヒンのパワーコントロールユニット・ゲートウェイユニット・バッテリーマネジメントシステムのアドバンテージを紹介してきたが、文字・画像で見るのと、3分前後の動画で直感的に追っていくのでは、また印象が違う。
“ケーヒンの動く資料”は、展示会ブースのプレゼンテーションを想わせるつくり。リアルな展示会・博覧会のブースとは違い、好きな時間・場所で何度でも閲覧できるから、気になる人はサイトにアクセスして、チェックしてみよう!