プジョー e-208 は国内BセグEV市場をリードするか

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プジョー『e-208』は、『208』と共にインポートカーオブザイヤーも受賞(総合得点でもヤリスに次ぐ4位)するほど、国内でも高い評価を得ているEVだ。そのe-208を試乗する機会を得たので、クルマとしての仕上がりやEVとしての性能をレビューしてみたい。

レビューした車両はプジョーe-208 GT Lineだ。ボディタイプは5ドアハッチバック。57kWのモーターを搭載し、バッテリー容量は50kWh。最大出力は100kW/5500rpm(136ps)。最大トルクは260Nm/300~3674rpmとなっている。航続は406kmとなっているが、これはJC08モードの数字でありEVの場合はあまり参考にならない。WLTCで322kmとなり、今回の試乗の電費(4~5kWh/km)ではだいたい250~300kmくらいを見ておけば問題なかった。

試乗距離は、東京近郊の自宅から片道150kmほどの静岡県の薩埵(さった)峠の往復をおよそ400km。

サスペンションのプジョーマジックはEVでも生きている

プジョーe-208試乗。EVとしての実力をチェックプジョーe-208試乗。EVとしての実力をチェック

まずドライブフィールだが、プジョーのネコ足は、EVだからといってスポイルされることはない。ごく平均的な「荒れた」舗装や補修の継ぎ目など非常にうまく吸収してくれる。ただ柔らかいのではなく、サスペンションやダンパーの伸び側がしなやかに反応してくれる。減速Gやギャップの入力は適度に感じるものの、そのあとの応答がマイルドなので、加減速が連続するようなときの前後のピッチングの不快感や違和感が少ない。回生ブレーキとの相性もよい。

e-208は共用プラットフォーム(CMP)を採用し、ガソリンモデルとEVモデルが用意されている。カタログスペックではフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームと同じ仕様だが、リアサスの構造が異なっている。床下バッテリーやマフラーの配管といった違いがあるからだが、車重や重心も異なることから、アームの取り付けなどがパワートレインごとに最適化されている。ICE(内燃機関)とEVの共通プラットフォーム化は今後広がっていくと思われるが、こういうところに手を抜かない設計は重要だ。

焼津側から見る富士山は冠雪がまだない。山頂は雲がかかっていた。焼津側から見る富士山は冠雪がまだない。山頂は雲がかかっていた。

EVの醍醐味はやはりモータートルクの過渡特性だ。e-208はトルクが260Nmとリーフの320Nm(40kWhモデル)より低いもの車重が200kg以上軽いため、重さは感じない。ドライブモードがノーマルとスポーツの2種類の設定があるため、動力性能が欲しければスポーツモードにすればワインディングでも軽快そのものだ。

ブレーキは、定量的な実験をしたわけではないがかなり強め。味付けとしては踏み始めからガツンとくるタイプだ。回生ブレーキも効かせているが、約1500kgという重さを考慮して余裕を持たせたブレーキなのだろう。アクセルオフで停止まで回生を効かせる「ワンペダル」操作は対応していないが、そのためフィーリングは従来車のブレーキに近い。

フル充電で航続距離250km以上はあるフル充電で航続距離250km以上はある

積極的に使っていきたいADAS機能、慣れると快適

オートクルーズや車線維持アシストなどADAS機能もかなりよい。国産乗用車の運転支援システムは、どちらかというハンドル介入は最小限にして、少しでも条件から外れたらアシストを解除するが、e-208は介入幅が広い。車線が途切れても復帰は早い。最初は違和感があるかもしれないが、100kmくらい走り込めば、制御のクセが把握できる。慣れると非常に快適だ。

プジョーe-208試乗。EVとしての実力をチェックプジョーe-208試乗。EVとしての実力をチェック

追従型オートクルーズ、車線維持アシスト、衝突軽減自動ブレーキなどは、もはや必須機能といえる。e-208のADAS機能は一般の渋滞でも積極的に使っていきたい仕上がりだ(ただし信号や歩行者などに十分注意)。ただし、ハンドル介入の動作が若干機械的(段階的なソーイングのような動き)なのと、交差点で白線が切れたとき車線を探すような動きは慣れと好みの問題がでそうだ。

また、e-208に限ったことではないが、追従式クルーズコントロールで設定速度まで加速中、前方の赤信号で停止車両がある場合、なかなか減速動作に入らず肝を冷やすことがある。インジケーターでは停止車両(前方車両)を認識しているので、機械が停止できると判断した距離でブレーキ介入が入るのだろうが、ドライバーの目には、200m先の信号でクルマが止まっているのに加速するのは恐怖だ。

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この制御は、前方車両の認識だけでなく、信号機の色、周辺車線の車両の動きなどのコンテクストを判断する必要がある。車線や前方車両を認識するAIカメラや障害物を検知するだけのミリ波レーダーだけの処理では難しい。テスラのように複数のカメラ画像を統合的に処理できるECUアーキテクチャが必要になる制御領域だ。

1日2~300km移動するなら途中充電は1、2回

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EV利用は、できれば自宅普通充電(200V3kW・6kW)を基本とする使い方が理想だ。またバッテリーは常に100%にしておく必要はなく、急速充電は継ぎ足し充電が基本だ。普通充電と継ぎ足し充電の組み合わせがバッテリーへの負担が少ないからだ。

e-208のバッテリーは395V50kWh。3kWの普通充電で0から満充電まで18時間(6kWなら9時間)。自宅充電で半日以上かかることになるが、0%から充電するシチュエーションはめったにない。3kWの普通充電でも一晩8時間前後充電できれば20数kWh分、走行距離にして150~180kmくらいの充電が可能だ。

プジョーe-208試乗。EVとしての実力をチェックプジョーe-208試乗。EVとしての実力をチェック

急速充電はCHAdeMO(チャデモ)に対応しているため、国内2万か所以上ある充電スタンドのほとんどが利用可能だ。急速充電器は1回の充電時間の目安が30分だが、今回試乗した範囲では、1回の充電で10~20kWh分の電力(走行可能距離では100km前後)を充電することができている。薩埵峠の往復は300kmくらいだ。WLTCでは往復可能な範囲だが、余裕が20kmくらいしかないので、最低でも1回は急速充電が必要だろう。この場合、残量50%を切ったくらいを目安に2回くらいが一般的なEVの使い方だ。

今回は充電70%台からのスタートだったため、往路で1回、復路で2回ほど行っている。コンビニや高速道路など複数タイプの充電器を試す目的と、復路は高速道路を使わず、一般道やワインディングを試す目的もあり、実際には400km近く走行しているからだ。

現行リーフだとちょっとはみ出る自宅駐車スペースにもぴったり収まる現行リーフだとちょっとはみ出る自宅駐車スペースにもぴったり収まる

充実のユーティリティと快適なオートエアコン

インテリアやユーティリティはどうだろうか。表示に奥行がある3Dコックピットは未来感がある。マルチファンクションのセンターメーターは読みやすく、表示切り替えもステアリングのジョグダイヤルで簡単にできる。個人的にはヘッドアップディスプレイも搭載してほしかった。スマホのワイヤレス充電対応に加え、USBポートが運転席、助手席、後席と確保されているのもうれしい。

門もちゃんと閉まる門もちゃんと閉まる

エアコンやベンチレーションの切り替えがトグルスイッチになっている。EVらしくないかもしれないが、ヘタなタッチパネルより運転中の操作性が各段にいい。シートヒーターはないが、手動で温度調整せずにヒーターとエアコンをオートに設定しておけばよい。冬場はエアコンをOFFにしてヒーターだけにすれば電費の節約にもなる。冷え切った早朝でもヒーターがすぐに効いてくれることもEVのメリットだ。

ラゲッジルームはBセグメントとしては十分な容積だといえる。だが、クーペ風ボディのため、後席は若干狭さを感じる。これはスペースが狭いというよりルーフ後方が低くなっているため170cm以上の大人が乗った場合、頭上の圧迫感を感じやすい。運転席のステアリング位置が低く、メーターをステアリングホイール(楕円)の上に見る形になるので、シートポジションが後ろ気味になりがちだ。そのため、ドライバーのポジションによっては運転席側後席は足元も少し狭くなるかもしれない。

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EVならGT Lineよりアリュール

しかし、e-208はコンパクトサイズが強みでもある。取り回しの良さもそうだが、4mそこそこのボディサイズは国内の道路事情にもマッチするし、駐車スペースを選ばない。夫婦での利用、子どもが小さいうちならe-208はオススメだ。走りを楽しみたいなら「GT Line」というスポーティモデルも用意されている。

プジョーe-208試乗。EVとしての実力をチェックプジョーe-208試乗。EVとしての実力をチェック

GT Lineのセミバケットタイプのシートはホールド性もよく捨てがたいのだが、リクライニングがダイヤル式なのだ。EVは、充電中車内で過ごすことがあるのだが、そのときシートを倒して仮眠したりスマホを操作したりすることが多い。シートバックの角度をレバーですぐに調整できるほうがうれしい。カタログスペックでは、内外装やインテリジェントオートヘッドライトなどの違いはあるが、動力性能は同じで走行性能に直接関係ある違いはタイヤサイズくらいだ。

筆者の意見を言わせてもらうなら、EVで買うなら「Allure(アリュール)」のほうを推したい。

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《中尾真二》

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