【マツダ CX-5 & CX-8 改良新型】CX-8のポジションをより明確に…商品主査[インタビュー]

マツダ CX-8
マツダ CX-8全 17 枚

マツダは『CX-5』と『CX-8』の商品改良が行われた。ほぼ毎年何らかの手が加えられるが、今回のこだわりはどういったところだったのか。国内営業担当と、商品主管に話を聞いた。

買い替え需要を見据えて商品力強化

----:今回CX-5とCX-8の商品改良が行われました。国内営業本部として最もやりたかったことは何でしょう。

マツダ国内営業本部ブランド推進部主幹の二宮誠二氏(以下敬称略):我々が現在最も大事にしているのは、いま乗っているお客様にまた次も選んでもらうということです。過去の歴史を振り返ると、割とお客様の乗り換えを無視しているようなことを結構繰り返して来てしまいました。

そこで、第6世代となるいまの商品が出た時に、確実に次も選んでもらえるように、装備などもいま乗っているクルマと同じものにしようとしたら、同じグレードなのに付いていないということは絶対にないようにしたい。また、乗り換える時の価格もいまは安全装備が付いたりして上がっていますので、そういったことを踏まえながらスムーズに乗り換えてもらえるように頑張らなければいけません。そこをいまは一番気を付けて、そして力を入れてやっているところです。

特にCX-8は2017年に出ました。その後、松岡主査も含めてデザイン本部、企画、国内営業本部とで“共創活動”を行っており、我々国内営業本部としては、お客様が次に乗り換える時に、こんな装備がいるということをどんどんこちらから提案、要求を出して、ほぼほぼ考えてもらえました。ですので今回のCX-8の商品改良はものすごく思い入れがあります。

例えばグリルデザインの変更であっても、そのデザインを変更したらそれが一番映えるような色も欲しくなりますし、インテリアも途中でエクスクルーシブモードは入れましたが、さらにもっと良くしたいと我々からも要求を出して、それをしっかり実現してもらいました。細かいところでは、マツダはマフラーとバンパーの隙間が結構広く、お客様からもう少し狭くならないのかとずっといわれていましたので、今回はエクスクルーシブモードだけですがそこも詰めさせてもらいました。マツダ CX-8マツダ CX-8

----:ほかにもお客様からの要望があり、取り入れたものはありますか。

二宮:マツダコネクトの採用もそうです。去年『マツダ3』で採用し(緊急時のエマージェンシーコールや、ロック忘れやハザードランプの消し忘れ等の際のうっかり通知などを、My Mazdaというアプリを通じてクルマとコミュニケーションが可能となった)、販売会社から、これはCX-5とCX-8にはいつ搭載されるのかと聞かれました。その後、お客様からもそういう問い合わせが入るようになっています。

ただし、これは簡単ではなく、電気系のプラットフォームの構造が全く違いますのでそのまま付け替えるわけにはいかず、新たに開発しなければなりませんでした。スペースもかなり大きくなりますが、ここは苦労して実現しています。マツダ CX-8マツダ CX-8

初期にCX-8を購入されたお客様のクルマと今回とでは、去年や一昨年の段階でそれぞれ改良が入っています。静粛性を向上させたり、Gベクタリングコントロールプラスなどを採用していますので、確実にいまの方が変わったという実感があるでしょう。

マツダは毎年、年次改良を行っていますが、これも賛否両論あり、毎年やるのであればいつ買ったらわからないじゃないかともいわれます。乗り換えという意味では、確実にいつ乗り換えてもいま乗っているクルマよりも良くなっていることがわかってもらえますので、そういう意味では、(改良の)効果は出ているのかなとポジティブに考えています。

明るいカラーを入れよう

----:今回、CX-8の上位グレードに採用されたプラチナクォーツメタリックはすごく綺麗な色ですね。マツダ CX-8マツダ CX-8

マツダ商品本部の松岡英樹氏(以下敬称略):これまでは暗い色が多かったので(笑)。明るい色だと白くらいしかありませんでした。

----:カラーミックスとしてはどのような感じだったのですか。

松岡:CX-8は白が一番多く、次にマシングレー、赤の順です。CX-5は赤、マシングレー、白で、これに黒を入れて4色ぐらいがメインのカラーです。

----:今回CX-8で新色のプラチナクォーツメタリックを追加しましたが、どのくらいの割合になると予想していますか。

松岡:赤と同じぐらいになれば良いかなと思っています。

フラッグシップならではの存在感を

----:さて、今回のCX-8の改良では、お客様からの意見を取り入れたということですが、具体的にはどのような意見があったのでしょう。

松岡:CX-8を出した時に、最上級グレードの世界観はディープレッドのナッパレザーと本木を採用し、これが良いといわれていました。しかしクルマを見るとちょっとサイズが大きいと思われた方達がいらして、その場合はCX-5を買おうとするのですが、この世界観はCX-5にはなく、これが欲しいという声がありました。そこでCX-5に同じ世界観を入れたのか2018年に追加したエクスクルーシブモードです。

そうするとCX-5とCX-8が全く同じになってしまったのです。CX-8のお客様は一番高いグレードが欲しいといわれることが多いのですが、中身を見るとCX-5と一緒かと……。見た目もCX-5とはそれほど大きな差はあるわけでもない。そこで一番高いグレードを買っているということをもっとわかりやすくなるような、独自の世界観が欲しいといわれたわけです。

そこで、ぱっと見て上級グレードを買ったんだということがわかるような世界観にしてほしいと、デザインにも願いしました。それで作ってもらったのが新しい外板色や、インテリアの色の雰囲気です。元々マツダでは、白はLパッケージに使っており、その上がディープレッドです。つまり、このディープレッドは一番上のグレードに使う内装色ということで、いつの間にか小さいクルマにまで使い始めて、特別の色ではなくなってしまいました。

そうしたことから、改めて特別な世界観を感じるようにしたいと考え、このボディ色(プラチナクォーツメタリック)に似合うようなインテリアの雰囲気はどういうものかを模索しました。その提案として、デザインから白を最上級のイメージに持って来て、ただし白は嫌われることもあるので、それと同じような特別なわかりやすい色として、いままでのディープレッドよりもちょっと明るめのブラウン系の2つでいこうとなったのです。そこにもっとわかりやすくするために凝ったキルティングも入れました。

こういったことから遠くから見てもちょっと違うということがわかってもらえるでしょう。エクステリアでも、フロントグリルは上のグレード2つに限って変更しています。マツダ CX-8マツダ CX-8マツダ CX-8マツダ CX-8マツダ CX-8マツダ CX-8

----:その変更したグリルもとても上手く作り込んでいて、遠くから見るとメッキの点が入っているようにも見えますね。マツダ CX-8マツダ CX-8

松岡:微妙に段差を設けて光のあたり方や見る角度によって色が違うようになっています。実はこれを最初にやったのは『マツダ6』です。もちろん若干表現は変えてはいます。CX-8の方が、格子が大きめです。

走りにも手を入れて

----:今回は走りについても手が入っているようですね。

松岡:細かいところまでエンジニアのこだわりが入っています。マツダ3で行ったようなe SKYACTIV-Xのように大きな改善ではありませんが、SKYACTIV-Dの場合は元々大トルクがあり、走りの面では高く評価されています。しかし、新しい世代が進化していく中で、現行の世代でも出来るところはないのか。そこでディーゼルの場合は、むしろ大トルクであるがゆえに、アクセルペダルの動きに対してクルマがさっと動いてしまう、また、踏むとガソリンエンジンのように上まで回るのではなく、高回転になればなるほどトルク的には不利になって来ます。そういったところを少しでも改良出来ないかと取り組みました。

----:市場からの声としてもっとパワーやトルク、レスポンスが欲しいといった声があったのですか。

松岡:そうではなく、もっと良くするにはどうしたらいいのかということでの回答です。SKYACTIV-Dの改良型を出したのが2018年で、それから2年経過しました。その間に色々な開発をしている中で、次はここまで出来るようになったというのが見えて来ましたので、それを踏まえての改良です。

具体的には4000回転のトルクの落ち込みを少しでも改善しようと、その部分でのトルクアップを図りました。その結果ピークパワーのポイントは下がりましたが、馬力は10ps向上しています。

また出だしのところもスッと出てしまうので、アクセルペダルもそのトルクに相応しいように踏力がかかる方向で重くしています。ペダルが軽いとどうしても踏み込み過ぎてしまいますのでより勢いよく出てしまう。その後でトルクが出てこないと戻したり踏んだりとギクシャクさせがちになりますので改善しました。これはディーゼルのみでの対応です。

----:SKYACTIV-Gではスポーツモードを改善したそうですね。

マツダ広報本部国内広報部国内商品グループの岡本隆秀氏:変速ポイントの制御はずっとやってきているのですが、スポーツモードで走りたい時は不要なシフトアップなどは避けたいですよね。考え方としてはずっとこの狙いで進めて来ています。今回は実験データやお客様の声などを踏まえて、制御モデルの精度がより上げて、お客様の意図通りのシーン判別が制御で出来るようにして、スポーツモードがより楽しくまた使いやすくなっています。

ユーザー像がより明確に

----:今回の松岡さんのこだわりとしてはCX-5とCX-8ではどちらが大きいですか。

松岡:CX-8です。この3年の間にお客様像がだいぶ見えてきました。CX-8を出した当初は色々なお客様が来ましたので、その全てのお客様に対応しなければいけないと様々なバリエーションをとにかく増やしました。しかしいまは、これだけあれば十分ということで、それらをよりわかりやするためにCX-5とは明確に分けるようにしています。

CX-5も『CX-30』が導入されたおかげで、お客様像はだいぶクリアになりつつあります。いままでは若いカップルの方から、シニアまで全てCX-5だったのですが、若いファミリーはCX-30に任せて、CX-5はもう少し年配のファミリー世代、もっと若い人はCX-8を選ぶように、役割分担が出来るようになっています。グレードごとのコンセプトも出しやすくなっていると思います。

----:そうすると今回のCX-8ではどのような位置づけになるのでしょうか。

松岡:若いファミリー層はブラックトーンエディション、エクスクルーシブモードはある程度マチュアな方達をターゲットにしています。マツダ CX-8ブラックトーンエディションマツダ CX-8ブラックトーンエディション

----:そうすると、CX-8はお客様層としては若干狭くなるイメージですか。

松岡:依然として広いのですが、当初想定したよりはちょっと間口は狭められるかもしれません。お客様のライフスタイルが変わりつつありますので、そこに合わせていく必要がありますから。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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