フォルクスワーゲン(Volkswagen)は9月13日、新世代EVの「ID.」シリーズの無線ソフトウェアアップデートを、欧州で全モデルに拡大すると発表した。
小型EVの『ID.3』で最初に無線更新を開始
フォルクスワーゲン ID.3フォルクスワーゲンは、ソフトウェア指向のモビリティプロバイダーを目指している。欧州では今夏から、『ID.3』の顧客はソフトウェアアップデートを、Over-the-Air(OTA)で受けられるようになった。フォルクスワーゲンがOTAを顧客に幅広く提供する最初の大量生産自動車メーカーになる、と自負する。
OTAが最初に開始されたのが、小型のハッチバックEVの『ID.3』だ。ID.3では、バッテリーが他のコンポーネントとともに、車両のフロア下に効率よく搭載される。バッテリーの蓄電容量は45kWh、58kWh、77kWhの3種類のグレードを、順次設定する。新しい燃費基準のWLTPモードにおいて、およそ330~550kmの航続を可能にした。
充電は、AC(交流)、三相交流、DC(直流)で充電できる。出力100kW の急速充電に対応しており、30分の充電でおよそ290kmの走行が可能なバッテリー容量を充電できる。
最新のソフトウェアバージョンの「ID.Software2.3」は今夏、モバイルデータ転送を通じて、ID.3の「First Movers Club」の会員限定で配信された。このアップデートには、車両の操作、パフォーマンス、快適装備の調整と改善が含まれていた。
電動SUVの『ID.4』などに無線更新を拡大
フォルクスワーゲン「ID.」シリーズの無線ソフト更新フォルクスワーゲンはID.3 のFirst Movers Clubの会員以外の顧客や、電動SUVの『ID.4』、その高性能バージョンの『ID.4 GTX』の顧客にも、OTAを拡大展開する。将来的には、フォルクスワーゲンはおよそ12週間ごとに、ID.シリーズのソフトウェアを更新する予定。顧客は工場に行かなくても、車載コントロールユニットなどを更新できるようになるという。
ID.シリーズの無線ソフトウェアアップデートでは、多くの機能が改善される。ヘッドライトは、アクティブメインビーム制御により、さらに正確なヘッドライト調整が可能になる。フロントガラスの下にあるライトストリップも更新される。先進運転支援システム(ADAS)の「アクティブクルーズコントロール」(ACC)で走行する場合に、省エネ運転を直感的にサポートできるドライバー情報を提供する。
また、多機能カメラの画像処理は昼夜を問わず改善され、二輪車やその他の道路利用者をより早期に認識できるようになった。ダッシュボード中央のインフォテインメントディスプレイは、より直感的な操作が可能になり、グラフィックも落ち着いて鮮明なものとした。フォルクスワーゲンによると、これらの改良は初期のID.3の顧客からのフィードバックになるという。
将来はソフト更新で新機能や新技術の後付けを可能に
フォルクスワーゲン「ID.」シリーズの無線ソフト更新ソフトウェアの更新は、モバイルデータ転送を介して、ID.シリーズの車載高性能コンピューターに直接ダウンロードされる。最新のMEBプラットフォームをベースにしたEVの場合、従来は車両の多数のコントロールユニットに分散されていた機能が集約される。
新しい電子機器アーキテクチャは、より強力でインテリジェントなだけでなく、車内のシステム間のデータと機能の交換も簡素化。これにより、無線アップデートを介して、最大35のコントロールユニットをアップデートすることが可能になったという。ソフトウェアの無線アップデートは、フォルクスワーゲングループのソフトウェア会社「CARIAD」と緊密に協力して開発されている。
ソフトウェアの無線アップデートにより、フォルクスワーゲンブランドは、「ACCELERATE」戦略で明らかにした新しいビジネスモデルの基盤を築いていく。将来的には、顧客が必要なときに注文できるサービスと機能を提供する。
たとえば、部分自動運転が可能な「トラベルアシスト」や航続を延ばすためのバッテリー性能の向上、自動運転などの後付けを想定している。フォルクスワーゲンは今後数年間で、新しいビジネスモデルが数億ユーロの収益を生み出す可能性があると考えている。
フォルクスワーゲン乗用車ブランドのラルフ・ブラントシュテッターCEOは、「無線アップデートの拡大は、フォルクスワーゲンの革新性を強調し、まったく新しいデジタルカスタマーエクスペリエンスの基礎を形成する。同時に、新しいデジタルビジネスモデルの基盤を築き、ACCELERATE戦略の重要なマイルストーンを打ち立てていく」と述べている。