交通サービスで震災復興のまちづくりを…浪江町、南相馬市【MaaSがもたらす都市変革】

まちづくりと交通インフラ整備の進む浪江町

日産が展開する「なみえスマートモビリティ」

EV、水素にも積極的な取り組み

南相馬市のロボット施策

外出を促進する定額タクシー「みなタク」

浪江駅となみえスマートモビリティ車両
浪江駅となみえスマートモビリティ車両全 5 枚

2011年3月11日に発生した、東日本大震災と福島第一原子力発電所爆発から12年を迎える。被災地ではさまざまな形で復興が進んでおり、その様子は毎年この時期になるとニュースで伝えられるが、その足取りは地域によって異なる。

とりわけ福島第一原発の周辺は、事故による放射性物質の放出や拡散による住民の危険を回避するために、国が避難指示を出し、それが長きにわたり続いたので、津波被害からの復興を進める地域とは別枠で見たほうが良いのではないかと思っている。

北海道、岩手県に続く日本の都道府県で3番目に広い面積を有する福島県は、南北方向に伸びる奥羽山脈および阿武隈山地によって、太平洋側から順に「浜通り」「中通り」「会津」と3つの地域に分けて呼ばれることが多い。県庁所在地のある福島市は中通り、観光地として知られる会津若松市は会津に位置し、県内最大の人口を有するいわき市は浜通りにある。原発事故の被害を受けたのもこの浜通りだ。その中から今回はまず、双葉郡浪江町を紹介する。

まちづくりと交通インフラ整備の進む浪江町

同町は福島第一原発事故により全域が「警戒区域」および「計画的避難区域」に指定されたことで、全町避難を余儀なくされ、中通りの二本松市に町役場の事務所が置かれた。しかし2013年には除染作業が始まり、翌年には復興まちづくり計画を策定するなど、復興に向けた歩みも始まっていた。

その後避難指示区域が見直され、かつての警戒区域や計画的避難区域は「避難指示解除準備区域」「居住制限区域」「帰還困難区域」に分けられた。このうち避難指示解除準備区域、居住制限区域では避難指示が解除され、浪江町にも2017年に住民が戻ってきた。さらに同じ年、帰還困難区域内において避難指示を解除し、居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」を定めることが可能となった。

とはいえ震災前に約2.1万人いた人口は、2022年11月時点では2000人弱と1割以下にまで減少しており、避難指示が解除されたのはおおむね常磐道より東側の地域に過ぎない。それでも町では本格的な復興に乗り出しており、モビリティの整備やカーボンニュートラルへの取り組みが進んでいる。

まちづくりでは2016年に地域スポーツセンター、2021年に「道の駅なみえ」、翌年には「ふれあいセンターなみえ」が相次いで開業。この間2019年には、イオン浪江店もオープンしている。

交通インフラでは、2015年に常磐自動車道、2020年にJR東日本(東日本旅客鉄道)常磐線が全通し、東京および仙台と再び結ばれることになった。2021年には新常磐交通の路線バスも町内の運行を再開した。

これ以外に町営デマンド交通や無料町内周遊バスもあるが、加えて2021年からは「なみえスマートモビリティ」と呼ばれるAIオンデマンド交通が実証運行を始めている。手がけているのは日産自動車で、国内の自動車メーカーが公共交通に携わる数少ない例と言える。

日産が展開する「なみえスマートモビリティ」

筆者は今年2月に浪江町を訪れ、このモビリティサービスを企画した日産自動車総合研究所研究企画部主管の宮下直樹氏に取材した。


《森口将之》

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