途中でトレーラー交換「中継輸送」が本格始動…トラック物流2024年問題

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晴海コンテナ輸送は、トラック物流業界の「2024年問題」の解決策として「セミトレーラー中継幹線輸送サービス」を6月より本格稼働する。輸送区間の途中でトレーラーを交換し、ドライバー1人あたりの1日の運行距離を往復で400km前後に抑えることで、約8時間の労働時間を遵守する。

◆概ね200km毎に中継拠点を配置

「セミトレーラー中継幹線輸送サービス」は、切り離しが可能なセミトレーラー(=トラクタヘッド+コンテナシャーシ)を活用したサービスだ。主要幹線道路に概ね200km毎に中継拠点を配置し、中継拠点でコンテナシャーシの切り離しと連結を行なう。ドライバーの実働としては、中継地点で待ち合わせているトラックとコンテナシャーシを付け替え、元の出発地に戻る。

トラック物流「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって2024年4月以降、運送事業者の従業員の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限され、そのことによって発生する諸問題の総称をさす。

昨今のトラックドライバーの間では、長時間労働が慢性化している。運送事業全体が人手不足の中、EC市場の急成長による宅配便の増加により長時間労働が常態化しており、長距離輸送を得意とする事業者を中心に、事業構造の見直しに迫られている。

◆毎日帰宅できる勤務体制

例えば東京~大阪間の場合、現在は1人のドライバーが1台のトラックで走行し続ける。荷物の積み下ろしなどの荷役作業はドライバーの担当だ。復路は空荷ではなく、帰り荷が出てくるまで 2~3日外泊をして荷待ちをすることもある。ドライバーの体力負担が大きく、効率も悪く、労働環境が良いとは言えない。

セミトレーラー中継幹線輸送サービスでは、ドライバーは中継地点でトラックとコンテナシャーシを付け替え、出発地に戻る仕組み。中継地点で帰り荷を積めるためドライバーは毎日自宅へ帰ることができる。東京~大阪間の場合、中継拠点は静岡県の磐田市になる。

セミトレーラー中継幹線輸送サービス(導入後)セミトレーラー中継幹線輸送サービス(導入後)

◆ドライバー乗り換えは嫌われる

従来からも、2024年問題の解決策として、1台の車両の運行に際し、ドライバーを途中で交代させる方法が大手運送事業者を中心に行われていたが、1台の車両を2人以上のドライバーが使用するため、各ドライバーの職場(=車内)の快適性の面で課題があった。

今回は、1台のトラクタヘッドをドライバー1人が使用することになるので、職場の快適性を担保できる。また1車両1ドライバーなので、車両の使い方や維持管理に対する責任をドライバーに持たせることもできる。

一般にセミトレーラー中継方式の課題としては、トラクターの交換時にスペースが必要(車両前方に25~30m)、けん引免許を持つドライバーの確保が必要、対応車両の生産が需要に追いついていない、などが挙げられる。

いっぽう晴海コンテナ輸送では、トラクターヘッドを切り離して(台切り)荷役できるため、発着バースの過密緩和が可能、積載量は大型増トン車に比べ2割のプラスになる、セミトレーラーの利点をあげる。またトレーラーの供給に関しては、コンテナ改装型のトレーラーを用意することで大量生産やカスタマイズが可能、価格と納期が従来型より優位、国際的に標準化されたコンテナなので運用のルールや手順が確立されており、輸送経験のあるドライバーは多い、とする。

労働時間規制による物流への影響労働時間規制による物流への影響

◆トラック物流「2024年問題」とは

2024年4月以降、運送事業者の従業員においても年間時間外労働時間の上限が960時間に制限される。従来のやり方・仕組みのままで時間外労働時間が制限されると、運送会社は従来の売上・利益の確保が困難となる。それにより運賃値上げが始まると、荷主にとってはコストUPとなる。いっぽうで労働時間が減少したドライバーは、収入が減少する。

農林水産省・経済産業省・国土交通省によると、時間外労働規制などによる物流への影響として、対2019年度比で、2024年度には輸送能力が約14%(4億トン相当)不足し、その後も対応を行わなかった場合、2030年度には輸送能力が約34%(9億トン相当)不足すると試算されている。

6月2日には内閣府の「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議(第2回)」が開催され、物流の生産性を向上し、荷主企業や消費者の行動変容を促す仕組みの導入を進める政策パッケージが発表された。今後も、1. 荷主・物流事業者間における商慣行の見直し、2. 物流の標準化や DX・GXなどによる効率化の推進、3. 荷主企業や消費者の行動変容を促す仕組みの導入、について検討していく。

《高木啓》

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