トヨタの2倍あるテスラの営業利益率と新たなビジネス展開…シバタナオキ氏[インタビュー]

トヨタの2倍あるテスラの営業利益率と新たなビジネス展開…シバタナオキ氏[インタビュー]
トヨタの2倍あるテスラの営業利益率と新たなビジネス展開…シバタナオキ氏[インタビュー]全 8 枚

来たる6月22日、無料のオンラインセミナー「テスラvsトヨタ・日産・ホンダ~決算の数字からテスラ成功要因を比較分析~」が開催される。セミナーに登壇するのは、決算が読めるようになるノート 創業者のシバタナオキ氏だ。

セミナーは、現在アメリカ・シリコンバレー近郊に在住するシバタ氏が、現地の電動化の雰囲気と共に、テスラの成功要因を分析する内容になっている。

当日はQAセッションも設けられ、シバタ氏の賢察を直接聞くことができる。
セミナー(無料)の詳細・申し込みはこちらから。

シバタ氏に事前にセミナーの見どころを聞いた。

■テスラの突出した成長率に注目

テスラの現在地を読み解くのに、販売台数だけではなくその成長率に注目すべきだとシバタ氏は説明する。

「販売台数としては、まずトヨタは非常に大きく、その次にホンダ、日産と続きます。テスラの規模はトヨタの約7分の1程度です。一方で、現在世界中の自動車メーカーで著しく成長している企業は少ない中、テスラが高い成長率を示しており、前年同期比34.5%の成長率を維持しています。」

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「自動車業界全体を見渡すと、概ね成長率は横ばいですが、その中でテスラだけが突出した伸びを示しているのは注目すべき事実です。この伸び率は、まるで小学生がたくさんご飯を食べて大きく育っているような状態です。」

「特に注目すべき点は、テスラの販売する全ての車両はBEVであるということです。一方、トヨタの電動車は95%がハイブリッドで、BEVの比率はまだ非常に低いという現状があります。」

「トヨタもBEVへの取り組みを強化しており、そのための部署を設けているとのことですね。アメリカでは以前、ハイブリッド車のプリウスが非常に多く見られたものの、最近ではその数を大幅に減らし、その代わりにテスラの車が増えているように感じます。」

■テスラの営業利益率と特異なビジネスモデル

営業利益では、テスラは日産やホンダを超え、トヨタの半分以上という規模になっていること、そして営業利益率も格段に高いことがテスラの特徴だとシバタ氏は指摘する。

「営業利益においてもテスラが大きな存在になってきています。為替の影響もあるものの、トヨタの営業利益の半分以上に達しています。成長率も圧倒的に高い状況です。皆さんが想像する以上に、テスラの規模は大きいというのが事実です。」

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「営業利益率を見てみると、テスラと他の自動車メーカーの平均やS&P500と比較しても、テスラの利益率は優れています。S&P500にはGoogleやAppleなどのソフトウェア企業が含まれているにも関わらず、テスラの利益率はこれらと比較しても遜色がないほどです。」

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「自動車業界に詳しい方は、3年前や4年前にテスラが資金難で苦労していたという記事を読まれたかもしれません。しかし、このグラフが示すように、2019年までの苦難を乗り越えて、製造を安定させることができました。」

「またテスラの収益源を見ると、その8割が自動車の販売から来ているのが見て取れます。これは自動車メーカーとしては当然のことですが、テスラの特徴的な収益源としてCO2排出権の取引が挙げられます。特にアメリカのカリフォルニア州などでは、全自動車メーカーが一定割合の電動車を販売しなければならない規制があり、その規定に達しないメーカーはペナルティを支払わなければならないのです。そのため、テスラのように電動車のみを生産・販売している企業にとって、この制度はさらなる収益源となっています。」

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「さらに、メンテナンスやサービスを自社で行うというテスラのアプローチも収益源となっています。テスラはディーラーを持たずに直販を行い、その上でメンテナンスも自社で手掛けるため、ここからも収益を上げています。」

「軽微な故障や問題であれば、例えばタイヤのパンクなど、テスラは自宅までサービスを提供しに来てくれます。テスラのアプリを通じてメンテナンスを申し込むと、自宅にテスラの専門スタッフが大きなトラックで訪れ、車を持ち上げてパンクを修理するなどのサービスも提供しています。このような一連のユーザーエクスペリエンスは素晴らしく、満足度の向上に貢献していると感じます。」

■FSDは1万5000ドルでも買いたい

シバタ氏がテスラについて“一番すごい”と感じるのが、FSD(フルセルフドライビング)の機能だという。テスラ車のオプション機能として提供されている運転支援レベル2に該当するものだ。このFSDに期待するところが大きいとシバタ氏は言及する。

「私が個人的に一番すごいと思うのは、テスラの自動運転ソフトウェアFSDです。実は去年、家族用の新車を購入する際、ほぼすべての自動車メーカーの自動運転機能付きの車を試乗しました。その中にはレベル3のメーカーも含まれていましたが、実際に乗ってみると、テスラのFSDはソフトウェアとして圧倒的に進んでいると感じました。」

「アメリカで運転すると、高速道路ではほぼトラブルなく運転できますし、街中や高速道路以外の場所でも問題なく運転できます。ただし、運転は若干安全重視、つまり保守的な感じがあります。例えば、自分でハンドルを握っていればすぐに右折できる場所でも、テスラの自動運転では少し待つことがあります。これは安全性を考えれば安心できる点ですけどね。」

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「テスラのFSD(全自動運転)は、その初版がリリースされてから現在まで、ほぼ毎月のようにアップグレードが行われ、その性能はどんどん向上しています。私がFSDを購入した際はまだ2000ドル程度で、とても安価に手に入れることができました。現在FSDのオプション価格は1万5000ドルもしますが、今もし新たにテスラを購入するとしても、1万5000ドルでもFSDを付けると思います。それほど価値のあるものだと感じています。」

■さらに進化するテスラのビジネスモデル

テスラはこれからも、さらに進化していくだろうとシバタ氏は説明する。あらたなビジネスの展開についても興味深いところだ。

「次に、モデル3の製造コストに関するデータを見ていきたいと思います。2018年と比較すると約30%もコストが下がり、さらに大量生産が可能になっています。今までこのスケールでBEVを製造した会社は存在していませんでしたので、試行錯誤が繰り返された結果ということでしょう。イーロン・マスク氏自身も認めているように、最初はロボットによる製造が誤りであったといった経験から、大幅なコスト削減が可能になったというわけです。」

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「またサービス部門についての数値ですが、売上総利益は6%に達しています。これはおそらく、車を販売していく過程で故障しやすい箇所が明らかになり、その部分のパーツを変えたり、修正を加えたりすることで、経験と学習を積み重ねてきた結果でしょう。これは非常に印象的な成果だと感じています。」

「テスラは、基本的に持続可能な交通手段を提供し、その加速化を促進する会社であり、その主要な業務は自動車製造です。しかし、車だけでなく、ソーラーパネルの販売など、多岐にわたる事業を展開しています。そのソーラーパネルは一見すると屋根のように見え、発電だけでなく、デザイン性にもこだわっています。」

「また、自宅に設置できる蓄電池も販売しています。これは、電気自動車を購入すると必ず生じる充電問題を解決するとともに、環境への負荷を軽減するための製品です。世界中で夜間の電力はあまり利用されず、多くが無駄になっています。しかし、これらの電力を蓄電池に蓄えることで社会に貢献できると私は考えています。その証拠として、蓄電池の設置数は前年比で4.6倍に増えました。車のビジネスも大切ですが、車を切り口にバッテリービジネスも増やしていくのではないかと予想しています。」

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「自動車ビジネスと比較すると、蓄電池ビジネスはまだ規模が小さいですが、私は世界が必要とする蓄電池の量は実はもっと多いと考えています。多くの蓄電池が設置されれば、夜間の無駄な電気が活用され、社会全体の効率が向上するはずだと考えます。」

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このインタビューで取り上げた話題のほかにも、セミナーではシバタ氏の分析を聞くことができそうだ。QAセッションも行われるので、興味のある方はぜひ参加の検討をされたい。
セミナー(無料)の詳細・申し込みはこちらから。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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