マツダ2 に198通りのプロジェクション…浅間国際フォトフェスティバル2023で柿本ケンサクとコラボ

浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA
浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA全 15 枚

マツダは浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTAに協賛。アーティストの柿本ケンサク氏による『マツダ2』のボディにプロジェクションマッピングした作品をはじめ、国内外の20組ほどのアーティストの様々な作品を屋内外で見ることができる。9月3日までの開催だ。

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◆マツダ2は198通り、映し出されるイメージも198通り

主催となる浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA実行委員会は、御代田という町をより知ってもらおうと浅間国際フォトフェスティバルを企画。2018年から始まり今回で4回目となる。開催場所であるMMoP(長野県北佐久郡御代田町)は、メルシャン美術館の跡地をベースにした写真の美術館だ。通常のフォトフェスティバルは建物の中で、額装され壁にかけられた作品を静かに鑑賞するものであるのに対し、このフェスティバルはパブリックの人々に開かれた場で、老若男女、色々な方に写真を気軽に楽しんでもらいたいと、屋内外に様々な趣向を凝らした作品が展示されている。

浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA

マツダと映像作家/写真家の柿本ケンサク氏によるコラボレーション作品は、白のマツダ2に人が近づくとイメージが表れるもの。床にあるセンサーが人の動きを感知して映し出すイメージが背景の壁に投影された作品とともに切り替わっていく。マツダ2の198通りの組み合わせが可能なカラーコーディネートに合わせ、映し出される映像も198通りある。また、指向性スピーカーを用いることで、クルマの側に立っている鑑賞者しか聞こえない音も流される。これは、写真をテキスト化し、それをAIが読み取って音を生成したもの。鑑賞者の動きによって、聞こえる音も変わっていく作品だ。

浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA

ここに映し出される写真は、“トリミングシリーズ”と呼ばれる柿本氏の作品。「日常の何気ない風景、例えば時刻表など、ほかの役割を持ったものの一部をトリミングすることで、新しい意味性や作品性を持たせて生まれ変わらせるというシリーズ」と柿本氏は説明。「普段、家と会社や学校などの往復を続けていると思うが、この間にも色々な景色があって、いろいろな発見もある。そういったことを写真で表現出来ないかと、トリミングシリーズを続けている」と語る。

映像作家/写真家の柿本ケンサクさん映像作家/写真家の柿本ケンサクさん

そして、「マツダ2があるこの場所が、都市の空間のようなイメージで、自分が立っている場所や、移動する場所によって景色(投影されている作品)がどんどん変わっていく。そういうシーンから新しい景色を見つけて欲しいと思って作った」とコメントした。

マツダ2のチーフデザイナーであるマツダデザイン本部チーフデザイナーの木元英二氏は、「カーデザイナーの目から見ても、新しいクルマの魅力が見つかるなど、非常に刺激になり、面白い経験だ」と語った。

マツダデザイン本部チーフデザイナーの木元英二さんマツダデザイン本部チーフデザイナーの木元英二さん

◆まさにぴったりのコラボレーション

ここからは関係者諸氏に話を聞いたので、まとめてみたい。

---:そもそもこのフェスティバルに協賛するきっかけは何だったのでしょう。

マツダ国内商品マーケティング部商品広報チームの田中秀昭さん(以下敬称略):(このフェスティバルを御代田町と共同主催する)アマナ社とはカタログなどの仕事でお付き合いがあり、その仕上がりは群を抜いていました。また進藤さん(進藤博信氏 アマナ代表取締役兼アマナグループCEO)とお話をさせていただく中で、ストックフォトで有名であるだけでなく、カメラマンであり、また、アートにもものすごく長けていて、写真をアートにしようとされているその姿にすごく共感を受けたのです。ビジネスだけではなく、アートも分かっておられると感じていました。

一方でマツダはCAR as ARTというスローガンを掲げ、立体造形で勝負し、かつ動くことによって景色が変わることで生き生きとさせることをウリにしています。従って、2次元の写真は親和性が低かったのです。それでもぜひ一緒に何かできないかと思っていたのですが、その機会がなかなかありませんでした。また、MMoPの環境がとても良いものでしたので、ここであればいままでマツダがタッチできなかったお客様たちにクルマを見ていただくチャンスにはなると考えてその機会をずっと探っていたのです。

そして今年の1月にマツダ2が大幅商品改良しました。その特徴のひとつに198通りのカラーコーディネートがあります。これがちょっとポップアートっぽく見えたんですね。そこで2Dで写真や色などを使い、例えばプロジェクションマッピングなどで表現しても似合いそうだなと思い、主催者などに相談して実現しました。

---:ではその時点で既にマツダ2で行こうと決めていたのですね。

田中:もちろんです。この198通りの表現ができるというのは、自己表現のやり方のひとつで、それはカラーで二次元的なグラフィックスなどで楽しめるものです。いままでのマツダ車とは違うボキャブラリーで訴えられるなと思っていました。

さらにマツダ2のキャラクターとして若い人に興味を持ってもらいたいと考えています。そこで彼らが興味を持つ動線の中に入れよう考えると、彼らが興味を持つものは綺麗な写真集じゃない。さらにこのフェスティバルにはたくさん若い女性が来るので、ここで面白い作品ができたら彼らに興味を持ってもらえるかなと思いました。

---:チーフデザイナーとして、最初にその話を聞いたときにどう思われましたか。

マツダデザイン本部チーフデザイナーの木元英二さん(以下敬称略):これまでマツダはCAR as ARTとして形を見て欲しいと活動してきました。言い換えると、タキシードを着てるような、正装しているような世界ですね。一方、若者はもう少し着崩しているとか、そういうところに価値を見出しています。マツダ2は若者を狙うわけですから、自分自身で少しアレンジできるとか、ちょっと変えることができるとかで自分なりの楽しみができるところを訴えて、198通りという組み合わせを提案しました。これはこれまでやってきたことを否定するわけではなく、間口を広げるという意味なんですね。

そしてこの話をいただいて、柿本さんのコンセプトを聞くと、こんなにマッチングが良い組み合わせはあるのかというくらい、すごく良い企画だなと思い飛びつきました。我々の目指している、より着崩した感じとか、クルマを使って遊べますというところをより拡大してくれるような解釈を見せてくれるんじゃないかと感じたのが、一番正直な感想です。

>マツダデザイン本部チーフデザイナーの木元英二さん(右)と映像作家/写真家の柿本ケンサクさん(左)>マツダデザイン本部チーフデザイナーの木元英二さん(右)と映像作家/写真家の柿本ケンサクさん(左)

◆乗るものから着るものへ

---:最初にオーダーみたいなのものはあったんですか。

田中:最初はアマナ社と一緒に、こんな感じのイメージかなと進めていました。ですからマツダ2にプロジェクションマッピングをしたいというのは結構早い段階から話はしていました。しかし、どなたとするかは決まっておらず、ご推薦頂いたのが柿本さんでした。

---:それはどんなイメージだったんでしょう。

映像作家/写真家の柿本ケンサクさん(以下敬称略):198種類あるその個性を映写するようなことができないかというお題がまずありました。そこで、一回自分なりのフィルターを通して出さないと作品にならないので、そうしながらこういうことを表現したいんだなということをキャッチし、そこからは、自分の写真だとどんなことができるのかを考えていったのです。

田中:最初に提案されたものに、マツダ2が都市だとしたら、という例え話が書いてあったんです。あれは本当に想定してませんでした。都市だとしたら移動する、どこに行くかによって見える景色が違うはず。それが(鑑賞者の)立ち位置になるわけです。その瞬間にクルマとその人が光でつながってリンクしていく。そこにさらに音まで入ってくるのですから、やはりアーティストの方の発想はすごいなと思いましたね。

---:今回のお話があった時の柿本さんはどのように感じましたか。

柿本:今回は広告ではないのですが、せっかく一緒にやる以上はどうしたらマツダ2を魅力的に見せるかはやりたいなと思いました。同時に198通りの組み合わせには驚きました。そこで感じたのは、クルマが個人個人の個性を表してくれる、まるで乗りものから着るものに変わる感じ。そういったニュアンスで僕は捉えたのです。このクルマを着てその人が街に出かけて、どんな景色に出会っていくんだろうというのを想像した時に、このクルマで一緒に都市の中を移動しているような感覚で景色を見つけていく、写真という景色を見つけていくというのが、パーッと直感的にできないかなと思って、作品作りをしました。

---:実際にクルマでのプロジェクションマッピングの経験はあったのですか。

柿本:ないです。ただ今回僕が映した写真は、街中の本当にたわいもないものの一部をトリミングしているんです。例えば時刻表にしてもそうなんですけど、時刻表を時刻表として見ると、時刻表じゃないですか(笑)。しかし、時刻表のある一部を切り取って見ると数字の羅列でプリミティブなアートにも見えたりするでしょう。そういう視点の置き方のプレゼンテーションではありましたね。

浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA

写真はこの世界のどこかをトリミングしていることですし、そうやってトリミングしたものが、マツダ2のトリミングにもなる。つまり、マツダ2という額装ですよね。あの形の額装に自分がトリミングしたものをさらにそこにトリミングするのがすごく面白かったです。

もうひとつ、クルマのお仕事で巻き替え(例えばカタログ写真のクルマだけを別のクルマに差し替えたりするもの)もさせていただくこともあるのですが、リアリティをそこに持たせようとすると、カメラのこっち側(撮影者の後ろ側)がクルマにきちんと写っているかどうか。それが一番大事なことなのです。巻き替えた時にカメラの後ろにある空だったりとかビルだったりがどう写り込んで流れていくかです。今回トリミングされているもの、例えばその都市がクルマに映り込んだとして、そのクルマの形と走った時の光とその都市とが一体となってクルマの景色が出来上がるとすれば、すごくいいフレーミングだなと思いました。それは今回改めて思ったことですね。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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