あらゆるバイクを毎日生産、コンベアのない「超汎用組立ライン」をヤマハが公開

ヤマハ発動機の本社工場で採用されている「AGVバイパス方式」による超汎用組立ライン
ヤマハ発動機の本社工場で採用されている「AGVバイパス方式」による超汎用組立ライン全 20 枚

ヤマハ発動機は、静岡県磐田市の本社組立工場で、従来のコンベア式に代わりAGV(自動搬送車)を活用した「超汎用組立ライン」を導入し、運用を開始していることを発表した。12月22日、本社でおこなわれた社長会見に合わせて、一部報道にその様子が公開された。

組立工場では35モデル、1525品目の二輪車を生産し世界94か国に供給している。ヤマハ発動機としてグローバルでは年間約479万台を生産するうち、日本での生産は約4%の21万台。東南アジアなどの大市場では現地生産を拡大する一方、日本では高付加価値製品に絞り、多品種少量生産をおこなっている。

本社工場での二輪車生産台数は年々減少し、2020年には15万台まで落ち込んだ。コロナ禍での需要増から増産をおこない2022年は20万台まで戻したものの、15万台規模にも耐える体質が必要と判断。また、スクーターからスポーツバイクまで多品種を効率よく、タイムリーかつコンスタントに供給する体制が必要とされていた。これに対応するのがAGVでの自動搬送ライン「AGVバイパス方式」による超汎用組立ラインだ。

2021年から検討を開始し、2022年3月に1本目のラインをAGV化、2023年3月にもう1本のラインが完成。すでに30万台ほどがこの新しいラインから生産されたという。

◆あらゆるバイクを毎日生産できるライン

ヤマハ発動機の本社工場で採用されている「AGVバイパス方式」による超汎用組立ラインヤマハ発動機の本社工場で採用されている「AGVバイパス方式」による超汎用組立ライン

従来の全長140mもの重厚長大なコンベア方式は、同一車種の大量生産や、工場の自動化が困難な地域での生産には向いているが、1ラインでのロット数や車両サイズなどに制約がある。従来は4ラインを使い、1ロット最低40台~、1ラインあたりの生産モデルは15モデル、1カテゴリーだったものが、AGVによる超汎用ラインでは2ラインに集約。1ロット4台~のハイサイクル生産を可能とし、1ラインあたりの生産モデルも17モデル、3カテゴリーにまで拡大することができたという。

65c~1000ccまでの幅広いラインアップを同一の組立ラインで生産することができるため、曜日ごとに特定の車種をまとめて生産する、という型式から、毎日全車種を生産する、ということが可能になり「1台を待っているお客様に最速でデリバリー」することができるようになった。

稼働するAGVは135台。AGVは長さ2400mm、幅1300mm、高さ400mmの台車で、床面に敷かれた磁気テープをトレースすることで自動走行が可能。ヤマハのゴルフカートや自動走行モビリティでも採用されている技術だ。AGVはIDタグを読み込むことで、車両を判断、組み付けるべき部品や治具の最適な準備や、組み付ける際の高さ調整なども自動でおこなう。工場内の走行ルート約50か所に設置された非接触による急速充電により、少ないタイムラグで稼働することが可能となっている。

ヤマハ発動機の本社工場で採用されている「AGVバイパス方式」による超汎用組立ラインヤマハ発動機の本社工場で採用されている「AGVバイパス方式」による超汎用組立ライン

「AGVバイパス方式」と名付けられているのは、最終目的地(完成検査)が同じでもモデルによって工程数に違いがあるため、前に並ぶモデルの工程に時間がかかる場合や、その工程が必要ない場合にはラインを外れて次の工程に自ら移動するため。「渋滞路を外れて目的地まで直行するという意味で、バイパス方式と呼んでいます」とヤマハは説明する。

コンベアがなく、AGVが自動で動き回る風景は、これまでの工場のイメージとはだいぶ異なる。「ライン」という言葉が使われているものの、印象としては「島」のようだ。荷物を乗せた小さな船が、作業員のいる「島」にたどり着き、組みつけを終えるとまた別の「島」へと去っていく。そんなイメージを抱かせた。

このAGVはヤマハの自社開発。ヤマハは工場のロボティクス技術を積極的に研究・開発し自社の生産現場を改善するだけでなく、外部への提供・販売も新規事業分野として注力している。この「超汎用組立ライン」はヤマハの自動運転技術や、ロボティクス技術、ものづくりへのこだわりがひとつとなった現れということができるだろう。いずれにせよ、その根底にあるのは「お客様の1台を、最速でお届けしたい」という思いであることに違いない。

《レスポンス編集部》

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