ウッドの仕上げに8000時間、ロールスロイス『アルカディア・ドロップテイル』発表

ロールスロイス・アルカディア・ドロップテイル
ロールスロイス・アルカディア・ドロップテイル全 5 枚

ロールスロイス・モーターカーズは2月29日、「コーチビルド・ドロップテイル」プログラムの3台目、『アルカディア・ドロップテイル』(Rolls-Royce Arcadia Droptail)を発表した。

この車は、静けさと自然素材を重視し、所有者の個性を際立たせるデザインとなっている。オーナーは建築とデザインに造詣が深く、彼らのラグジュアリーへのこだわりと純粋さ、控えめな美学が反映されている。

「アルカディア」という名前は、ギリシャ神話に登場する理想郷から取られており、オーナーはビジネスの複雑さから逃れるための静かな空間を求めた。デザイナーは、オーナーの好む世界各地のデザインや建築からインスピレーションを得て、シンガポール、インドネシア、ベトナムのモダニズムやイギリスのバイオミメティクス建築を取り入れた。

オーナーは、2019年に初めて提示された手描きのスケッチに忠実な車を望んだ。特に、車の低い姿勢やキャビンデザイン、ドラマチックなボディラインに魅力を感じた。また、ヨットの帆を連想させる「セイルカウル」と呼ばれるデザインが特徴だ。

ロールスロイスのデザイナーは、注文主の要望に応えるため、自然で落ち着いた二色使いのカラーリングを開発した。主体色はアルミニウムとガラス粒子を含んだ白色で、光に当たるとキラキラと輝き、深みのある塗装に見える。また、銀色のメタリック塗装は、白色との対比だけでなく、強度の面でも異なる仕上がりとなっている。

他のドロップテイルシリーズと異なり、アルカディア・ドロップテイルのカーボンファイバー製下部は、銀色に塗装されており、車のプロファイルを際立たせている。また、歴史的なロールスロイスの明るい仕上げに魅了されたオーナーのために、エクステリアグリルや22インチ合金ホイールは鏡面磨きにされている。

内装は、オーナーの個人的な美学を反映しており、彼らの住居やビジネススペースに合わせたスタイルが取り入れられている。特に、木材のテクスチャーや色合いにこだわり、サントス直粒木が選ばれた。この木材は非常に繊細で、加工時には最大の注意が必要であるが、233ピースもの木材がアルカディア・ドロップテイルの内装に使用されている。

アルカディア・ドロプテイルは、熱帯気候を含む国際的に使用されるため、外装木材表面の保護システムの開発とテスト工程に特別な注意が払われた。当初、スーパーヨットで使用されるコーティングが検討されたが、定期的なメンテナンスと再塗布が必要であることから中止された。その代わりに開発されたのが、自動車の寿命まで1回塗るだけで済む特注ラッカーだ。

このコーティングを検証するため、ロールスロイスのスペシャリストたちは、世界の極端な天候をシミュレートする専門マシンの中で、単板を過酷なサイクルにさらすというユニークなテスト・プロトコルを考案した。これは、暗闇で乾燥させたり、熱や明るい光にさらしたりする時間の合間に、断続的にサンプルの木片に水を吹きかけるというもの。

これを18種類のサンプルで1000時間繰り返し、マルクのスペシャリストはその耐久性に満足した。ウッドピースと保護コーティングを合わせると、開発には8000時間以上を要したという。

《森脇稔》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  2. セリカに次ぐ「リフトバック」採用のカローラは、50年経ってもスタイリッシュ【懐かしのカーカタログ】
  3. 【マツダ CX-60 XD SP 新型試乗】やっぱり素のディーゼルが一番…中村孝仁
  4. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  5. シートに座ると自動で送風開始、取り付け簡単「クールカーシート」2モデルが発売
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る