LiDARとカメラを1ユニット化、京セラの自動運転を見据えた次世代センサ…遠距離でも高精度の測定が可能に

京セラの「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」
京セラの「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」全 16 枚

自動運転に向けた技術開発が進む中、京セラが新開発した「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」の説明会を11月11日に催した。世界で初めてLiDARとカメラの光軸を一致させた最先端のセンサユニットとなった同製品の、実機を使ったデモも実施された。

メンテナンスフリー化、リアルタイム重畳が可能に

レーザー光を照射してその反射光によって障害物までの距離やサイズなどの3D情報を得られるLiDARは自動運転を見据えてクルマへの搭載が進められている技術だ。位置関係や形状などを正確に把握できるLiDARは従来のミリ波レーダーやカメラを使ったシステムよりすぐれた点も多く、次世代の自動運転を担うデバイスとして期待されてる。そんなLiDARは、検知した障害物をより正確に把握するためにカメラと併用してデータ統合されることも多い。しかし従来、LiDARとカメラは別デバイスであり設置場所も別々なためそれぞれの光軸が異なる視差が発生していた。

そのような状況の中、新たに京セラが開発した「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」はLiDARとカメラをひとつのユニットに収めることで光軸を一致させ視差をなくすことに成功したのが特徴。デモ機を見るとLiDARによるレーザー光の受光部に加えて、レーザーと同軸で入力した画像を鏡を使ってカメラに導いて視差をなくす工夫がなされているのがわかる。つまりレーザーとカメラ画像をズレなくまったく同じ光軸で入力できるようになったのだ。その結果、従来は必要だったキャリブレーション(複数のセンサや機器が同じ基準で測定できるように、測定結果に生じるズレを調整してデータを一致させる作業)が不要になりメンテナンスフリー化することに成功している。

京セラの「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」

さらに、これまではLiDARのデータとカメラの画像データを統合させるデータ重畳が必要だったが、LiDARとカメラを1ユニット化した「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」はユニット内でこの重畳が可能になり統合したデータがそのまま出力されるのも特徴だ。2つのデバイスからの出力を統合する後処理が不要になり、遅延のないリアルタイム重畳が可能になった。またシステム全体を見てもデータの重畳による負担を大幅に減らしてシステムのシンプル化に貢献している。

京セラの「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」

LiDARの高解像度化も実現

「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」のもうひとつの大きな特徴はLiDARの高解像度化だ。国交省により自動運転の安全確保に関するガイドライン(令和6年6月)によって、低背障害物検知が必須になっている。例えば路上の横臥者や最低地上高よりも高さがある障害物を検知して回避する必要がある。従来は車両や歩行者の検知が主だったが、路面に横たわる人やロードキル(路上に横たわる野生動物などの死体)さらには落下物などを正しく検知する必要が出てきているのだ。そこで京セラはLiDARの解像度を高めることでこれらに対処した。同社がこれまでレーザープリンターなどで培ってきたレーザースキャンの技術を応用することでLiDARを高解像度化(最高垂直分解能0.045度の照射密度を実現)。これは70m先に落ちているタイヤを正確に検知できる解像度であることが紹介された(京セラでは100m先の30cmの落下物も検知できるとしている)。

京セラの「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」

《土田康弘》

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