モンゴルでトヨタ・ディーラーが急成長、ラグジュアリー層を獲得…日本のBP職人あり

経済成長が続くモンゴルで、トヨタ・レクサス正規ディーラーを展開する「Munkhada(ムンフハダ)」が急成長を続けている。その成長の裏側には、日本のBP職人による本格的なサポートがあった。

36歳と若いCEOのバド氏は、日本のBP職人に全幅の信頼を寄せ、作業効率化や育成…

モンゴルのラグジュアリー層を獲得して急成長するトヨタ・ディーラーの裏側に、日本のBP職人あり
モンゴルのラグジュアリー層を獲得して急成長するトヨタ・ディーラーの裏側に、日本のBP職人あり全 21 枚

経済成長が続くモンゴルで、トヨタ・レクサス正規ディーラーを展開する「Munkhada(ムンフハダ)」が急成長を続けている。その成長の裏側には、日本のBP職人による本格的なサポートがあった。

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ラグジュアリー層と言われる高品質で高価格サービスを求める富裕層をターゲットに、日本のBP職人のアドバイスを取り入れ、整備、鈑金塗装、カスタマイズ、カーディテイリングに至るまで、ハイクオリティな自動車アフターサービスを提供。綺麗な待合室には各作業ピットの現在の光景が映し出されるモニターが設置され、レクサスオーナーには特別なオーナーラウンジを用意。36歳と若いCEOのバド氏は、日本のBP職人に全幅の信頼を寄せ、作業効率化や育成においても成果を上げ、さらなる事業拡大を目指している。

極寒のモンゴルでは、日本車が人気

モンゴルは寒暖差が激しく、冬季はマイナス40度を超える極寒地となる。凍結や積雪時の悪路にも対応する走破性と燃費の良さが高く評価され、以前から日本車の人気が高い。

中でもトヨタ車のシェアが高く、新車販売では「トヨタ一強」といえる特異な市場が形成され、富裕層たちはランドクルーザーやレクサスを好んで購入。中古車においてもトヨタのハイブリッド車への信頼性が高く、街中では旧型プリウスが溢れかえっている。修理需要も高いが、工具や設備、塗料、副資材などの入手に課題があり、高コストな海外輸入にも頼れないため、結果的に修理品質が低下している状況がある。

元横綱・白鵬関の親族が創業

こういった背景のもと、元横綱・白鵬関の親族がトヨタ車の新車販売を行う「ムンフハダ」を2013年に創業。日本企業のジーライオングループ・ライガーホールディングインターナショナルが資本参加して事業を開始した。

新車販売台数を着実に伸ばすことで、正規ディーラー(3S:Sales / Spare parts / Service)へと発展。現在のショールームには現役時代の白鵬関の大型ポスターなどがあり、ラグジュアリー感がある豪華で洗練された空間が作り上げられている。

“ハイクオリティ” の実現に向けて

新車販売に加え、交換部品の販売や整備、修理にも対応できる3S体制を整えるために、内製BPセンターの立ち上げが必要となり、大きな転換期を迎える。モンゴルでは低品質な修理が一般的な中、さらなる事業拡大にはラグジュアリー層から認められるハイクオリティの修理品質を実現する必要があった。

そこで、2016年に本社拠点を首都ウランバートル市内に移転。ムンフハダ経営陣は試行錯誤を経て、莫大な設備投資を行う内製BPセンター立ち上げと総合コンサルタントを大阪の鈑金塗装職人・小野隆二氏に依頼した。

小野氏は、アストンマーティン車のボディに関する全ての修理が可能な工場に与えられる「アストンマーティン・ボディリペア・センター・カテゴリーA」認定を2004年に日本で初めて取得した自動車整備工場「B-RIGHT(ビーライト)の創業者で、13歳から車体整備に携わり50年以上の現場経験を持つ。

小野氏のアドバイスによって、工場設計、作業工程、教育、材料選定を決定。その結果、最長5~10年だった投資回収計画が3年で黒字化達成。BPセンター開設後の2017年からは年4回、小野氏はモンゴルで現地メカニックたちに技術トレーニングを継続している。

小野氏考案「作業工程管理システム」で効率化

小野氏が考案した作業工程管理の一環として、工具類の整理整頓が徹底されている点も重要な特徴と言える。工具棚には現在の使用者がわかるように、工具を持ち出す際にメカニックの顔写真の札を工具棚の所定位置に掲示する整理整頓の仕組みが完成され、メカニックたちに定着している。

さらに注目したいのは、BPセンター内の壁面に貼り出された数多くの情報だ。工具それぞれに適した作業内容やメリット、デメリットなどが細かく整理され、常に確認できるように文章や写真が壁面に貼り出されていた。このような取り組みがメカニックの理解力や作業効率の向上につながっている。

あらゆる高級車に対応できる最高水準の技術

取材時、BPセンターには、トヨタ車に加えロールスロイスの修理も行われていた。ハイクオリティな修理実績を積み重ねるうちに、ラグジュアリー層の間で評判が広がり、トヨタ・ディーラーでありながら、他ブランドの高級車の修理依頼が増加しているという。

モンゴルでは制度上、経済全損になることが少なく、日本で全損扱いになる大破車両の修理依頼も多いため、高性能なフレーム修正機や高度なBP技術が不可欠と言える。メカニックたちは紫外線硬化パテやデントリペアツールを利用した外板修正も行なっており、ボディの状態に適した最良の修理が取り入れられていることがわかる。

小野氏が指導したメカニックが、モンゴルのトヨタ・ディーラー3社による整備・修理コンテストに出場し、一昨年、昨年と優勝する技術力を有しており、修理品質の高さでモンゴル市場をリードしていることが伺える。

新車後カスタムやボディ保護の需要もカバー

ムンフハダは別会社「マジックエンジニアリング」を立ち上げ、新車後のカスタムやボディ保護の需要も取り込む。新車販売時20~30%にチッピング防止フィルム施工を付帯。ボディコーティングやペイントプロテクションフィルムなどは日本のディテイリング専門店「カーメイクアートプロ」の資材を多く使用。このほか、横浜ゴムの正規代理店も務め、用品販売とカーディテイリングサービスを展開中。12月からは隣接する別棟での拡大展開を予定している。

トヨタ認定中古車「TOYOTA-Q」を確立

中古車販売でも成果を上げている。モンゴルは、右ハンドル車と左ハンドル車が市中に混在。保有台数は約100万台でこのうち7割が首都ウランバートルに集中し、日常的な大渋滞が社会問題化している。モンゴル政府は渋滞対策として新規ナンバー発行の制限や、中古車輸入の規制(右ハンドル抑制など)を進めている。

このような社会状況の中、自社で在庫を持たないトヨタ認定中古車「TOYOTA-Q 」仲介モデルを確立。ディーラー限定販売車という信頼性、品質保証、修理履歴の透明性を担保し、個人間売買が主流のモンゴル市場で圧倒的な信頼性を獲得し、2024年には144台を仲介したという。

「教える文化」の徹底で自主性を育成

ムンフハダの躍進には、2018年に29歳の若さで就任した現CEOバド氏の存在が欠かせない。「我々は、社内で “ 教える文化(知らない → 知る → 教える)” を徹底しています」とバド氏は話す。

指示を受けて行動するのと、自発的に考えて行動するのとでは大きな差があることを指摘し、平均年齢33歳、160名の社員たちの自主性が高まる職場環境の実現に向けて、社員のモチベーションの向上につながる表彰制度などを導入。店舗・事務所・BPセンターの至る所に、成績優秀スタッフの写真などが掲出され、社員を大切にしていることが伝わってきた。

モンゴル全体の整備品質を引き上げたい

「当社の整備入庫は年間約1.5万台に上ります。極寒地ではエンジンオイル、バッテリー、足回り部品の消耗・劣化が激しく、“ 壊れる前に備える” ための定期点検とメンテナンスの需要が非常に高い状況があります。また道路状況の厳しさから、水没車やエンジンオーバーホールなど、日本では稀な重整備も日常的に手がけています。

今後は、自社で調達した高品質な材料・部品をウランバートルの自動車整備工場などへ提供する際、技術指導もセットにして提供するサプライヤー事業も展開し、モンゴル全体の整備品質を引き上げていきたい」と、バド氏は今後の展望を述べた。

トヨタ・レクサス正規ディーラーを展開する「ムンフハダ」のバドCEO

日本のBP職人の技術やアイデアの伝承によって、ムンフハダは富裕層から支持され、さらなる事業拡大も見込んでいる。日本の修理技術が高く評価され、価値がある「高価格サービス」として認められた事例と言えるだろう。

また日本にとってモンゴルは「トヨタ車」という共通基盤はあれど、自然環境や地域特性、政治的背景といった社会状況の違いにより、日本とは全く異なる市場環境が形成されていることが今回の取材で浮き彫りになった。国の違いによってビジネス戦略や成功のプロセスが異なる点は興味深く、世界の自動車アフターマーケットの最新動向に今後も注目したい。

モンゴルのラグジュアリー層を獲得して急成長するトヨタ・ディーラーの裏側に、日本のBP職人あり

《カーケアプラス編集部》

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