高齢運転のリスクと改善策、10の安全ポイント…ボルボが提言セミナー開催

継続的に実際の事故データを収集
継続的に実際の事故データを収集全 15 枚

みんな歳をとる。歳をとっても健康的なモビリティライフを送りたい」と語るのはボルボ・カー・コーポレーションのシニア・アドバイザー(Safety担当)、トーマス・ブロバーグ氏だ。

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◆実際の事故からデータ収集

ボルボ・カー・ジャパンは11月20日、東京都内で「高齢ドライバー」の安全運転に関するメディア向けセミナーを開催した。講師は本国スウェーデンから来日したブロバーグ氏。同氏は長年「ボルボ・カー・セーフティセンター」で衝突安全技術の開発に携わってきた。

セミナーでは、ボルボが掲げる「新しいボルボ車で死亡重傷者ゼロ」というビジョンのもと、実事故調査に基づく知見が紹介された。ボルボは1970年から継続的に事故データを収集しており、5万件・8万人規模の事例を分析している。ブロバーグ氏は「安全性は知識が重要」と述べ、独自データがボルボの技術開発の基盤であると説明した。

◆高齢者は、もし事故に遭ったら…

世界では毎年約119万人が道路交通事故で死亡しており、高齢化が進む日本・スウェーデンではシニア層の事故比率が増加している。高齢者は身体的に脆弱で、同じ負荷でも損傷が重くなる傾向があるほか、回復にも時間がかかる。

シートベルト装着に関する研究では、高齢者はベルトのフィット感を適切に認識できない場合があることが判明。また着座位置の調整において、若年層と比べ時間をかけない傾向が確認された。

若いドライバーは動く物体により注意を向けるいっぽう、シニアドライバーは静止した物体に集中する傾向がある。Dukic T., & Broberg T. (2012), Older drivers’ visual search behaviour at intersections, Transportation Research-Part F, vol.(15), 462-470.若いドライバーは動く物体により注意を向けるいっぽう、シニアドライバーは静止した物体に集中する傾向がある。Dukic T., & Broberg T. (2012), Older drivers’ visual search behaviour at intersections, Transportation Research-Part F, vol.(15), 462-470.

◆高齢者の運転に見られる特徴

ボルボが行った視線分析の研究では、若いドライバーが動く物体に注意を向けるいっぽう、シニアドライバーは静止物に視線が集まりやすいと報告された。交差点では動く物体の確認が不十分で、車両位置の確認に多くの時間を割く傾向があるという。「若いドライバーは脅威になるであろう物体を注意する。高齢者は車の場所を意識する」とブロバーグ氏。

72歳以上のシニア40名による実走行テストでは、直線路での速度調節の難しさや、交差点での注意不足が見られた。自己評価では「できている」と答えながら、実際の運転が追いついていない例も多かった。

運転能力の自己認識には「過大評価」と「過小評価」の2タイプがあり、過大評価のドライバーは安全上の懸念が大きい。過大評価する人は運転アシスト技術を受け入れにくい傾向がある。過小評価はモビリティ制約につながる。

◆シニアドライバーに必要なこと

シニアドライバーが安全に運転するためのポイントとして、以下の事項が強調された。

速度を落とす:判断のための時間を確保する。
自分の運転を正しく評価し練習する:不安があればレッスンも有効。
運転支援技術を活用する:AEB、AES、ブラインドスポット情報など。

これらの技術は高齢者だけでなく、全年齢に有効であるとした。

「スウェーデンも日本も高齢化が進んでいます」とブロバーグ氏「スウェーデンも日本も高齢化が進んでいます」とブロバーグ氏

◆免許返納とモビリティ

最近話題となっている免許の自主返納については、「年齢ではなく個人の状態で判断すべき」とした。スウェーデンでの調査では、運転が生活の重要な移動手段であり、運転をやめることへの不安の声が多く寄せられているという。

加齢の影響には個人差が大きく、身体・認知機能など複数の要因を考慮すべきと説明。サポートシステムや移動手段は、個々のニーズに合わせるべきとの見解を示した。

◆シニアドライバーの10の安全ポイント

最後に、ボルボはシニアドライバー向けの具体的な10項目を提示した。速度の抑制、意図の明確化、周囲への注意、事前ルート確認、運転支援機能の活用など、運転を安心して続けるための行動指針をまとめた。

ブロバーグ氏は「安全とは知識である」と締めくくり、加齢に関わらず誰もが安心して移動できる社会の実現のために「何を考えるべきか」と強調した。

01 速度を控えめに……とくに市街地ではスピードを落とし、観察・判断・操作の時間に余裕を持とう。
02 焦らず、意図をはっきり伝える……他車に急かされても無理をしない。ウインカー・車両位置・速度で自分の意図を明確に示そう。
03 周囲への注意を高める……加齢で周辺視野や反応が低下することがある。交差点や横断歩道など進路が交差する場面では特に集中を。
04 運転の練習を続ける……不安があればためらわず、インストラクターの運転レッスンを受けよう。
05 カップルや夫婦は2人で運転……カップルや夫婦の場合は、運転を交代で担当し、2人とも練習できるようにしよう
06 交通量の少ない時間帯・昼間に走る……可能であれば渋滞を避け、見通しのよい日中に運転しよう。
07 事前にルートを計画……出発前に行き先と経路を確認しよう。最新のナビゲーションの活用も有効だ。
08 安全性能の高いクルマを選ぶ……衝突時の安全性、運転支援(ADAS)、明るい良質なヘッドライトを備えた車両が安心だ。
09 正しい着座とシートベルト……シート位置を調整して楽に操作できる姿勢に。ベルトのたるみは取り除き、体にしっかりフィットさせる。
10 駐車操作はサポート機能を活用……360°(bird eye view)カメラやバックカメラを使い、周囲の安全を確認しよう。

《高木啓》

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